ユ・ジテ、ク・ヘソン、ハ・ジョンウ…俳優出身の3人の監督が乗り超えるべき課題とは?

OSEN |

ハリウッドの伝説的な俳優でありながら、映画監督の巨匠でもあるクリント・イーストウッドは、世界で最も有名な監督兼俳優だろう。他の俳優出身の監督が監督業よりは俳優業に重きを置いているとすれば、クリント・イーストウッドはどちらの分野でも偉大な成果を挙げた人物である。俳優でデビューして成功を収め、監督として手掛けた作品もそれに劣らないほど華々しいヒットを飛ばしているからだ。

俳優クリント・イーストウッドが監督として他に類を見ない存在感を発揮している理由は、「ミリオンダラー・ベイビー(2004)」「硫黄島からの手紙(2006)」「グラン・トリノ(2009)」など、多くの作品が評論家から高い評価を受け、且つ商業的にも大ヒットして一般の観客からも認められているからである。

最近、韓国の俳優たちの中にも本業である演技をしばらく休み、監督に挑戦している人々がいる。その中には、ある程度の収益性の保障を必要とする長編映画に挑戦した若手もいる。「マイ・ラティマ」で第17回釜山国際映画祭の「韓国映画の今日-ビジョン」部門に招待されたユ・ジテ監督、「桃の木」で2作目の長編映画を演出したク・へソン監督、11月末クランクインする「人間と台風(仮題)」のハ・ジョンウ監督だ。

この3人が監督に挑戦する理由は何だろうか?それはおそらく映画に対して俳優よりも大きな権限を持つ監督という役割を通じて、作品を観客と共感したいからではないだろうか。既に俳優としてキャリアを積んできている彼らだからこそ可能なことである。

それでは監督として3人が乗り超えるべき最も大きな課題とは何だろうか?それは俳優としての本人自身ではないだろうか。監督の役割を担当する有名俳優のレベルを超え、演出した作品で多くの観客に認められれば、彼らは監督として観客と作品を共感したこととなるのだ。

ユ・ジテは9月に釜山国際映画祭で、自身の長編映画デビュー作「マイ・ラティマ」を公開した。同作は3億ウォン(約2,200万円)という非常に低予算で作られた映画である。この作品は損益分岐点の観客動員数12万人を超え、長編映画としては最低限の成功となった。ただし、釜山国際映画祭に招待されたこと自体が作品性をある程度認められた証拠だと思えば、観客にどこまで共感してもらえるかは本格的に公開された後に確認できるだろう。

10月31日にはク・へソン監督の「桃の木」が公開された。ク・へソン監督の前作「妖術」は興行面ではあまり良くはなかったが、第23回東京国際映画祭に招待され、「最優秀アジア映画賞」にもノミネートされるほど作品性を認められた。現在の「桃の木」の興行成績は、11月5日の映画振興委員会の映画館入場券統合ネットワーク売上集計によると、5日の一日間で13,980人の観客を動員し、累積観客数24,048人でボックスオフィス(劇場でのチケット販売枚数)9位となっている。ク・へソン監督の映画に対する評価は概ね、監督の世界観は強いが商業性は低いとされている。ボックスオフィス9位は低予算映画としては悪い成績ではないが、チョ・スンウ主演、ク・へソン監督の知名度を考えると良い成績とも言えない。

ハ・ジョンウはコメディ映画に挑戦する。「人間と台風(仮題)」は飛行機が台風に巻き込まれ、墜落の危機に陥った瞬間の様々な人々の反応を描いた作品だ。多才なハ・ジョンウが自らシナリオを書き、演出もすることで注目を集めている。まだ完成されてないため断言はできないが、ユ・ジテ、ク・へソンとは違い、コメディというジャンルを選んだという点で、人々の期待が高まる可能性がある。

これら3人の監督は、以前から丁寧に短編映画を撮ってきており、映画演出に対する真摯な態度を認められてきた。3人とも映画監督としてのキャリアはこれからなため、成功か失敗かを断言することはできないが、少なくとも彼らの映画が有名人の名前だけを掲げた自己表現の手段として終わらないためには、自身の世界観を盛り込んだ作品性だけではなく、人々の共感を得るための地道な努力が必要となるだろう。

記者 : チョン・ユジン