「俳優は俳優だ」MBLAQ イ・ジュン、他の演技アイドルとは異なる選択“どんな評価も覚悟している”

10asia |

イ・ジュンはアイドルグループMBLAQのメンバーだ。バラエティ番組で多様な魅力を発揮し、今度は演技に挑戦した。アイドルが演技に挑戦することはそれほど珍しいことではない。今は多くのアイドルたちが良い評価を得て“演技ドル(演技するアイドル)”という勲章を手に入れているからだ。それでもイ・ジュンは演技に挑戦する他のアイドルとは確実に異なる。演技経験があったからではない。イ・ジュンが主演を務めた「俳優は俳優だ」を見終われば、自然にうなずけるだろう。以前から俳優を夢見てきたイ・ジュンは“大胆な演技”を選択した。アイドルという肩書はしばらく忘れ、俳優として臨んだ。

「俳優は俳優だ」でイ・ジュンが務めたのはオヨン役だ。脇役俳優から一瞬にしてトップスターとなるが、一瞬にしてどん底に落ちる人物である。19禁の青少年観覧不可等級に判定された映画だけあって、衝撃的だ。イ・ジュンは何度も情事シーンの撮影をした。それも愛情がまったくない、暴力に近い情事シーンだ。そして、芸能界の醜悪な面も強烈に描いている。その中にイ・ジュンがいた。もちろん“俳優”としてだが、何よりもイ・ジュンはオヨン役に入り込み、観客の感情を引っ張っていた。映画を見終わって思うことは、イ・ジュンの選択は素晴らしかったということだ。アイドルに対する先入観が以前よりなくなった。そして「俳優は俳優だ」の制作会社側がなぜイ・ジュンを選んだのか気になったが、イ・ジュンとのインタビューでその点も解消された。

―「俳優は俳優だ」に出演したこと自体、驚くべきことだった。本人の決心も決心だが、所属事務所が快くOKをしたのかも気になる。アイドルグループのメンバーであるのに、露出、ベッドシーンなどはもちろん、内容も大胆である。

イ・ジュン:実は僕は何とも思わなかった。演技がしたいだけで、カッコよく見せたくなかった。いつまでも綺麗で、カッコいい役だけ演じることはできない。それに主観的な考えだが、アイドルだからやっていいことと、やってはいけないことがあるとは思っていない。劇中の台詞にもあるが、やりたいことだけをやって生きることが幸せな人生だと思う。だから所信を持って出演することを決心した。どんな評価も受け止める覚悟はできている。

―既に知られているように、MBLAQとしてデビューする前に「ニンジャ・アサシン」で先に演技を経験した。その後もチャンスは多かったと思うが、それほど出演作品は多くないようだ。

イ・ジュン:オファーは何度かあった。「ニンジャ・アサシン」の上映当時、(MBLAQが)デビューしたので、映画関連のインタビューにはまったく参加できなかった。またグループ活動をする時だったので、その間は個人活動ができない状況だった。オファーがあっても、出演することはできなかったので、作品に参加できなかった。

―本当にやりたかったことは演技だと聞いているが、できない状況になり、演技への渇望が大きくなったと思う。

イ・ジュン:これまで試行錯誤が多かった。演技がしたい、したいと思いながらも、後になって結局諦めてしまう。今26歳だが、21歳から今までの短い時間の間、たくさんの変化があった。「もう一度やり直せる」と考えながらも諦めて、彷徨った(笑) 感情の浮き沈みが激しかったので、何を考えているのか分からない時もあった。

―今までの話を聞いていると、一連の試行錯誤もあり、演技がしたくてもできなかった時があったので、今回の映画をオファーされた時に大胆な内容だったにもかかわらず、戸惑うことなく選択できたのではないかと思う。

イ・ジュン:そう思った部分もある。今まで良い作品にオファーされたけれど、出演できなかったから。グループでデビューしたので、グループのメンバーとしての責任があった。だから未練を感じてはいけないと思った。そうしているうちに久しぶりに映画に出演することができたが、これまで演技ができなかったことに対する渇望と悩んだことが役に立つ部分があった。何よりもこの映画を撮るために一連の試行錯誤があったと思う。演技がしたくてもできず、今まで苦労した理由はこの作品に出演するためだったのではないかと思う。

―制作発表会の時、一番記憶に残るシーンとしてベッドシーンを選んだが、映画を見た者としてマスコミはもちろん、観客も同意すると思う。アイドルメンバーであるイ・ジュンだからよりそのように感じたのかもしれない。何はともあれ、多くあったベッドシーンがどんな感じだったのか知りたい。

イ・ジュン:ベッドシーンを撮ると言ったら多くの人が羨ましがるけど、まったく良くないから羨ましがらなくていい(笑) スポーツより難しかった。演技へのプレッシャーはもちろん、身体的にも疲れる。最も難しかったことは、ベッドシーンを撮りながら台詞を言うことだった。呼吸も呼吸だが、刺激的な台詞に演劇の要素が加わっていたので難しかった。勉強する気持ちで撮影に臨んだ。

―ベッドシーンは女優にとっても難しいシーンだ。それに演技の経験があまりないので、女優と呼吸を合わせるのが難しかったと思う。

イ・ジュン:他のシーンを撮る時は事前に演技を合わせてみることができるけど、ベッドシーンは別途に練習ができない。一歩間違えると誤解を招くこともあるし。だから、撮影する前にたくさん話し合った。初めてのベッドシーンでは、予め申し訳ないと話した後、撮影に入った。撮影の時は、僕の思いのままに演じるから驚かないように話しておいた。ある程度の動線は決まっていたけど、ほとんどの部分がアドリブと考えていい。

―アドリブ? ベッドシーンを撮るコツがあるとしたら。

イ・ジュン:ハハ。可笑しい表現かもしれないけど、服を全部脱がせば楽になる。服を脱がせるのが大変だった。実際の状況ではなく、演技だから不自然に見えてはいけない。だからできるかぎり自然に見せようと努めた。他人の服を脱がせることって本当に難しいなと思うほどだった。方法がよく分からなかったので、一度服を破ったこともあった。恥ずかしかったし、いろんな面で大変だった。

―映画の中のベッドシーンが難しそうに思えた。恋愛映画でのベッドシーンでもなく、愛する感情もない状態で撮らなければならなかったと思うので。

イ・ジュン:そうだ。どこか不器用に演じなければならないし、愛はないという部分も表現しなければならなかったので、とても難しかった。トイレでの濡れ場は暴力に近かった。表現方法が全然分からなかった。どれだけ、最悪な人間になれば、このように悪いことができるのかと思いながらも、嫌だった。このような人が本当にいるのかなと思えて、怖くなった。そのようなことを思いながらも、そのシーンの意味がある理由は、トイレの全身鏡で自分の姿を見る時があったけど、そこで「今、俺は何しているんだろう」と心の奥にある感情を表現することだった。

―演技の経験はあるが、映画で単独主演として最初から最後まで責任を取るということは決して簡単なことではない。今回の映画を撮影しながら多くを感じたと思うが、自ら満足した部分はあったのか。

イ・ジュン:演技力とは関係なく、オヨンという人物の情熱を表現できたと思う。演技の上手い下手とは関係なく、眼差しで情熱を演じきれたことに満足している。もう一度演じても今のようにできないと思う、映画を見ながら自ら「もう一度撮りなおしたら、ここまでできない」と思った(笑)

―マスコミを通じて伝えられたように、バラエティ番組「強心臓(カンシムジャン)」に出演したことがきっかけで「俳優は俳優だ」に出演することになったが、キャスティングされた具体的な理由を聞いたことはあるのか。ある面でキム・ギドク監督やシン・ヨンシク監督など「俳優は俳優だ」の制作陣にとってもイ・ジュンを主人公として、それも単独主演としてキャスティングしたことは、簡単な選択ではなかったと思う。

イ・ジュン:僕も知りたい。僕がこの作品を選んだことは簡単だったことかもしれないが、その方たちが僕を選択したことは今でも疑問である。僕がキム・ギドク監督や制作会社の立場だったら、恐らく僕を選んでなかったと思う。だから本当に感謝しているし、より頑張ろうと思った。でも、どうして僕を選んだのかとは聞けなかった。

―普段からキム・ギドク監督の作品が好きだと聞いた。

イ・ジュン:映画をたくさん見るし、好きだ。キム・ギドク監督の作品も欠かさずに見たし、好きな作品もある。役者として、必ず一度は経験してみたい演技だと思ったので興味深かった。

―「俳優は俳優だ」でもキム・ギドク監督のカラーが滲み出ていた。

イ・ジュン:それほど強くはなかった。シン・ヨンシク監督とキム・ギドク監督が上手く調和していた。完全なキム・ギドク監督のスタイルではないけど、微妙に少し滲み出ている映画だった。

―脇役でスターになって、再びどん底に落ちる。このような場合はたくさんある。様々理由でスターの座から下ろされることが多い。今回の映画を撮影して初心に戻るきっかけになったと思う。

イ・ジュン:オヨンとは似ていないが、いつもその気持ちはある。芸能人という仕事はたくさんの関心を受け、愛される仕事であると同時に、それだけ一瞬で背を向かれる仕事である。そのような理由で常に謙虚な心で、前向きに生きようとした。また、他人に親切を施さなければならない。だから僕の名前には施す宣(ソン)の漢字が使われている。その名前を考えながら(笑) とにかく僕はそんな奴ではないけど、「絶対このような人になってはいけない」ともう一度心を引き締めた。

―すべての芸能人は「私は絶対変わらない」と心に誓う。しかし、自分も知らないうちに変わっていく。自分は変わらないために努力し、いつもと同じように行動しても、周りから違う待遇を受ける。だから自分も知らないうちに変わっていく。

イ・ジュン:あ!そう……かも……

―そのためには多くの努力が必要だ。自分だけではなく、もう少し長い目で見る必要がある。

イ・ジュン:そうだ。周りの人が言う言葉に耳を傾ける必要がある。そしてここ何年間の自分を振り返ってみると、新人の時より今の方がもっと優しい(笑) 今後周りの影響で僕が成長する時が来たら、その時またお話したい。

―元々俳優を夢見ていたと聞いている。演技に対する意欲も高かったし。韓国芸術総合学校で現代舞踊を専攻していたにもかかわらず、RAIN(ピ)の言葉で学校を退学したというインタビューを読んだことがある。

イ・ジュン:RAIN兄さんの一言で中退したわけではなく、演技のために下した決断だった。本当は何も無い状態でもう一度やり直したいと思い、学校を辞めた。

―どんなきっかけがあったのか。

イ・ジュン:もっと年を取る前に挑戦をしてみたかった。20歳はもう大人で、自分の未来を真剣に考える年頃だ。今もそうだが、幼いとは思っていない。自分自身に責任を取らなければならない年だ。同じことをしても、青少年と大人は違う。だから根拠のない自信を持って挑戦した。

―だが、MBLAQのファンには申し訳ないことでは。MBLAQのファンたちは俳優のイ・ジュンではなく、MBLAQのイ・ジュンの方が好きなのかもしれない。

イ・ジュン:まだ若いファンたちは衝撃を受けるかもしれない。いや、年齢とは関係なく衝撃を受けるかもしれない。僕が本当にやりたくてやったことなのに、僕のことを理解してもらえないかもしれないので不安である。おそらく瞬間的な衝撃で、慣れれば大丈夫だと思う。

―歌手としてステージに立つ時より演技をする時の方がより楽しいのでは。

イ・ジュン:ファンたちと同じ空間で呼吸するのは楽しい。成績とは関係なく、両方とも僕にとって大切なものだ。ただ両方できることに満足している。

―俳優を定義するなら?

イ・ジュン:言葉通り俳優だ。演技をする人。「頂上にいようと空にいようと、俳優は俳優だ」というポスターに書いてある言葉、そのままだ。どの位置にいようと、脇役であれ、主演であれ、演技を愛する心と演技に向き合う姿勢は変わらない。演技を愛する、好きで演技をする人が真の俳優だと思う。上手いか下手かはその後のことだと思う。

―イ・ジュンだけの演技観や俳優観は何だろう。

イ・ジュン:ロールモデルはいるが、まだ自分のカラーは見つけられていないと思う。まだまだ練習が必要だ。僕とよく合う役が何か今探している。演技するうえで確信することが重要だと思う。もちろん「俳優は俳優だ」は確信して、撮影に臨んだ作品だが、自分に自信が持てときに、演技観や俳優観が作られると思う。だから出演するかしないかは関係なく、シナリオをたくさん読んでいる。

―ロールモデルの俳優は誰?

イ・ジュン:レオナルド・ディカプリオだ。彼の出演作をたくさん見たけれど、全て違う姿だった。一番羨ましかったのは、キム・ギドク監督が「真心を尽くすと、心臓の音が聞える」とおっしゃっていたけれど、彼から心臓の音が聞こえた。僕も彼のように経験から生まれた実力が欲しい。特にこれといった表情をしていないのに共感できる、そのようなことがとても不思議だ。

―歌手と俳優、今後どのように活動していくのか。

イ・ジュン:グループは僕にとって大切だ。MBLAQというグループが存在する限り、一緒に活動する計画だ。だけど、永遠なものはない。もしMBLAQが解散したら、その時はそれぞれの道を歩むことになるだろう。でもソロ活動にあまり興味がない。5人で活動する時が面白い。

記者 : ファン・ソンウン、写真 : ク・ヘジョン、翻訳 : チェ・ユンジョン