「26年」の映画化につながった原作者カン・プルの根気強さ…そして投資の裏話

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映画「26年」で知っておくべきいくつかの事実…原作者、投資編

「26年」に対する漫画家カン・プルの思いは他のウェブ漫画と違う。2003年にすでに「23年」というタイトルで企画し始めたが、自ら萎縮してしまい2006年になってようやく発表したことで、映画化への思いもその分強くなったわけだ。OhmyStarとのインタビューでカン・プルは「漫画家として一番よくやったと思うことはこの『26年』を描いたことだ」と言うほどである。

制作会社Chungeoramのチェ・ヨンベ代表はカン・プルに何度も感謝の意を表した。カン・プルはこれまで7作品が原案或いは原作として映画化されたほど映画界で愛される作家である。その彼が2008年に映画化の話が出てから、2012年まで「26年」の著作権を撤回せず待ってくれたことは、制作会社の立場からは誠にありがたいことだろう。

実際に毎年5月になると、様々な学校からカン・プルに電話が殺到するという。ウェブ漫画「26年」を教育資料として使いたいという問い合わせである。最近連載を終えた彼の作品はすべて有料化になったが、「26年」だけは無料のままだ。26年後のその日、復讐を描いた作家である彼は、現実でも復讐を夢見ているだろうか。“あの人”への断罪というよりは1980年当時をみんなで記憶しようと言う趣旨だという。みんなが真実を記憶してこそ、当時の権力者が国民に謝罪することもあり得るからである。

写真=Chungeoram

順調ではなかった投資、その裏話

大手投資会社の突然の投資計画の取り消しを受け、一般人向けのクラウドファンディング(個人投資家を集める策)を取り入れたことは立派な選択だった。もちろん今年初旬、goodfundingサイトで行われた募金は半分の成功だった。当初の目標金額10億ウォン(約7500万円)まで半分弱の約4億ウォン(約3000万円)という結果に終わったからである。

その後、独自のサイトを立ち上げ、“制作ドゥレ(一般の映画後援者から資金提供を受けた制作募金)”という名の下で投資募金を再スタートしたのは、それほど切実に制作費が必要だったからである。2012年初旬「箪笥」の美術監督出身のチョ・グニョン監督に演出を任せることで、60億ウォン(約4億円)規模の制作費を46億ウォン(約3億円)まで減らすことができた。

制作会社Chungeoramのヤン・ナムシル取締役は、「26年」の初撮影を控えて行った告祀(コサ:祭壇を設け、供え物をして祈る儀式)の日を振り返って、「文字通り“メンタル崩壊状態”だった」と表現した。1週間後から撮影が始まるのに1日の撮影費もなかったからだ。ヤン取締役は「撮影を控えた嬉しいはずの日なのにヒヤヒヤしていた。お金がないのにスタッフやキャストを何とかして食わせなきゃと思っていた」と当時の気持ちを語った。

市民の小額募金を再募集すると考えたのもこの頃のことだった。当時巨額を投資するとしていたある投資者が映画への様々な権利を求めるなど困難なことが重なった。1万ウォン(約760円)でも寄付したいと言い出す人から、巨額で映画制作を左右しようとする人まで。ヤン取締役は「人間の始まりから終わりまで経験した時期だった」と振り返った。


祭りは始まった、映画館で上映される日を楽しみにするだけ

数日後には「26年」が公開される。数十人のスタッフや関係者の思いだけではなく、小額でも投資した数万人の市民、さらには知らず知らず映画を待ち続けていた多くの人々の念願が叶う日が来るのである。

一緒に楽しむ事だけが残っている。撮影終了してから、編集など作業にかかる期間を考えると、過密なスケジュールだが、制作会社側は市民と楽しめる様々なイベントを準備している。11月20日にはソウル江南(カンナム)のある蕎麦屋でキャストと市民が一緒に蕎麦を食べるイベントが行われた。劇中で蕎麦屋の息子クァク・ジンベ(チン・グ)が登場することからアイデアを得たイベントである。

イベント会場には演出を務めるチョ・グニョン監督を始め、キャストのチン・グ、ぺ・スビン、ハン・へジン、2AM スロンが参加し、市民と交流した。キャストが蕎麦をテーブルまで運んだり、映画関連のクイズを出して商品を出したりするなど“身近なイベント”だった。

また11月22日~28日まで、すなわち映画が公開される前日まで制作ドゥレ会員向けの試写会も行われる。ソウル、大田(テジョン)、光州(クァンジュ)、大邱(テグ)、釜山(プサン)、済州(チェジュ)の6都市で約3万1000人規模の観客が一般公開に先駆けて観覧できる。

イベントもイベントだが重要なのは本格的な映画の封切りだ。映画は期待に値する。ネタバレになるのでまだ言えないが、序盤から驚くほどのシーンが観る者を圧倒すると思われる。「26年」が光州民主化運動という悲しい歴史を伝えると同時に映画的な面白さもある作品として、観客と向き合うことを記者としてではなく、ひとりの観客として切実に願う。

記者 : イ・ソンピル、イ・ジョンミン