デジタル技術で誕生したゴリラのリンリンが主演を務めた映画、「ミスターGO！」。この映画には俳優ソン・ドンイルがいる。

ソン・ドンイルは映画で、プロの世界は結局お金という鉄則に基づいて行動するエージェントソン・チュンス役に扮し、熱演を繰り広げた。針で突いても血が1滴も出ないような冷静な人物だが、野球するゴリラリンリンとしっかりした15歳の少女ウェイウェイ(シュー・チャオ)に出会い、小さな変化を経験する人物である。

人間味や義理などとは程遠い、選手をあちこちに売り渡す商人のマインドと俗物根性を持っており、「人間狩人」というあだ名がついている人物だが、胸の奥にはいつも一人の寂しさを抱いているソン・チュンス。もしかしたら、ソン・チュンスはソン・ドンイルのイメージから誕生したキャラクターであるかも知れない。

ソン・ドンイルはコミカルなイメージから、どこか毒々しいイメージまでを包括している俳優である。明るく微笑んでいるときは近所のおじさんのような感じだが、無表情のときは本音を隠している猛獣のようだ。このようなソン・ドンイルのイメージはソン・チュンスの性格と妙に似ている。

キム・ヨンファ監督、野球が好きかと聞いてキャスティング

300kgを超える可愛さとは程遠いゴリラを主人公にした映画「ミスターGO！」は、まるで冒険のような作品だった。純粋な韓国のデジタル技術でリアルなゴリラを誕生させた。しかも、野球するゴリラを。誰もが「一体どんな映画を作ろうというのか」と思ったはずだ。ソン・ドンイルはこのような冒険のような映画に、キム・ヨンファ監督への信頼一つで出演を決めた。

「ある日突然電話がかかって来て『野球は好きか』と聞かれました。そして『野球映画をするから野球を少し見ておいて』と言われました。信頼です。キム・ヨンファ監督とはお金のためという拒否感がありません。僕の長所と短所をよく知っています。最初から僕を念頭において脚本を書きます。それで名前もソン・チュンスです。人と接する方法が僕と似ています。お金とは関係ない、お互いの信頼があります」

信頼で出演を決めたとはいえ、いつも楽しいわけではなかった。存在していない俳優リンリンと、言葉も通じない中国人の女優シュー・チャオまで、簡単なことなど一つもなかった。

「『ミスターGO！』を撮りましょうと言われたときには本当に当惑しました。負担になりました。リンリンは存在していない俳優で、シュー・チャオとは言葉が通じないでしょう。本当に重荷を感じ、途方に暮れました。逃げたくなかったか？契約金をもらったから必ずやらなければ(笑) 前作もそうでしたが、キム・ヨンファ監督と共にするという信頼がありました」

撮影中脳震盪まで起こし…

「ミスターGO！」でソン・ドンイルは多様な演技を披露した。存在していない俳優リンリンと息を合わせ、お酒も一緒に飲んだ。何もない虚空に向かって足で蹴る演技も数回。さらには撮影中、脳震盪を起こし救急室にまで運ばれた。

「本当に多くの演技をしました。その中でも脳震盪を起こしたこと。映画で僕が飛んで行くシーンがありましたが、本当に頭を地面にひどくぶつけてしまい脳震盪を起こしました。瞬間的に意識を失いました。病院に行って来てからまた撮影しましたが、結局は脳震盪を起こし、本当に意識を失ったシーンを使いました。映画館でそのシーンを見ると、またくらくらしました。あれほどなら脳震盪も起こすだろうと思いました。芝生でなかったら大変なことになっていました」

ソン・ドンイルはソン・チュンスに変身するために並々ならぬ努力を注いだ。短気な性格を表現するために歩き方を変え、スマートなエージェントを表現するために体重を減らした。ソン・ドンイルはそのようにきちんとソン・チュンスに変身した。

「直にアジアエージェントに会って、その人のスタイルを見ました。実際、元野球選手の方でした。背も高く外車に乗って来ました。俳優になってくださいと言いたくなるほど、格好良かったです。エージェントは選手のイメージをグレードアップさせなければならないと思います。キム・ヨンファ監督と『いついつまでにダイエットする』と約束しました。ヘアアレンジやメイクアップをしない俳優として有名ですが、今回はメイクアップもヘアも全部しました。短気なソン・チュンスの歩き方はキム・ヨンファ監督を真似ました」
最後にソン・ドンイルは「ミスターGO！」のドラマが弱いという評価に対する思いを伝えた。「ミスターGO！」はキム・ヨンファ監督の作品ということから“感動的なストーリー”があるだろうと期待された。デジタルで作ったリンリンのキャラクターとリアル3Dに対する関心に劣らない期待だった。これにソン・ドンイルは「本当にストーリーに集中して見たのか」と反問した。

「『ミスターGO！』は複雑であり、多様です。実はストーリー中心の映画ですが、3DやCGに関心が集まりました。装置的にどんなカメラを使ったのかを考えるでしょう。ストーリーではなく3Dを中心に映画を見てからストーリーについて話すのは変ですね。ストーリーを中心にして見ると、ソン・チュンスの感情の変化、ウェイウェイの感情、そのようなものが最高潮に達する頂点を見ることができます」