「応答せよ1997」キラキラ光る“アイデア商品”

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写真=tvN

時代性と地域性、キャラクターに染み込んだ90年代の大衆文化

1997年はそういう年だった。“10代のアイドル”H.O.T.に続き、SECHSKIES(ジェクスキス)がデビューした。“会えば嬉しい友たち(当時のMBCのロゴソング)”で放送していたドラマ「星に願いを」でアン・ジェウクが大ブレイクし、パソコン通信に“接続”していた映画「接続~The Contact」は大ブームを巻き起こした。“グクジンパン”まで販売されるほど人気の絶頂だったお笑い芸人キム・グクジンがイメージキャラクターを務めたシティフォンは、ポケベルに勝つことができず、「Guess」を始めとするいわゆる“ブランドもの”は、当時の高校生の“マストアイテム”だった。そしてあの年の年末、故・金大中(キム・デジュン)元大統領が当選した。

その中で、子供でもなく成人でもない年頃の、釜山(プサン)の高校2年生たちは、“オッパ(兄の意。女性が親しい年上の男性やスターを呼ぶ呼称)”に会うために、大邱(テグ)のコンサート会場に向かったり、ソウルのトニーオッパの家にまで追いかけたりして、父親に髪を切られる。遅れて包茎手術をして、第二次性徴による変化を自ら感じ、幼馴染にキスをして、パソコン通信もして、バスケもする。映画を観て、CDを買って、AVも観て、ロッテ(釜山をホームタウンにするプロ野球チーム)も応援する。

TvNがもう一つの輝く“アイデア商品”を作り上げた。韓国で第4話まで放送されたドラマ「応答せよ1997」は、前述のことこそが1990年代の10代の文化だったと証言している。映画「建築学概論」のヒット後から注目されている、1990年代に対する面白い“連続ドラマ”が、ちょうどいいタイミングでスタートしたのだ。

明確なキャラクターに大衆文化、時代性を描く少女漫画

映画「接続~The Contact」を観てきた主人公。HOT トニー・アンのパスニ(芸能人に夢中な女性)ソン・シウォン(Apink チョン・ウンジ)が、友たちのカン・ジュニ(INFINITE ホヤ)とおしゃべりをするシーン。このシーンには「応答せよ1997」に繋がるいくつかのキーワードが詰め込まれている。

「チョン・ドヨンはこれでブレイクするよ。きっと。今年新人賞もらうんじゃない?」
「私はハン・ソッキュがいいな。ソウルの男性って違うよね。優しいし、マナーもあるし。あの、ダサいユンジェとは違うよ」
「知ってる?いつもユンジェの悪口で話が終わってる」
「マンナ?(えっ、そう?という意味の釜山訛り)」

コミカルで個性豊かなキャラクター、第1世代アイドルとそのファンを前面に出した1990年代の大衆文化、釜山訛りの「マンナ?」ですぐ分かる地域性、幼馴染のユンジェ(ソ・イングク)を意識するシウォン。その初々しい初恋。そしてその根底に流れる少女漫画のような世界観。

まず「応答せよ1997」は劇中のエピソードにこのような要素を反映し、リアルな時空を構築する。ただ「釜山カモメ(ロッテの応援ソング)」やH.O.T.、SECHSKIESに触れただけならば、ありきたりのドラマになったはずだ。しかもSECHSKIESのリーダーだったウン・ジウォンの出演、制作発表当時のH.O.T.元メンバーのトニー・アン、ムン・ヒジュンなどを前面に出した広報、そして“パスニ”を主人公にしたストーリーは、90年代を舞台にしたファンダム(特定のファンの集い)ドラマと、誤解されやすい。

しかしこの出来のいいドラマは、舞台が釜山であることを忘れないようにすると同時に、大衆文化の影響をたっぷり受けて育つシウォンの日常に、前述の大衆文化の象徴を実名で登場させ、視聴者の共感を得る。何よりこの二つの要素がキャラクターの性格を決定する主な要因となっているのも、ドラマの完成度を高めている。1990年代中後半に10~20代だった人なら誰もが共感できる文化的要素が、「応答せよ1997」の最大の強みである。


普遍性と共感から成長を語る

1990年代を振り返るにはまだ若いのではないかと言う人もいるかもしれない。しかし第4話までの放送で「応答せよ1997」はそうした懸念を見事に吹き飛ばした。その根底には学園ドラマ特有の普遍性が存在する。

お互いのことを気にしている幼馴染の二人。クラスのビリのシウォンと学級委員のユンジェの不器用な恋愛感情は少女漫画そのものである。二人の気持ちはドラマの展開により、葛藤要素になって二人の成長を促すだろう。ありきたりの展開かもしれないが、これこそが普遍的な成長ドラマのテーマである。

「応答せよ1997」は1997年と2012年の今をテンポよく、そしてスムーズに行き来しながら、視聴者の好奇心を刺激する。特に毎回登場する2012年現在の同窓会で「この中で二人が今日結婚を発表する」というシウォンのナレーションがその代表的な例である。成長して誰かと結ばれると言う結果は、恋愛のクライマックスではなかろうか。

このような普遍性とともにどんなキャラクターも疎かにしない繊細さもこのドラマの魅力である。特に第3話と4話で大きな喧嘩になりそうだったシウォンの両親の仲直りや、いつも真面目なユンジェのお兄さんが隠している初恋の辛さを、ロッテの野球試合と映画「接続~The Contact」のシーンと交互に入れるセンスは、美しいと言っても過言ではない。

女性視聴者の心をわしづかみにしているユンジェ役のソ・イングクはもちろん、デビュー作から安定した演技で好評を受けているApinkのチョン・ウンジもお茶の間での話題になっている。地域性がキーポイントであるだけに、全キャストが映画「友へ チング」のレベルを超える訛り演技を披露している。若手はもちろん、シウォンの両親役のソン・ドンイル、イ・イルファの渋い演技も印象的である。

「応答せよ1997」では“90年代の大衆文化”が単なる材料ではなく、時代と空間をより充実に描くために用いられ、ドラマ全体の雰囲気を決める決め手としている。バラエティ出身プロデューサーと脚本家が織り成す相乗効果はこういうものなのか、と感心するほどだ。

さらに同ドラマはスターを追憶しているだけで、そのスターに押されたりしない。シウォンのようにスターに夢中になっていた、初恋に心ときめいた“私たち”の日常がそこにあっただけだと、ささやいている。その甘酸っぱいささやきにどれほどの青春の痛みを染み込ませることができるか。これからも第4話までのような完成度を維持してほしい。

記者 : ハ・ソンテ