「探偵なふたり:リターンズ」ソン・ドンイル“お酒を飲んで帰ると真っ先に子どもたちの部屋に行く”

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「『探偵:ザ・ビギニング』の時は、物足りなさがたくさんありました。劣悪な環境でスタートし、公開初日にやっと観客数が5万人に到達したんです。冗談半分で『酸素呼吸器外そう』と言っていたくらいでした。家の中でも、捨てられた庶子になったような気分でした(笑)。ところが、日にちが経つに連れてだんだんと成績は良くなり、最終的には270万人近くまでいきました」

映画「探偵」シリーズで3年ぶりに帰ってきた俳優ソン・ドンイルが、前作「探偵:ザ・ビギニング」の公開当時を思い出してこのように述べた。ソン・ドンイルは前作に続き「探偵なふたり:リターンズ」でも刑事ノ・テス役を熱演した。

「『探偵:ザ・ビギニング』は大きな興行を収められなかったけど、撮影当時の雰囲気はとても良かったんです。だから『次期作が出たらどうなるんだろう』という話が出ていました。『場を設けてくれたら本当にいけるのでは』と思いましたが、制作会社が本当に場を設けてくれたので『探偵なふたり:リターンズ』をやることになりました。前作で一緒に共演していたので、俳優やスタッフたちとの息は完璧でした。そして前作で既にキャラクター紹介をしていたので、今作ではすぐに事件の内容に入ることができるという利点がありました。だから前作より緻密に物語の展開を披露することができたし、無理に笑いを強いているような場面もなかったです」

「探偵なふたり:リターンズ」では1編よりも大きな事件を扱っており、その過程の中での緻密で緊張感あふれる推理捜査を披露している。さらには、主人公ノ・テス、カン・デマン(クォン・サンウ)の姿を通して、この時代を生きていく家長たちの哀歓もリアルに表現した。

「ノ・テスとカン・デマンのキャラクターは、この時代を生きていくお父さんなら誰もが共感するでしょう。私が30代の時は、そこまで家族に対する愛情の気持ちを大事に思わなかったです。でも年齢を重ね、妻と子供たちへの愛おしさが大きくなるに連れて、ちゃんとしてあげられなかったことに対して申し訳ないという気持ちが生まれました。だからお酒を飲んで家に帰ると、いつも子供の部屋から入るんです。私は子供たちの姿をじっと見ている時が一番幸せです」

ソン・ドンイルは、今回の映画を通じて過激なアクションシーンにも挑戦した。シーンを撮るために3日間、昼夜を問わずにたくさんの苦労をしただけでなく、製作費もたくさんかかったという。しかしそのシーンは編集されてしまったため、映画の中でその大変さが伝わることはなかった。「念を入れて撮影したシーンがカットされ、物足りなさや欲が残らないか」と聞くと、ソン・ドンイルは「そんなことに欲を出すような年齢ではない」と言い豪快に笑ってみせた。

「3日間、何1000万ウォン(何100万円)もの制作費をかけて撮影したシーンです。それを編集したいと思いますか? カットするスタッフはもっと心が痛んだと思います。もし私が、無理を言ってその場面を無理やり入れてもらい他の人の出番が少なくなったら、それは「探偵なふたり:リターンズ」ではありません。その場面が無くなっても、完成した映画を本当に面白く見ることができたし、自らとても満足したのでそれでいいんです」

ソン・ドンイルは助演から主演までの様々な役や、ドラマや映画など様々な分野で熱心に活躍している俳優として有名だ。他の俳優らのように1年に1~2作品に出演するのではなく、4~5つもの作品をこなしている。そんな彼は「作品を多くこなせば演技も上手くなる」という自身の信念を明らかにした。

「俳優も技術者です。演技はたくさんすればするほど上達します。だから、今も後輩には『演技しろ』『休むな』とアドバイスをしますね。学校に通う学生が予習・復習をすれば成績が上がるように、俳優もずっと自分を研いで磨いていかなくてはいけません。また、作品を選択する時に自分がやりたい作品だけを選択しないことも重要です。やりたい作品だけをやっていると偏りが出てしまうんです。やりたくない役にも挑戦してみて、時には失敗もしながら様々な経験を積んでいくものです」

ソン・ドンイルにとって作品を選択する基準とは何だろうか?

「ある作品では主人公を務め、またある作品ではお金を一銭も受けずにカメオ出演(特別出演)したりします。配役の大小は関係ありません。作品を選ぶ時の私だけの基準は「人」です。一緒に共演する俳優やスタッフたちを見て作品を選択します。シナリオを見て『みんなで一緒にいい作品を作ることができそうだ』と思ったら、1~2場面だけでも出ます」

記者 : イ・ウンジン、翻訳 : 藤本くみ子、写真 : イ・スンヒョン