「罪深き少年たち」ソル・ギョング、実際の事件が題材…当事者との対面に“何も解決していないように感じた”

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写真=CJ ENM
俳優のソル・ギョングが韓国映画の未来について考えを明かした。

最近、ソウル市鍾路(チョンノ)区昭格洞(ソギョットン)のカフェで映画「罪深き少年たち」の主演ソル・ギョングとのインタビューが行われた。

今年デビュー40周年を迎えたチョン・ジヨン監督の新作「罪深き少年たち」は、地方の片田舎のスーパーで発生した強盗殺人事件の犯人に指目された少年たちの再捜査に乗り出した刑事と、彼らをめぐる人々の物語を描いた実話劇だ。

1999年の「參禮ナラスーパー事件」をもとに映画化した同作は、チョン・ジヨン監督の法廷実話劇「折れた矢」(2012)、金融犯罪実話劇「権力に告ぐ」(2019)を継ぐ、実話劇3部作として注目されている。

ソル・ギョングは、ウリスーパーの強盗殺人事件の再捜査に乗り出した捜査班長ファン・ジュンチョル役を演じた。彼は、一度狙った獲物は絶対に逃さないとして“狂犬”という別名が付けられた人物で、ウリスーパーの真犯人に関する情報を聞いた後、少年たちの濡れ衣を晴らすため頑張る。

ベテラン刑事のオーラを発する彼は、精力的な刑事の姿から現実の壁の前で無気力になった姿まで、繊細に描き出した。16年の歳月をまとめる幅広い演技を披露した彼は、繊細な演技で劇への没入度を高めた。

この日、今年映画「PHANTOM」を皮切りに、「THE MOON」「キル・ボクスン」、今回公開される「罪深き少年たち」まで、多数の作品に出演したソル・ギョングは、「今年が特別だったというよりは、多事多難でした」とし、「未練も残るし、いろいろ考えることになった一年でした」と感想を伝えた。

その中で「PHANTOM」と「THE MOON」は大ヒットを記録することはできなかったが、Netflix映画「キル・ボクスン」は興行に成功した。これについて彼は「『THE MOON』の成績は衝撃的でした」とし、「『キル・ボクスン』は正式に劇場で公開されたのではなく、OTT(動画配信サービス)で配信されたのに成功しました。特に日本では(人気が出るまでに)時間がかかりました。VIP試写会も劇場でして、ドイツ・ベルリンにも招待されて大きな劇場で上映したが、Netflixで配信されてからは、劇場で上映することが出来ません。映画として制作したのに、劇場で観られないなんて皮肉ですよね」と、心境を明かした。

「映画として制作したのにスクリーンで観られないという事実に対して、人によって意見が分かれるようです。『OTTでだけ公開しないといけない』『劇場でだけで公開しないといけない』ではなく、現実的に共存しなければならないと思います。人々の目が肥えてきている分、作品のレベルも上げなければいけない、という使命を持つ必要があると思います。(映画市場で)これからも変化は続くと思いますが、また良い日が来ると思います。もちろん、時間はかかると思いますが、映画という形式はずっと続くと思います」

映画を観なければならない理由については「主体的」という点を選んで、「待っていれば家でも観ることは出来ますが、心を動かすのは劇場だと思います。家ではいつでも観られますが、劇場は自分が選んで、(その作品が観たいと)心が動いて観に行くと思うので」と説明した。

そして「大きなスクリーン、圧倒的な画面を通じて伝えるのが映画だけの魅力だと思います」と付け加えた。

同作への出演理由を尋ねると、彼は「監督さんに偶然会った時、『僕と作品を作らないとね』と言われました。ただの社交辞令だと思っていました」とし、「そう言われてうれしかったです。でも、それから一週間で本当にシナリオが届いてびっくりしました。最初は(作品内の時系列が)過去から現在へと流れるストーリーでした。しかし、17年後になったら班長自体の力も弱くなって、別の作品が混ざっている感じがしました。キャラクター自体が変わったみたいだと言ったら、監督さんが本当に混ぜていたんです」と語った。

「今までは過去作と同じ雰囲気のキャラクターは避けていました。『公共の敵』(2008)よりうまくする自信もなかったですし、自分が演じるとカン・チョルジュン(『公共の敵』の主人公)のイメージが出てしまうと言い訳を言ったりもしていました。しかしチョン・ジヨン監督の作品だったので悩みました。社会に対しはっきり声を上げてきたチョン・ジヨン監督を尊敬してきたので、出演を決心しました。実話という大きな事件を題材に映画を作る監督の方々には、共通点があります。正直な心を持っています。実話という点で避けられない強烈さも感じましたが、監督に抱く衝撃もありました」

また、彼はチョン監督について「一番年下のスタッフまで同僚だと思って接しています。みんなが平等な関係だと思っている方です」とし、「何度かあったことですが、撮影現場の廊下で大声を出していて、喧嘩しているのかと困惑したことがあります。『正気か!?』と思いましたが、それが監督さんの討論でした。実際に少年のような方で、マインドが違います。僕は先入観を持って『コンデ(自分より年上で、自分の父・自分の先生・年寄りなどを指す隠語)だろう』『意図せずにコンデの姿が出てしまっているのだろう』と思っていましたが、全然違いました。僕も彼のような大人になりたいです」と、監督への尊敬の意を表した。

17年という歳月の前後の違いを表現しなければならなかった彼は、覇気溢れる若いファン・ジュンチョルと老いて疲れたファン・ジュンチョルのギャップを表現するために減量をしたと明かした。彼は「過去のシーンを先に撮影して、17年後を撮影するまでに3週間の時間がありました」とし、「しかし、(過去のシーンの)撮影が延期となって、(間の)時間が1週間しか残っていませんでした。みんな撤収してマネージャーもソウルへ帰って、私一人だけ宿所に残されました。食べないこと以外に減量の方法がありませんでした。めまいがするまで食べなかったです」と告白した。

実際の事件の人物たちに会った後「妙な気分になりました」と言った彼は「実際にその方々に会ったら、何も解決していないように感じました。我慢しているように見えたのです。『解決は永遠にできないんだ』と感じました。映画よりも現実の方がさらに残酷でした。少年たちが声をあげる内容を描いていますが、実際の被害者の方々は純朴でした。なのでもっと気の毒に感じました」と振り返った。

また彼は「參禮ナラスーパー事件」の誤審の被害者はもちろん、真犯人にも会ったと伝えて「気分が変でした。妙な経験をしました。真犯人に感謝しなければならない皮肉な状況になっていました。決定的な証言をしてくれたのは事実なのに、妙な気分がしました」と、正直に心境を明かした。

被害者たちを実際に助けた人たちとも会ったという彼は、「自分の考えとその方々の考えが一致してありがたかったです」とし、「少年たちを成長させてくれて感謝しています。でも、実際はそうできなかったと言います。成長してもトラウマのせいで、その時間に閉じ込められている感じでした。声を上げることができるようにしてくれて感謝していると言われましたが、声を出すのが当たり前だと思います」と残念な気持ちを示した。

「タイトルが『罪深き少年たち』じゃないですか。成長過程で悔しい事件を経験して、自分の感情も表現することができず、正すこともできなかった少年たちが成長して、自分の声を出すということが重要だと思いました。誤ったことを正すのに勇気が必要な世界で、『この少年たちが声を出す』というのがこの作品が最も伝えたいメッセージだと思います」

記者 : ノ・ハンビン