Vol.1 ―1000万観客突破!「10人の泥棒たち」のチェ・ドンフン監督を悩ませたのは?

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1000万観客突破の「10人の泥棒たち」に込められたチェ・ドンフン監督の思い

スター監督と呼んだとき、彼は気恥ずかしげな様子だった。いや、それよりは慎重だったというべきだろう。「まだ4本の映画を撮っただけ」と謙虚な態度を見せたチェ・ドンフン監督。しかし、“1000万観客”だ。「TSUNAMI-ツナミ-」以来3年ぶりで、韓国映画史上6番目に観客動員数1000万人を突破した映画が、彼の「10人の泥棒たち」だった。

インタビューは映画が1000万観客突破を目前に控えている時点で行われた。既に多くのメディアとインタビューをしたはずで、色々な話が出たはずだが、興行の真っ只中の時点での映画話は、また違うのかもしれない。チェ・ドンフン監督から“太陽の涙”を盗みたいとの思いを込めていることを、前もって断っておく。だから、映画に込められていそうな秘密を聞きたかった。


実は「10人の泥棒たち」の役者たちのせいで、スタッフが派閥に分かれた?

映画界では、統計で大体把握されている国内の映画館で、全ての観客が特定の映画を1回ずつ見ると仮定したときに可能な最大観客数を1300万から1500万だと見ている。それも上映期間が1ヶ月以上保障された場合に可能な数値だ。

そういう風に考えると、公開から20日余りが経った「10人の泥棒たち」が、韓国映画の興行記録まで更新しながらヒットしているということは、2回以上観た観覧客が多いということになる。既に俳優イ・ジョンジェのインタビューのときに取上げたが、この映画は1回見るときと2回見るときとで確実に違う。観るたびに目立つキャラクターも変わるというのが大きな特徴だ。

「これが本当に難しい問題ですが、普通映画を2回観る場合、ストーリーを観るわけではないじゃないですか。映画というのは、ストーリーは蒸発しますが、キャラクターは残ります。この映画に出るキャラクターたちが観客にアピールしていると思います。僕も聞いた話ですが、観客の年代別にはまる俳優が違うそうです。

映画を撮るときにスタッフもそうでした。キム・ヘス派、チョン・ジヒョン派、マカオ・パク派、ポパイ派に分かれ、お互いに誰々の方が良いとか言っていました。映画を2回観るとペプシやポパイが見えたりもします。それだけ役者たちが上手だったという意味です」


実は「10人の泥棒たち」の撮影の間、シナリオを修正し続けた

映画ということが、決められたフレームの中でのみ行われるわけではないということを覚えておこう。チェ・ドンフン監督もまた、現場で撮影中にも関わらず、台本を直すことがある程度あったという。直感で台詞を書き間違えたと思えば、直ぐ修正に入るのがチェ・ドンフン監督のスタイルだった。

だからと言って、何もかも感にまかせるというわけではないという。チェ・ドンフン監督が徹底して事前企画を行い、シナリオを直接作成したからこそ、その中で変更が可能だったこと。

「監督は課題をたくさんこなさなければいけないと思います。たくさんの準備は、スムーズな撮影にも役立ちますが、偶然思い浮かぶ直感に身を任すことを許します。オーソン・ウェルズ監督は偶然を創造すると言いました。状況はいきなり発生するものです。この空間も自身が考えていた空間ではないかも知れません。シナリオもそういうときがあります。浮かぶ何かがあれば変えるのです。

例えば、マカオ・パクとポパイがエレベーターの上で話すシーンは撮影しながら少し変えました。4分の分量、5行しかありませんが、撮影しながら1ヶ月間直しました。そして撮影当日、役者たちに渡すと、二人とも良いと言いました。そのような瞬間が面白いです。直感的にあるシーンを書き間違えたなと感じます。

映画は生きて動く生命体のようで、少しずつ変わるような気がします。ガムとペプシは女性の台詞なので難しいです。そのような台詞は長期間修正します。だからと言って、そこに一日中こだわっているわけではなく、ご飯も食べてコーヒーも飲みながら直して行きます。監督は現場で起こる偶然を恐れてはいけないと思います」

チェ・ドンフン監督はシナリオ、俳優、監督の三位一体説を主張した。それぞれ違う好みや偏見もあるので、作りながら、それを似通わせることが演出だと思うとしていた。幸いなことに、彼と一緒に映画を撮影する役者たちは、どこまでも監督を信頼するという。その秘訣は何だろうか。インタビューを通じてチョン・ジヒョンもイ・ジョンジェもキム・ヘスクも口を揃えてチェ・ドンフン監督を信頼するとしていた。その信頼の共通の源は、チェ・ドンフン監督が俳優たちに寄せる特別な信頼だった。

「普通は自分が俳優たちに求めることがあります。しかしそれを強要するよりは、シーンを何回も撮ります。Sidus(サイダス)で初めてデビューするときの僕のあだ名は『テイク・チェ』でした(笑) また、役者たちがよく頑張ったことを感じられるように気を配ります。現場でその日のエネルギーを使い尽くすよう要求します。

撮影現場というのは、元々本当に厳しいですが、役者たちも疲れを感じませんし、僕はそれを楽しく撮ります。カリスマ?監督になる前までは、監督はとても頭がよく、カリスマ性のある人たちだと思っていましたが、僕は現場で遊んでいるような感覚が好きでした。撮影の際も遊んで、終わってからも遊びます(笑)」


実は「10人の泥棒たち」で最も大変だったのは音楽だった。

遊ぶ話が出たので付け加えると「10人の泥棒たち」の撮影現場は、役者とスタッフが一つになりせっせと撮影をし、その後はお酒を飲みながら緊張を緩めることで有名だ。特に音楽の好みが独特な俳優たちは、その音楽をかけながら勧めあったりもしたという。この話をしている間、チェ・ドンフン監督は実は映画の撮影で音楽作業が最も難しかったと告白した。
「映画で最も難しいのは音楽だと思います。俳優のキャスティングが映画の香りを決めるとしたら、どの音楽を使うかによって、映画の雰囲気が左右されます。チャン・ヨンギュ音楽監督とダルパラン(Dalparan)と以前から作業してきたんですが、僕が本当に苦労させました(笑) ガムが車の中で死ぬときの音楽が一番難しかったです。音楽を変え続けながら映画を観たんですが、人は死ぬが映画は重くならず続けられる必要があると思ったからです。このようなときに音楽の力が重要です。

マスコミ試写の前日まで変えました。映画を100回以上観ずにはいられないわけです。軽快な音楽を頼んで被せてみると、ガムが更に可哀そうに見えました。良い経験だったと思います。音楽が最も難しいレベルの創造だと思います。そのような意味でチャン監督とダルパランの二人に感謝します。午前3時まで家に帰さず、はじめから繰り返したりを何回もしました」

ハリウッドのある有名監督は仲の良い音楽監督に憂鬱さと軽快さの割合を数字で注文するという。もちろん冗談で、親しい仲だから可能なことだが、それだけ、音楽が映画のディテールを決めるという意味だろう。シナリオと現場の雰囲気、そして音楽まで制覇しようとしたチェ・ドンフン監督、彼の「10人の泥棒たち」は、1000万観客映画としての十分な資格を持つ映画だと思った。

記者 : イ・ソンピル