【ドラマレビュー】「会いたい」の志向性…復讐ではなく“癒し”

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写真=MBC

数々の復讐劇以降登場した「会いたい」の選択は?

正統派の恋愛ドラマを掲げてきた「会いたい」が、衝撃的なサスペンスに変わった。

韓国で6日に放送された第10話で、ハン・ジョンウ(JYJ ユチョン)は警察署の清掃員であるボラの母ソン・ミジョン(キム・ミギョン)について行った部屋で、カン・サンドゥク(パク・ソヌ)を縛ったと見られるテープとひもを見つけた。ハン・ジョンウが手錠を取り出そうとした瞬間、彼女が持っていたスタンガンで倒れた。このシーンがより衝撃的だった理由は、彼女があれほど優しくしていた婿候補であるハン・ジョンウを攻撃したためだ。

「会いたい」は、妙なドラマだ。確かにヒロインは別にいるが、いざ主人公が愛情を注ぐ対象はイ・スヨン(キム・ソヒョン、ユン・ウネ)とボラの母だ。特にイ・スヨンの母(ソン・オクスク)に関しては、呼び名から“恋人”だ。会う度にハン・ジョンウは「僕の恋人、今日は何をした? 本当に会いたかった」と言って抱きしめる。それだけではない。彼女が呼び、痛いと言う時は、どれだけ忙しくてもすぐに駆けつける。さらにハン・ジョンウは服を投げながら殴るイ・スヨンの母をぎゅっと抱きしめて慰める。これより強いラブシーンがどこにあるのだろうか。

また、彼はボラの母にも愛情を注ぐ。娘も見てくれないずれた手首の包帯を、毎回巻き直すのもハン・ジョンウで、刑事が残したご飯を食べるボラの母を見て心を痛め、食事に誘うのも、ご飯は食べたのかと聞いてあげるのもハン・ジョンウだ。実の母はいない上、義理の母はそばに寄せ付けないようにし、14年間もっぱらイ・スヨンだけを思い続けてきたハン・ジョンウに、二人は実の母のように優しかった。

写真=MBC

二人の母がハン・ジョンウから背を向けた

もちろん、第11話でボラの母がハン・ジョンウにどういう対応をするのかは予測できない。それだけでなく、今はハン・ジョンウを自身の息子のように思うイ・スヨンの母も、裸足でしばらく歩いた後、ハン・ジョンウがそれまで耐えてきた14年間を思い出し、路上に座り込んでしまう。だが、二人ともまず選択したのは自身の娘で、その娘たちはカン・サンドゥクという犯罪者の犠牲者だと推測される。

イ・スヨンの母の絶叫がより痛ましく思えた理由は、これまで自然に執着したり、厚かましくてずうずうしい態度を見せたりしながらも、温かい心で14年間を走ってきたハン・ジョンウを通じてドラマを見るようになったためだ。そのため、「お前から殺してやる」というイ・スヨンの台詞がより痛ましく聞こえる。また、寒い日に一人で遊び場に行き、人もいないブランコを押しながらイ・スヨンを見守るしかないハン・ジョンウの姿に、ドラマはさらに切なくなった。

14年前に強姦を受けるイ・スヨンを置いて逃げたハン・ジョンウは、まさにこの時代の数々の不正から目をそらす私たち自身の姿だ。14年間もっぱらイ・スヨンだけを思い続けてきた彼は、私たちがなくした、または私たちの中に隠れている良心、あるいは気づいた自我のあらわれだと言える。ユチョンの演技を見ると、自然にそんな印象がする。

それにもかかわらず、ハン・ジョンウから目をそらすしかなかった二人の母は、娘を亡くした傷がどれだけ致命的なものなのかを逆説的に証明している。

公的な権利を探すための私的な復讐

カン・サンドゥクの被害者と推測されるボラの母は、社会で処罰されなかった性犯罪者を処罰するため、私的な復讐を断行する。ロングセラーであるカン・サンジュン教授の「続・悩む力」を見ると、近代以降資本主義システムが社会全体に拡大し、公的領域の境界が微かになり、その影響力も弱まると今日の社会を診断している。

そのような定義を証明しているかのように、連日検事のモラルハザードによる犯罪が新聞の社会面を飾っている。弱者が保護され、隠れる場所がどんどんなくなっていることは当然だ。それを反映するかのように、最近公開した映画「26年」をはじめ、「母なる復讐」ドラマ「追跡者 THE CHASER」など、今年の一年間、制度的に保護されなかった弱者が自身の公的な権利を取り戻すため、復讐を断行する復讐劇が次々と出てきた。「会いたい」のボラの母の選択もそれと同一線上にある。

だが、ボラの母として登場した女優のキム・ミギョンが特別出演であることを見ると、「会いたい」制作陣の選択は“私的な復讐”ではないように見える。それだけ執拗に付きまとったハン・ジョンウがカン・サンドゥクを殺さなかったように、復讐より心の傷のケアにより関心を持っている。

イ・スヨンは、遊び場で自身を待ちながら「魔法の城」を歌うハン・ジョンウを見ながら少しずつ心が溶けていき、「帰れ」と言いながらハン・ジョンウを殴っていたイ・スヨンの母も、ハン・ジョンウの変わらぬ配慮に崩れるように、二人の母娘はハン・ジョンウによって癒されている。もしかするとボラの母にも警察署だけで会う婿候補、ハン・ジョンウ以上のハン・ジョンウがいつもそばにいてくれたら、違う選択をしたかもしれない。まるで制作陣が「復讐も、処罰も大事だが、あなたたちがハン・ジョンウのように傷ついた人にもう少し近付くことができたなら世の中は今よりもう少し暖かくなるだろう」と話しかけてくるような気がする。

すでに復讐を終え、婿にしたいとまで思ったハン・ジョンウに、スタンガンまで使ったボラの母だが、再び温かいハン・ジョンウによって彼女の最後の選択に癒しの要素が反映されるかもしれない。「ご飯は食べたか?」で繋いだ絆が因縁に終わらないことを願う。

記者 : イ・ジョンヒ