【ドラマレビュー】「会いたい」正統派ロマンスの枠を超えた新鮮な実験

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推理、サスペンス、家族愛まで盛り込んだロマンスドラマ

MBC水木ドラマ「会いたい」。最初は今年の頭に旋風的な人気を博した「太陽を抱く月」の現代バージョンだと思った。赤い糸で結ばれているが、邪悪な大人の欲により、幼い頃に離れ離れになり苦しむ子供たちの話だ。

JYJ ユチョン、ユン・ウネ、ユ・スンホなど、若手俳優たちの優れたビジュアルを前面に押し出した正統派ロマンスドラマだと思っていた「会いたい」は、ヨ・ジング、キム・ソヒョンなど子役たちが登場した第3話から、地上波で放送されるロマンスドラマだとは信じることができないほど、驚きのジャンル変換を図った。

「会いたい」の基本的な枠はロマンスだ。子供の頃アメリカに留学していたが、父親に会いたくて韓国に戻ってきたハン・ジョンウ(ヨ・ジング)は、殺人犯の娘だと呼ばれながらいじめられていたイ・スヨン(キム・ソヒョン)に想いを寄せる。しかし、自身の息子ハン・ジョンウではなく幼い腹違いの弟カン・ヒョンジュン(アン・ドギュ)から財産を奪おうとするハン・テジュン(ハン・ジニ)の欲と、財産を守ろうとするカン・ヒョンジ(チャ・ファヨン)の葛藤が、大人になったハン・ジョンウ(ユチョン)、イ・スヨン(ユン・ウネ)そしてカン・ヒョンジュン(ユ・スンホ)にとっては、一生忘れられない傷となった。

「太陽を抱く月」で権力への底知れぬ貪欲さが幼いヨヌ(キム・ユジョン)に呪いをかけたとすれば、「会いたい」は実に現実的でありながらも、更に苦しくハン・ジョンウとイ・スヨンに呪いをかける。14年前に強姦されたイ・スヨンは、大人になっても当時の事件を忘れることができない。幼いころイ・スヨンが強姦されることからただ目をそらすしかなかったハン・ジョンウの時間は、未だに14年前のその時で止まっている。

写真=MBC

次回を期待させる推理の緊張感

当初ハン・ジョンウの設定は“シンデレラコンプレックス”に相応しい、白馬の王子様だった。しかし、彼は幼いころ、自身の力が足りず守れなかった少女を捜すために、そして少女を傷つけた犯人たちを自身の手で倒すために、王子の身分を捨て刑事になる。

富豪の孫の王子様が、殺人犯の娘としていじめられていた綺麗な少女を助けるのは、第2話までだ。その後、幼い少女は近づいてはならない王子様と出会ったという理由で悲劇的な事件に遭う。むしろ物理的に、精神的に少女を慰めてくれる王子は、ハン・ジョンウの叔父ハン・テジュンのせいで片足を引きずるようになったが、若くして大きく成功したカン・ヒョンジュンだ。

ジョイという新しい名前を与えられ、14年の間、悲惨だった過去を忘れたと思っていたイ・スヨンが、カン・ヒョンジュンと共に韓国を訪れる。イ・スヨンは自身を強姦したカン・サンドゥク(パク・ソヌ)と偶然会い、14年前の悪夢を思い出しながら苦しむ。しかし次の日カン・サンドゥクは誰かによって殺害された状態で発見され、常にカン・サンドゥクが収監されている刑務所を訪れていじめていたハン・ジョンウと、カン・サンドゥクの家の駐車場に設置されたCCTV(監視をするためのビデオカメラ、及び監視システム)に映っていたジョイも有力な容疑者として目を付けられる。

ハン・ジョンウとイ・スヨンが再会する主なテーマの上に、過去にイ・スヨンを強姦したカン・サンドゥク殺害の容疑者を追う過程も並行しているため、「会いたい」は過去を懐かしむハン・ジョンウとイ・スヨンのロマンスと同じボリュームで、カン・サンドゥクを殺した真犯人探しも話題となった。すでにインターネットの記事に対する書き込みや掲示板で、カン・サンドゥクを殺した犯人が誰かに気づいた視聴者もいるが、ロマンスジャンルにも関わらず、興味深い推理の要素で次回への期待を高めている。


強者の欲によって悲劇を経験した彼らが、新しい家族を作る

ロマンスに推理とサスペンスを取り入れた技法は、推理小説大国の日本でよく使われているジャンルだ。しかしサスペンスジャンルをあまり好まない韓国で、全年代層の視聴者を対象にする地上波ドラマとしては、新鮮な試みだ。そのような点で、一生忘れられない初恋の淡い思い出に、“強姦”という性的犯罪に対す警戒心を持たせ、本当のカン・サンドゥクを殺した犯人が現れるまで、完璧な蓋然性とプロットで適切な緊張感を持たせるムン・ヒジョン脚本家の腕は、絶好調の状態だ。

親の代から悪縁で結ばれた三人の男女の三角関係が中心にあるが、「会いたい」には過去、強者の欲により悲劇を経験した者たちが、お互いに慰めあう温かな視線が隠されている。幼いころ父に大きく傷つけられた王子ハン・ジョンウは、父親と縁を切り城を離れる。そしてイ・スヨンの母親キム・ミョンヒ(ソン・オクスク)と、過去に強姦され行方不明になったイ・スヨンを追跡する途中、事故で死んだキム刑事(チョン・グァンリョル)の娘キム・ウンジュ(チャン・ミイネ)と新しい家族を作る。

他人の子供で、イ・スヨンの事故と関わりのあるハン・ジョンウであるにも関わらず、キム・ミョンヒはハン・ジョンウを自身の息子と同様に愛する。ハン・ジョンウもまた、実の父ハン・テジュンより、キム・ミョンヒを実の親のように慕う。ハン・ジョンウの実の父ハン・テジュンが、お金のために子供を利用できる悪党だとすれば、キム・ミョンヒは過去を忘れたいとする娘イ・スヨンのために、見ていないふりをして見過ごせる、献身的存在だ。

ここにカン・サンドゥクを殺した犯人が、警察署で働く清掃員(キム・ミギョン)だと暴かれ、彼女の娘ボラの正体に疑問を抱くようになった。未だ娘が中学校の時に着ていた制服を保管し、過去カン・サンドゥクに同種の前科があることを勘案した時、彼女もまたカン・サンドゥクの強姦の被害者の家族ではないかなど、意見が分かれている状況だ。

視聴率で測れない完成度

このように「会いたい」の登場人物は、主人公だけでなく、ほとんどが悲惨な過去から逃れられない傷を持っている。社会の理不尽さにより、崖っぷちに追い込まれた者たちが、お互いを癒し合う過程もまた、ただ男女の関係の修復にフォーカスを当てる他のロマンスドラマと差別化された「会いたい」の特徴である。

「会いたい」は、特定のジャンルに限られないドラマだ。人気のあるスターを前面に出したロマンスを掲げているが、強姦犯を殺害した容疑者を追跡する過程があり、その中には残酷な犯罪により、長く苦痛を強いられる被害者の涙が隠されている。そして権力者と獣の欲により傷ついた者たちは、互いの出会いと同居の中で慰めあう。

ロマンスドラマの中に推理、サスペンス、社会の理不尽さ、家族愛まで取り入れた「会いたい」は、多少見慣れないかも知れない。しかし、多くの物語を溶け込ませ、普通の青春ロマンスでは感じられない、奥行きのある感動を与える「会いたい」の高い完成度を、視聴率で測ることができるだろうか。男女の恋物語には興味をなくしていく時代。ロマンスを掲げながらも推理小説に匹敵する緊張感とスリル、感動の家族愛まで適切に溶け込ませた「会いたい」の実験精神に注目しなければならない。

記者 : クォン・ジンギョン