【コラム】「シークレット・ミッション」偉大な興行と隠密な不安 ― カン・ミョンソク

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※この記事には映画とウェブ漫画「シークレット・ミッション」に関する内容が含まれています。
若いイケメン男子たちが集まる。一緒にいるときはこの上なく無垢だが、外では大人たちと戦う。彼らの名前はかつてH.O.T.やF4、チャルグム4人組(ドラマの中のイケメン4人組を称する言葉)と言われていた。そして、今彼らの名前は5446部隊、または映画「シークレット・ミッション」となった。この映画は「ベルリンファイル」のように南北分断を背景にし、今年で25歳のキム・スヒョンと20歳になったイ・ヒョヌが南北両方から追われるスパイを演じる。彼らは戦うときは骨が折れたり、刀で背中を刺されたりするが、身分を偽装したまま一緒に暮らすときはカタクチイワシの手入れを一緒にしながら冗談を交わす。

ストーリーは深刻に、行動はアイドルのように

韓国に派遣されたスパイのリ・ヘジン(イ・ヒョヌ)が、自身の傷を見せてやると言いながらシャツの上から水をかけ傷をさらけ出すことは、この映画のアイデンティティを象徴している。ストーリーは深刻だが、キャラクターはまるで男性アイドルのようだ。10代の代表者として学校の問題を歌った「戦士の後裔」の頃のH.O.T.も「Candy」では可愛い男になった。しかし、そんなH.O.T.の姿とは違い、「シークレット・ミッション」は若くてハンサムな男たちを南北分断の現実に追い込む。それはKBS「花より男子~Boys Over Flowers」に登場するF4の中の財閥2世、ク・ジュンピョ(イ・ミンホ)が会社の将来のため政略結婚をするかに悩み、MBC「太陽を抱く月」のイ・フォン(キム・スヒョン)が、夜は失われた初恋に涙を流しながらも昼には腐敗した家臣たちと対抗しなければならなかった状況と似ている。音楽からドラマへ、そして映画へと移っていくほど観客の年齢層は広がり、彼らは自身の好みに合う題材を望むようになる。アイドルグループから発祥したヒット作を作るためのコツが20余年の歳月を経て、大衆文化産業のすべての領域、すべての年代に拡大されると同時に表現方法も変わっていった。

キム・スヒョンは「シークレット・ミッション」が目指すある地点を正確に見せている。「太陽を抱く月」で既にファンタジーと現実の間で絶妙なバランスがとれた演技を見せた彼は、非現実的な状況の中で現実的な重さを見せなければならない演技を正確にこなす。映画は原作以上に劇の背景となる貧民街をリアルに描写し、ソン・ヒョンジュとジュヒョンなどベテラン俳優を助演にキャスティングすることで真剣な雰囲気を演出した。一方、コメディでは人がパンチを受け空へ飛んでいくといった漫画のような演出も見せる。キム・スヒョンは「シークレット・ミッション」で町のおバカを装ったスパイのウォン・リュファンを演じながら二つの世界を一つに統合する。ハンサムで漫画の主人公らしい印象は与えず、現実的だがファンタジーを夢見るようにする。30代以上の俳優に似合いそうなキャラクターを少年のような20代の俳優が演じる。10代はもちろん、20代前半からアイドルに慣れていた30~40代の観客も熱狂することができる。市場の文法は変わり、新しい世代のスターが誕生する。そして、彼は先輩と違う演技をする。映画は物凄い人気を得ており、若い俳優はトップスターになった。「シークレット・ミッション」は、部分的に悪くない結果を出した。


ウェブ漫画時代の栄光と悲劇

だが、「シークレット・ミッション」はキム・スヒョンやイ・ヒョヌの世代には悲劇であるかもしれない。「シークレット・ミッション」は同名の原作であるウェブ漫画をまるでコピー&ペーストでもしたかのようにそのまま取り入れている。ほとんどのエピソードはもちろん、台詞まで同じシーンが数え切れないほど多い。ウォン・リュファンがおバカの振りをし、道で大便をするシーンのようにカットの展開まで似ている部分もある。原作をそのまま生かすことも脚色になる。しかし、「シークレット・ミッション」はウェブ漫画のほぼすべてを取り入れているにもかかわらず、最も重要な北朝鮮から派遣された特殊工作部隊オソン組の設定はコピーしていない。映画はオソン組の代わりに特殊工作5446部隊という名前を前面に出し、オソン組の組長である5人の話は縮小、または省略した。特殊工作5446部隊の後を追った国家情報院の要員、ソ・スヒョク(キム・ソンギュン)は何の関係もないウォン・リュファンを抗命してまで助けようとする。これは原作のエピソードをそのまま持ってきたものの、彼がオソン組の組長出身だった設定を省略した結果である。

その違いの意味は、ウォン・リュファンとリ・ヘジンの関係からはっきりと見られる。原作と映画の両方でウォン・リュファンに対するリ・ヘジンの感情は尊敬と愛の間を行き来する。ウォン・リュファンが自分にビーニーを被らせてくれたとき恥ずかしがるリ・ヘジンの姿は、ウェブ漫画にもそのまま描写されている。しかし、原作は二人を含めたそれぞれの組の事情を描き、リ・ヘジンの感情を深く繊細に描写している。ウォン・リュファンに対するリ・ヘジンの感情は、仲間を殺してでも生き残らなければならなかった少年が人間的な関係を結ぶことを渇望することから始まった。原作はファンタジーに近いストーリーを展開しながらも、思春期を奪われた少年のアイデンティティに対する悩みと真のコミュニケーション、そして大人の世界とぶつかる少年の残酷な話を描く。しかし、映画はその深い苦痛から始まった少年の愛を一次元的に描写するだけだ。ウェブ漫画が読者を考慮した要素を取り入れながらもその行動の理由を深く描いていることに対し、映画はこれを観客のためのサービスカットにしてしまう。また、映画の後半部に別の組の組長であり、ウォン・リュファンの助力者であるリ・ヘラン(パク・ギウン)の話が急に解決されてしまったことも彼のストーリーをほとんど扱わなかったからである。「シークレット・ミッション」は少年の若さは好きだが、いざ少年と話し合う気はない大人のように見える。

「花より男子~Boys Over Flowers」から「シークレット・ミッション」に繋がるある傾向はジャンルとジャンル、世代と世代の間で起こり得ることへの予言のように見える。10~20代の悩みをファンタジーのように描いた原作がその世代から支持され、人気を得た。映画はそのウェブ漫画の人気を基に話題を集め、ウェブ漫画のほぼすべてを取り入れることで興行に成功した。だが、実際にはその世代の話と感受性を反映させなかった。無限の可能性を持った20代の俳優がもっと深く真剣に同世代の感情を話す機会も奪われた。少年と少女を主演にする数多くの作品が作られるが、10代や20代の世界を描いた青春物は徐々に減ってきている。偉大な業績のため陰密に犠牲にしなければならない工作員。偉大な興行のため陰密に消えていく青春の物語。10代の欲望から出発したある産業のモデルは、その情緒が消えたまま興行の要素と制作システムだけが残った。そのようにして産業は老いていく。そして、青春たちは行き場をなくす。信じていた大人たちに捨てられたあの少年スパイのように。

文:コラムニスト カン・ミョンソク

「NAVERコラム - カン・ミョンソク編 -」では、今話題の人物にクローズアップし、コラムニストのカン・ミョンソク氏が執筆。韓国で注目が集まっている人物や出来事についてお届けします。

記者 : カン・ミョンソク