【アルバムレビュー】B.A.P-アイドルグループが“革命”を歌う時代

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写真=TSエンターテインメント

アルバムレビュー:B.A.P 2ndアルバム「POWER」

B.A.Pは“ヒップホップ・アイドル”を掲げている男性新人グループである。バン・ヨングク、ZELO、ヒムチャン、ジョンアプ、デヒョン、ヨンジェの6人で構成される。グループの名前は“Best”、“Absolute”、“Perfect”の頭文字をとったもので、「最高の、絶対的な、完璧な価値を目指す」という意味だという。

彼らが先日発表した2ndアルバム「POWER」は、アルバムの構成において今年1月発表した1stアルバム「WARRIOR」と似ている。いわゆる“3+1”戦略で、社会批判的なメッセージや音楽的な抱負を強烈なサウンドに載せた3曲に、甘いバラード曲をボーナスとして加えた形になっている。もちろん変化もある。前作に比べて豊富なロックサウンドの活用が目立つ。

社会批判から甘い曲まで、異なるカラーの4曲

最初の曲「Fight Fot Freedom」は、B.A.Pの音楽的なアイデンティティを伺うことができる曲である。歌詞を見れば、彼らが目指す価値の中で“自由”というものがどれだけ重要視されているかが分かる。「いつまで閉じこもっているつもりなのか/いつまで他の人と同じ生き方をするつもりなのか」「人がYesといえば僕たちはNo」「同じタイプは相手にしないよ」等の歌詞は陳腐な面とも捉えられるが、状況を覆してやるという“宣言”が盛り込まれたサビの部分は、エネルギーがあふれている。短い曲だが、重厚なロックサウンドとキレの良いZELOのラップがインパクトを残す。

「POWER」は、露骨に世の中の弱いものたちに向けて革命を促す曲である。何に対する革命なのか? それは正義のない、お金の前にひざまずく世界、力あるものの影で弱いものが死んでゆく世界を指す。歌詞ではこのような世界に屈することなく立ち向かっていこうと伝えているが、このような判断の根底には「We got the power./I got the power」という確信がある。力は単に“金、権力、名誉”だけにあるものではないと歌っているのである。パワフルなロックサウンド、悲壮感を漂わせながらも冷笑的なバン・ヨングクの重厚なラップ、挑戦的で戦闘的なZELOの切れの良いラップが魅力的である。

「What The Hell」は現実を支配している不公平で間違っているシステムに対する憤りを表現した曲である。やけになって「見えない手」に向かって「そのまま返してやる」「死んでも返してやる」と叫ぶようになった理由は、もっぱらそれだけが生き残る道だという痛切な自覚があるためである。「No way」「May day」を叫んでいた壊れやすい心が「What the hell you do」のような決起に変わる瞬間を捉えたリフレイン(繰り返す部分)、全般的に悲しみや激しさが共存するサウンドが印象に残る。

最後の曲「全て嘘(Lie Lie)」は、別れ際になってようやく愛に気づいた男の後悔と悲願を描くバラード曲である。「忘れられる」「何もかも終わり」だと話す彼女の言葉が「全て嘘」だと信じているが、涙を流す彼の選択を見れば、その信頼はあくまでも「希望」であることが分かる。典型的な歌詞、センチメンタルな歌声やラップ、甘いフックソング(同じ単語を繰り返して印象付ける曲)が“形式”のように混ぜ合わせられている。歌詞、サウンド、情緒など、あらゆる面でこのアルバムの他の曲とは違っているという点で、いわゆる“ボーナストラック”的な曲である。


歌詞に表れる“社会観”…「世界は正義のないところ」

今回のアルバムで注目される部分は「POWER」と「What The Hell」の2曲に表現されている社会観である。この曲の中で“世界は正義のないところ”として描かれている。

なぜなら、そこはいわゆる奪う者と奪われる者の“ロール(役割)”が変わらない、力が支配する場所(「Power」)であり、また「金」が「善悪を分けて」「見えない手があなたを勝手に動かす」場所(「What The Hell」)であるためである。問題は、このような真実が「多くの沈黙」や「無関心」によって放置されていること。自然と2曲のメッセージは戦意を呼び起こし、偽りのモノに向かって「嘘だ」と叫ぶことで、真実の声が広がるように立ち向かおうと訴えることになる。

興味深いのは、これらの曲で“戦線”を形成している“こちら”と“あちら”の疎通や和解の可能性を徹底的に排除している点である。もっとも、革命たるものが改善の余地のない絶望的な現実の認識から生まれるものであり、2曲ともに“革命”を歌っている点でこのような選択は当たり前なのかもしれない。

そういった点でこの2曲は、勝者がすべてを手にして恥知らずな社会になり、つまりはそれが当然視される風潮、そしてその中で民主主義が窒息していく韓国社会の一面を反映している。今や、アイドルグループが革命を歌ってもおかしくない時代になってきている。

このレビューを書いたソ・ソクウォン記者は、歌手の名前でハングルを覚え、少年の頃ピアノを弾いていましたが、息子の将来を心配した母の決断で戻れぬ橋を渡り、今は平凡な一般リスナーであることに満足して暮らしている音楽愛好家です。現在は映画関連の仕事をしており、一生涯の著作を夢見ています。 ―編集者

記者 : ソ・ソグォン