松坂桃李、映画「流浪の月」李相日監督の演出に驚き!“役と作品に没入できる環境…時間が早く過ぎた”

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(C)2022「流浪の月」製作委員会
実力と人気を兼ね備えた俳優・広瀬すずと松坂桃李の2人が紡ぐ物語は、2020年本屋大賞を受賞し、同年の年間ベストセラー1位(日販単行本フィクション部門、トーハン単行本文芸書部門)に輝いた凪良ゆうによる傑作小説が原作。10歳の時に、誘拐事件の“被害女児”となり、広く世間に名前を知られることになった女性・家内更紗(かないさらさ)を広瀬が、その事件の“加害者”とされた当時19歳の青年・佐伯文(さえきふみ)を松坂が演じる。

また、事件から15年経った現在の更紗の恋人・亮を横浜流星が、癒えない心の傷を抱える文に寄り添う看護師・谷あゆみを多部未華子が演じ、加えて、趣里、三浦貴大、白鳥玉季(子役)、増田光桜(子役)、内田也哉子、柄本明らが共演に名を連ねている。

2人の限りなく稀有な関係性をスクリーンに描き出すのは、デビュー以来そのエモーショナルで骨太な作風で観客の心を鷲掴みにしてきた「フラガール」「悪人」「怒り」などの李相日(リ・サンイル)監督。また、「パラサイト半地下の家族」「バーニング劇場版」「哭声/コクソン」「母なる証明」など、韓国映画史に残る作品を次々手がけてきた撮影監督・ホン・ギョンピョ、「キル・ビルVol.1」「ヘイトフル・エイト」「フラガール」「悪人」「三度目の殺人」など、世界を股にかけて活躍する美術・種田陽平ら、国境を越えた才能が集結した。

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今回、5月13日(金)の公開に先駆け、広瀬すず、松坂桃李登壇のフレッシャーズ試写会が行われた。会場にはこの春入社したばかりのフレッシャーズたちが集い、初々しい質問から社会人の先輩への悩み相談などが次々と飛び交い、広瀬と松坂が真摯に答えると大きな頷きと拍手が送られる心温まる舞台挨拶となった。

客席に顔を揃えたのは、この春に晴れて新社会人としてのスタートを切ったばかりのスーツ姿の新入社員52人。広瀬は「同世代の皆さんにこの作品がどう映ってどう届いたのかが気になる部分ですが、新鮮な景色です」と喜び、松坂も「新社会人の方々とこの空間にいられるのがすごく嬉しいです」と興味津々だった。

フレッシャーズにかけて、MCから「『流浪の月』の撮影で初めてだったこと」を聞かれると、本作で李相日監督と初タッグを組んだ松坂は「李組監督の現場は役と作品に没入できる環境があって、圧倒的に時間が早く過ぎて行ったので、気づいたらすごく疲れていました」とそのこだわりの演出術に驚き。本作で血ノリを初体験したという広瀬は「毎日血ノリをつけられていたので、ゾンビ映画は大変だろうなと思いました。街を移動するだけでみんなに見られたりするので、フェイスシールドをマスクに変えたりして。思い出として『血ノリしたな~』と。役者として血ノリをつけることに憧れがあったので、次はぜひゾンビで!」とゾンビ映画初挑戦に意欲を示した。

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またフレッシャーズから「新しい環境で意識していること」を聞かれた松坂は「聞くこと」を挙げて「新しい現場や新しい環境に入ったときに自分はゼロの状態です。撮影では一つの現場が一つの組織になっているので、そこにいる人たちの考え方を聞くのは大事だと思います」とルーティンを告白。一方、広瀬は「私は見ています。松坂さんの聞くと同じ感覚で見て、その人の人柄までわかったらいいなと思います。見ることでその人の特徴を捉えたり、お名前を覚えられたりすると思うので」と数々の現場をこなす先輩からの秘訣を明かした。

イベントは会場に集まったフレッシャーズからの質問コーナーに突入。入社したばかりのフレッシャーズから「困難や壁の乗り越え方」を聞かれた広瀬は「我慢せず、自分のやりたいことや好きなことに没頭します。あとは『うえい!』とバカな顔をして遠慮なく人に全力で甘えちゃいます。二十歳を過ぎてそれができるようになったというか、話すことってこんなにも自分が楽になるんだと体験しました」と心のデトックス方法を紹介し、「正直につらいって言います」と弱音を吐くことの重要性を説いていた。

松坂は「自分が壁を乗り越える時は、一度立ち止まるようにしています。せわしなくなるとわかっていないのにやらなければならないと思いがちなので、そこで勇気を振り絞って立ち止まるのも一つの方法です。立ち止まった目線から見えてきたものをピックアップしてやってみる、その突破口でこれまで壁を乗り越えてきた感覚はあります」と実感を込めて語ると、会場のフレッシャーズたちも大きく頷きながら熱心に耳を傾けていた。

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続いて、まだまだ毎日の仕事に緊張しているというフレッシャーズから、応援メッセージのリクエスト。広瀬は「私の中で頑張りたい気持ちはあるんですけど『頑張らないでね、でも頑張ってね』と言われたことがあって、その言葉を大切にしています。無理せず、自分のペースで更紗と文のように周りがどうであっても自分を見失わないことがとても大事なことだと思います」と映画の中の二人の生き方に絡めてアドバイス。これに対し松坂は「良い言葉! 新しい環境に入ってまだ右も左も分からないからこそ、こわばってしまうと思うけど、頑張らないことを頑張ってみてください」と優しくエールを送ると会場からは拍手が起こった。

また「もし希望の部署に配属されなかったら、どう頑張ればいいのか?」というフレッシャーズ特有の切実な質問に松坂は「僕も『なんでこの作品やれないんだろう』と思うことはあるんですけど、いま考えるとやりたかった作品とは違う、別の作品をやったからこそ次の作品に繋がったという部分があるので、振り返ると最善の最短ルートだったなと思うんです。そこで違った! じゃなくて自分の中の最短ルートがこの歩み方と考えると、いい意味で割り切った仕事のマインドで挑めると思います」と経験を元にした具体的なアドバイス。

一方フレッシャーズと同世代の広瀬も「自分の運命とかタイミングを作品に感じることがあって、その瞬間はとりあえず目の前のことにしがみついていることが多いです。何年か経って『よかったな、私にはこれしかなかったな』と実感する機会が増えていて、きっと神様が『こっちの方が向いてるよ!』って言ってくれてるのだなと心のどこかで感じながらでもいいのかなと思います」質問者と同じ目線での励ましを送ると、質問者からも「頑張れそうです!」と温かいリアクションが送られた。

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最後は名古屋から来たというフレッシャーズから「仕事を辞めようと思ったことはあるか?」という核心に迫る質問。広瀬は「私はこの仕事をしたくてしたというよりも、姉が先にやっていてなんとなくお姉ちゃんの後ろをついていくという感覚が強かったので、いつ辞められるのか? と考えていました。楽しいのはファッションとかだけで、お仕事をするということに強い思いはありませんでした」と新人時代を回想。それでも「これを辞めても私にはきっと何も残っていないと思いましたし、周りから比べられたり負けたりすることが悔しくて。好きよりも悔しいがずっとあったタイプだったので、とりあえず自分が勝つまで、ちょっとでも満足するまで絶対やってやろうと思いました。だから気合の部分があったと思います」と仕事を継続することができたモチベーションを明かした。

松坂は「ふとした瞬間に“なぜこれをやっているのか?”という感情が後ろからのしかかってくることも多々あります。若いころは事務所のために! というモチベーションだったけれど、最近では視界が近くなってきたというか、現場のスタッフさんの顔の表情や、作品に関わった皆さんの喜ぶ顔を見たときに理由もなく“やってよかった”と思えるようになりました」とキャリアを重ねての心境の変化を口にしていた。

フレッシャーズたちとのQ&Aを終えた松坂は「すごくいい時間! まだまだいけますね! こちらの背筋も伸びるというか、身が引き締まる時間で、こちらがエネルギーをもらった部分もあります。コロナの期間は舞台挨拶をすることも少なくなってしまったけど、改めて直接言葉を交わすって大事だなと思いました。『流浪の月』の感想はハッシュタグをつけて投稿してくれたら僕は全部見ます!」と映画を通じたコミュニケーションを意欲的に語った。広瀬は「すごくいい会ですね……! 皆さんの見えている世界の視点を色々聞くことができて、同じ世代の一人として勇気をもらいました! 更紗と文のように粘り強くたくましく、頑張って欲しいなと思います」と映画で演じた二人の名前を挙げ、エールを送っていた。映画「流浪の月」は5月13日(金)より全国で公開される。

■映画情報
「流浪の月」
5月13日(金)全国ロードショー

〈出演〉
広瀬すず、松坂桃李、横浜流星、多部未華子、趣里、三浦貴大、白鳥玉季、増田光桜、内田也哉子、柄本明

<ストーリー>
雨の夕方の公園で、びしょ濡れの10歳の家内更紗に傘をさしかけてくれたのは19歳の大学生・佐伯文。引き取られている伯母の家に帰りたがらない更紗の意を汲み、部屋に入れてくれた文のもとで、更紗はそのまま2ヶ月を過ごすことになる。が、ほどなく文は更紗の誘拐罪で逮捕されてしまう。それから15年後。“傷物にされた被害女児”とその“加害者”という烙印を背負ったまま、更紗と文は再会する。しかし、更紗のそばには婚約者の亮がいた。一方、文のかたわらにもひとりの女性・谷が寄り添っていて……。

原作:凪良ゆう「流浪の月」(東京創元社刊)
監督・脚本:李相日
撮影監督:ホン・ギョンピョ
音楽:原摩利彦
製作総指揮:宇野康秀
製作幹事:UNO-FILMS(製作第一弾)
共同製作:ギャガ、UNITED PRODUCTIONS
配給:ギャガ

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■関連リンク
映画「流浪の月」公式HP:https://gaga.ne.jp/rurounotsuki/

記者 : Kstyle編集部