「10人の泥棒たち」の監督チェ・ドンフン…“バットマン”に勝てるのか?

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映画「10人の泥棒たち」(監督:チェ・ドンフン)が300万人の観客を動員したと仮定してみよう。それは興行に成功したと言えるのだろか?いや、必ずしもそうとは言えないだろう。では、500万人だとすれば?やはり答えは「さぁ」だろう。

チェ・ドンフン監督が「ビッグ・スウィンドル!」「タチャ イカサマ師」に続き、強みを持っているジャンルである犯罪アクション映画「10人の泥棒たち」を演出するとした時、映画界の人々は「1000万人もの観客を動員する映画がもう一本登場するのではないか」とささやいた。

「グッド・バッド・ウィアード」を圧倒する華やかな(あるいは独占的な)スターキャスティングにも多くの人々から羨望の声が殺到した。「10人の泥棒たち」にキャスティングされた俳優たちの顔ぶれをみて、こっそりと引き出しやゴミ箱に入れられるしかなかったシナリオがどれほど多かったのだろう。「チョン・ウチ 時空道士」で残念な成績を記録したチェ・ドンフン監督は、妻と一緒に創立した映画会社での初めての作品としてもっとも自信のある“直球”を選び、俳優キム・ユンソクとキム・ヘスが「よし、もう一回!」と叫びながら意気投合した。

「10人の泥棒たち」が期待通り1000万人もの観客を動員する映画リストに名を上げることができるか、500~1000万人の観客を動員する映画に止まるかは、7月25日(韓国公開日)に蓋を開けてみなければ分からないことだろう。映画の成功を観客数だけで判断するには無理があるけれど、これまで作品性と興行のバランスをうまく取ってきたチェ・ドンフンなら、「10人の泥棒たち」の興行成績に気を使わずにはいられないだろう。

予想通り、他の韓国映画は約束でもしたかのように一斉に道を開けてくれた。CJとロッテの映画「ミリオネア・オン・ザ・ラン」「隣人」が「10人の泥棒たち」の一週間前に公開すると告知したのみで、映画配給会社ショーボックスの「10人の泥棒たち」と同日に対決すると宣言する、勇気のある韓国映画はまだない。イム・グォンテク監督の映画が公開される日には競争作を公開しなかったかつての慣行とは性格が違うものの、久しぶりに公開初週で大きな成績を生む韓国映画が登場すると思われた。

しかし、天下の「10人の泥棒たち」もそれほど恵まれてはいない。「ダークナイト ライジング」のためだ。クリストファー・ノーラン監督のバットマンシリーズが「10人の泥棒たち」の直前に公開されることになり、興行が気になるところだ。ジャンルも犯罪アクションスリラーで「10人の泥棒たち」と重なり、何よりクリスチャン・ベール、ゲイリー・オールドマン、アン・ハサウェイ、トム・ハーディなど豪華俳優の顔ぶれも手強い。このような規模の映画だと、“独り占め”より“両者構図”になる可能性が高い。

しかし「最近バットマンの夢を見ている」という制作発表会でのチェ・ドンフンの発言は、マスコミにおいしいネタをあげなければという義務感の混ざった可愛い言葉に聞こえる。この発言の裏を読んでみると「バットマンはインパクトのある映画ではあるが、僕の映画でいくらでも勝つ自信がある。早く蓋を開けたい」に間違いないだろう。

チェ・ドンフンの全ての映画に出演した俳優キム・ユンソクが監督の心を察知してこう付け加えた。「チェ・ドンフン監督の映画は最初の小さいストーリーがどんどん大きくなって人を吸い込む魅力を持っている。まるで屋根部屋で家内工業のように始まった映画がどんどんサイズを広げていく。『10人の泥棒たち』もそうだ。3D、IMAXもいいけど、韓国人が共感できる映画を楽しみにしてほしい」

隣で微笑みながらこの発言を聞いたチェ・ドンフン監督はおそらく心の中で「兄さん、僕がしたい話を代わりにしてくれてありがとう」と言ったのではないだろうか。誰より互いの心をよく知っている監督と俳優の関係だからこそ可能な、魚心あれば水心という表現がぴったりな風景だった。

さて、「10人の泥棒たち」が越えなければならない1次ハードルが「ダークナイト ライジング」だとすれば、2次ハードルは、2012年ロンドン五輪になるだろう。五輪やワールドカップとは関係なく、映画館に行きたい人は映画館に行く。それでも4年ごとに開催される五輪と同じ時期に公開されることは「10人の泥棒たち」としてはそれほど嬉しいことではない

2012年のロンドン五輪は「10人の泥棒たち」が公開される2日後の7月27日に開幕し、15日間開催される。時差のおかげで全ての主要ゲームが夜明けに生中継されるので助かるが、もしパク・テファンやチャン・ミランが実力を発揮してメダル圏内に入れば、五輪ムードが盛り上がる可能性が高い。パク・テファンが1500mの自由形で金メダルを獲得することができれば、ポータルサイトのリアルタイム検索語のリストは数日間五輪関連ニュースが独占するだろう。

ただバットマンが凄まじい力をいくら発揮しようが、五輪が世界を揺るがそうが、「10人の泥棒たち」は屈せず自分の道を歩いていくだろう。「予告映像のインパクトが期待より弱かった」「興行成績がいつもよくない俳優が含まれている」「MEGABOXを売却したショーボックスの配給力が弱まった」という懸念の声も一部では出ているのは事実だが「10人の泥棒たち」は成功してほしい。

昨年、イ・ミギョン副会長の野心作「第7鉱区」「マイウェイ 12,000キロの真実」の不振でつらい経験をしたCJエンターテインメントが「FLU 運命の36時間」の制作費を99億ウォンに策定したという。100億ウォンのトラウマがあるからだ。映画を制作する際、そのような過去の傷を考えなければならないというのはいかに悲しいことか。チェ・ドンフンはキム・ヨンファ監督とともにこれまで興行惨敗を経験しておらず、いわゆる予防接種を必要としない監督の一人である。元気で抗体があれば、予防接種は要らないということを今回も証明してくれるのか気になる。

記者 : キム・ボムソク