アン・ヒョンモ院長“チョ・インソンやチャン・ヒョクもこの人の前では弟子になる”

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17年間スターたちの師匠として生きてきた人がいる。俳優からスタートし、今は俳優たちを教える役者の指導者になったアン・ヒョンモ院長だ。

彼と共に演技を勉強した俳優たちの顔ぶれは名前を聞いただけでも感嘆してしまう。チャン・ヒョク、チョン・ジヒョン、チョ・インソン、ソン・ジュンギ、キム・ソナなど、誰でも一度は会いたいと思うスターであるためだ。アン・ヒョンモ院長は彼らが新人の時からトップスターになった今でも連絡を取り合い、演技だけではなく人生全般において一緒に交流している。

京畿道(キョンギド)道立劇団で首席演技団員として11年間1500回余りの公演を行ったベテラン。足の怪我により役者としての道を諦めた彼は、1997年から今まで、練習生、新人、プロ俳優など100人以上に教えてきた。アン・ヒョンモ院長の弟子の中でも韓国で指折りのスターたちについて彼から聞いてみた。

「その冬、風が吹く」チョ・インソン…高度な演技とはこういうこと!

アン・ヒョンモ院長と俳優チョ・インソンの縁は13年にもなる。彼と多数の作品をしてきており、チョ・インソンの除隊後の復帰作「その冬、風が吹く」も一緒にした。

「チョ・インソンは軍隊に行って声がかすれている状態でした。そのため演技をすること自体が難しいものでした。以前の観客を呼び覚まさなければいけないので。色々な話をして、人物の分析も一緒にやって、方向性を設定して、トーンを決めました」

ドラマの中でチョ・インソンが演じたオ・スは、これまでよく見てきたような爆発的な演技トーンも、最近ハ・ジョンウに代表される“リアル生活型”の演技でもなく、特別な形式の演技トーンを披露し、関係者の間で大きな話題や好奇心を集めた。

アン・ヒョンモ院長は「チョ・インソンが『その冬、風が吹く』で披露した演技は、高度に様式化されてこそ可能な演技です。そのトーンを作るためにたくさん努力をしました。練習に練習を重ねて出来上がった演技です。チョ・インソンは飲み込みの早い優れた役者。膨大な練習量はもちろん、そのような“勘”まで備えている彼だからこそ、今回の様式化された高度な演技をこなせたんだと思います」と好評した。

チャン・ヒョク、演技の練習に最も励む役者

アン・ヒョンモ院長は、弟子の中でも一番練習に励む役者としてチャン・ヒョクを選んだ。今回の「IRIS 2」の時も撮影に入る前に会って、色々な話を交わしたという。

「チャン・ヒョクは暇ある度に来て『先生、この作品は……僕はこんな役です』『どれがいいと思いますか?』『先生が読んでみてください』『先生の意見はどうですか』『どちらに方向を決めればいいでしょうか』と常にたくさん質問をし、たくさん話します。そうすると、僕は作品でその人物のどのイメージを立てればいいか、一番ポイントになるシーンや感情について掘り下げた会話をします。

チャン・ヒョクはトップスターになっても新人時代の気さくな人柄を持っています。いつだったか練習をする時に「お腹空いていませんか?僕はお腹がすいて」と言ったことがあり、コンビニでクリームサンドイッチや牛乳を2つ買ってきて一緒に食べました。他にも美味しいものがたくさんあるのに、新人時代の大変だった時を思い出して、そのように買って食べていました。役者としての実力やポジションはだんだん上がっていますが、初心を忘れないようにする彼は本当に素晴らしいと思います」

「私のオオカミ少年」「優しい男」…変身の達人ソン・ジュンギ


絶えず変身する男ソン・ジュンギ。昨年の映画「私のオオカミ少年」で純粋で野性的な魅力を持ったオオカミ少年を演じた彼は、同じ年「優しい男」ではムン・チェウォンとパク・シヨンの間を行ったり来たりする繊細な演技を披露し、女心を掴んだ。

「役者に初めて会うと、一つ一つの作品をしながらそこで終わるのではなく、その役者がこれから進むべき軌跡を一緒に描いていきます。『トキメキ☆成均館スキャンダル』でソン・ジュンギは思いっきり楽しむことができましたし、『根の深い木~世宗(セジョン)大王の誓い~』(以下『根の深い木』)では膨大な量の歴史の勉強も一緒にやりました。彼が演じた世宗(セジョン)だけではなく、イ・バンウォンなど、その人物のルーツや時代背景など、すべてを知り尽くしてこそ、その人の台詞一つ、眼差し一つにも深さが感じられるものです。人物のあらゆる背景が、心の中から頭の中へと入ってくるように助けてあげます。

ソン・ジュンギの眼差しは非常に強烈です。『優しい男』ではそんな眼差しとともにボイストレーニングもして、声は低く小さいけど、密度の高い、自然な響きのある音を見つけ出したのです。囁いているようですが声はちゃんと聞こえているんです。眼差しについては何かをしようとするのではなく、相手を深く見入るように眺めました。何の気持ちも感じられない無心の状態でも、何気なく深く貫くような眼差しを作りました」

アン・ヒョンモ院長は、ソン・ジュンギについて話す時、手で円を描きながら説明した。「トキメキ☆成均館スキャンダル」「根の深い木」「優しい男」で女たらしのようにふらふらと遊びほうけていようが、また睨みを利かせていようが、温かい雰囲気が醸し出せるように描ける円。そうやってグルグルと回ることによって、以前よりも更に堅固で深くなるという。

アン・ヒョンモ院長は「そのような様々な作品を通じて回った時、いい役者になるのだと思います」とし、「すでに一周したソン・ジュンギはその深さが同じ年頃の俳優と比べて優れています。彼の深さは予測し難いほど。今見せているものより、これからが期待されるいい役者です」と伝えた。

「退職しても夢は必要…長くかかっても夢を持ち続けるように」

アン・ヒョンモ院長は、sidusHQ所属俳優の演技指導責任者や「C.A.S.T. by iHQ」演技アカデミーの院長を務め俳優を育てている。17年間で彼が読んだ台本やシナリオはトラックに積みきれないほどだ。

彼が最近「スターが輝く理由」という本を執筆した。この本は必ずしも役者を夢見る人だけではなく“夢を失った若者たちや大人たちのために”推薦したいと言う。

アン・ヒョンモ院長は「韓国は目標指向型で子どもたちを指導し、大人たちもそのように生きているようです。夢がなく目標だけに向かって生き、その夢を叶えた後は、非常に大きな虚無感に襲われます。目標はいつかは叶いますが、夢がないということはその次の将来を考えないことと同然です」と話す。

「僕も中学生の娘と小学生の息子がいます。しかし、最近の子どもたちは目標はあっても、夢はないように思います。いい高校、いい大学に行こうという目標はあります。そうやって大学に入ると、遊んで食べてばかりの人がたくさんいます。大人も一緒だと思います。目標を叶えられなければ、人生に挫折感を感じ、叶えられればその瞬間が嬉しいだけ。僕は目標指向型の人生ではなく、目的が導く人生に変えなければならないと思います。

子どもたちだけではなく、大人にも夢は必要だと思います。僕が教える学校には、子供を産んでから学校に来て演技を学ぶ方々がいます。過去に役者を夢見て諦めた人です。僕は退職してからも夢を持つことは必要だと考えています。それが必ずしも20、30代ではなく、60、70代であろうとも夢は叶えられると思っています。長くかかっても挫折をせず、その夢に向かっていければと思います。遅く叶えられることもありますから」

アン・ヒョンモ院長は役者になりたいと思う人のための授業だけではなく、セルフリーダーシップ講義、メンタリング講義など、この時代を生きるサラリーマンを対象にした講義も多数行っている。

「サラリーマンに会って色々な話をしてみると、彼らも若者だった時、夢があったと、夢について話す時があります。大の大人であるおじさんたちが泣きます。その夢が今や自身の夢ではなくなったと、自身の夢を叶えられなかったと泣くのです。僕はその夢というのが今からでも遅くはないと話します。諦めないようにアドバイスします。最後まで夢を諦めないでください」

役者になりたくて演技を学ぶ人だけではなく、最近は趣味の一つとして演技を学びたがる一般の人々も増えている。

「演技をする時、お姫様の役だったり、殺人者、ホームレス、医者、刑事、会社の代表などの役を演じます。演技をしながらその人物を理解し、理解することで他の人々も理解できるようになります。本人が家庭あるいは職場での人間関係に問題があった時、理解できなかった上司や部下の立場も理解できるようになるのです。『ああ、なぜあの子は僕が嫌いなのか』『僕のこんな行動が迷惑になるんだなあ』と分かるようになります。自身を鏡に映す経験です。

また、技術的には“僕がこのように表現したら、相手は理解できずもどかしく思われることもあるんだなぁ”“この人はこれのために生きているけど、自分は何のために生きていき、何が重要で、自分は何をしなければならないのか”というふうに考えが深くなり、人生を洞察できる力も身に付きます」

表現できない人々にアン・ヒョンモ院長は、一度演技を学ぶように薦めた。韓国の教育課程で文章を書いて読む訓練はたくさんするが、人前で表現することはそうではないからだ。

「聞いて書く勉強はたくさんやりますが、話して表現する訓練は幼い時からちゃんと教育を受けていないと思います。子どもたちには話す教育も必要です。演技を学べば自身が持っているすべてを活用して表現することができます。表情、眼、呼吸などすべての筋肉を活用します。全身で内面的なことが表現できるのです。

演技は、自身が望むとおりに表現できるため楽しいんです。また、社会生活をして抑圧されていた部分を表現できるので、ストレスの解消にもなります。舞台の上では『もっと音を出せ!もっと笑え!もっと集中しろ!もっと大きく!』など大きく表現しなければならないため、これまで自身の生き方とは逆のやり方で表現するから楽しいんです」

どうすれば良い役者になれますか?

よく聞いてよく見なければなりません。それが一番基本です。本を読まない人は演技をするのが難しいと思います。役者という人は一生本を読んで解釈して表現しなければなりません。台本だけではなく、色んな本をたくさん読まなければいけません。

ですから今でも僕は朝起きると、新聞をすべて広げて読み、バラエティ番組も1ヶ月に1度は必ず見ます。「ミュージックバンク」「ショー 音楽中心」「1泊2日」「無限に挑戦」「ギャグコンサート」などすべて見て、ドラマも地上波3局だけではなく、ケーブルや総合編成チャンネルも見ています。台本も1週間に20~30冊は見ています。

それでも本は手から離しません。本は生きていくことを表現するものであるため、演技が上手くなるためには、本を読んで自身の考えを整理できなければなりません。例えば、「これは悲しいことだなぁ」という情緒的な基準を自ら持っていなければなりません。そんな基準が必要です。

記者 : チョ・ギョンイ