映画「I AM.」SMアーティスト“あなたは誰ですか?”

10asia |

照明のついていない真っ暗なステージの裏側、緊張した面持ちのSMエンターテインメント(以下SM)所属アーティストたちがスタンバイしている。観客たちの歓声が耳が聞こえなくなるほど大きくなり、ついに少女時代の「GENIE」で公演が始まる。SMTOWNがアジア歌手として初めてニューヨークのマディソンスクエアガーデンのステージに立ったその瞬間、カメラの裏側にいる誰かがアーティスト1人1人に、「あなたは誰ですか?」と質問を投げる。彼らは少し戸惑った顔をすると同時に、ときめく気持ちで過去と現在の自分を振り返ってみる。その中には、ひたすら「何でもやります」と唱えた豪気と言葉も出なく涙を流すしかなかった挫折感、そして今、ここに立った栄光の時間が混在している。

【鑑賞指数】

ドキドキワクワク「SMTOWN」への出入り口…7/10点

「I AM.」は166分という上映時間の間、スクリーンの前に座って動くこともできず見続けるしかない広告のようだ。東京やパリ、台湾など世界各国で行われたSMTOWNの全公演のチケットが“SOLD OUT”というグラフィックが登場したり、ニューヨークの電光掲示板に現れた少女時代と、イ・スマンプロデューサーの姿が一緒にカメラに映されるとき、このドキュメンタリーがSMというブランドのための、大型プロモーションであることに改めて気づく。

映画の前半のニューヨークのマディソンスクエアガーデンでの公演の様子が、そのことを最もアピールしている。華やかで独特な舞台装置が総動員されたステージ、まるで観客とアイコンタクトを取るかのように、間近で活き活きとしたアーティストたちの公演シーンが盛り込まれ観客を魅了し、SMTOWN公演に対して好奇心を持たせる。それは「I AM.」が長い広告のようではあるが、少なくとも気に入らなかったりつまらなくはないという証拠である。

そして、映画に対する抵抗感を和らげる最大の要素は、アーティストの人間的な姿である。「I AM.」には、これまで公開されなかった映像がたくさん盛り込まれている。たとえば、SHINeeの少し不思議な合宿所の風景を見せたり、同じエピソードに対して異なった感想を打ち明ける、SUPER JUNIORのウニョクとイトゥクのインタビューを1つの画面にまとめて流す方法には、この映画の才気さが表れている。

また、彼らの成長記録を見ることができるように構成された映像は、普遍的な感情に訴え、ドキュメンタリーとしての効果を十分に生かしている。たとえば、いつもニコニコと笑う小学5年生だったf(x)のソルリが、振り付けをなかなかうまく踊れなくて泣き出す高校生に成長し、とうとうf(x)のメンバーとしてステージに立つという一連の流れは、胸にじんとくる。アーティスト別に均等ではないシーンの分配や、整っていない流れは少し残念だが、これさえも露骨なコマーシャル映画への抵抗感を最小化するための戦略に見えるほどである。もちろん、アーティストたちの個別インタビューまで入っているにも関わらず、映画は彼らがどんな人なのか捉えることまではできない。しかし、SM所属アーティストたちが持つ魅力を観客に納得させられたことだけでも、本来の目標は達成したと言えるだろう。この作品は韓国で6月21日に公開された。

記者 : ファン・ヒョジン、翻訳 : ナ・ウンジョン