映画「僕の妻のすべて」私たち夫婦が変わりました

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ドゥヒョン(イ・ソンギュン)にとって、ジョンイン(イム・スジョン)との毎日はロマンチックな映画そのもの。唇がくっついて離れなくなってしまいそうなほどキスを交わし、耳が擦り切れるほど甘~い言葉を囁くだけで日が暮れてしまう毎日。だから結婚した。しかしロマンスはそこまで。結婚後のジョンインは、夫が用を足しているトイレにまで来ては小言を言い、朝からタバコをふかし、食事をしている隣で掃除機をかける。もうこれ以上耐えられなくなったドゥヒョンは、お隣の伝説的なプレイボーイ、ソンギ(リュ・スンリョン)に助けを求める。「僕の妻を誘惑して下さい!妻が僕を捨ててくれるように!!」と。


【鑑賞指数】

消えたと思った愛でもまた確認…7/10点

あれほど愛らしかったジョンインは、どうしてこんなに憎たらしくなってしまったんだろう。しかし始めから原因を考えないドゥヒョンは、ただ離婚を望むだけ。しかも、それを口に出す勇気さえなくて、選んだのが“妻に不倫をさせろ大作戦”である。しかし彼はその過程で、思いがけなく妻が隠してきた、もしくは彼が長らく忘れてきた彼女の片鱗を拾うことになる。妻の果てしないおしゃべりと不平の裏に隠されていた心の傷が、ようやくドゥヒョンの目にも見えるようになったことで、壊れた関係の隙間に希望の光が灯るようになる。この作品は夫婦の間で亀裂が生じ、その亀裂が修復していく過程を描くことに力を注いでいる。揺れにより地面が割れる地震が、重要な瞬間の劇的な装置として活用されているが、あまりにもダイレクトな方法とはいえ、それが映画のテーマを十分に伝えている。地震により出会い、地震により再会するジョンインとドゥヒョンの亀裂は、亀裂そのものより、ひび割れた隙間を埋めていく過程でより強固になる関係の力を見せてくれる。

何よりも「僕の妻のすべて」は、ユニークなキャラクターによるリズム感を持っている。いつも“ギャアギャア”わめき、不平不満ばかり口にする“死ぬほどムカつく”ジョンインは、ラブコメディ映画では類を見ない正真正銘の“好感を持てないヒロイン”である。だが、女性なら誰もが共感しそうな彼女の毒舌は、おせっかいで、年下と見るとすぐ説教をしようとする韓国社会に疲れた女性に代わり、スカッとした一撃を見せてくれる。ジョンインが現実の域で痛快だとしたら、ソンギは徹底してファンタジーの領域を受け持ってくれる。ソンギは女性の国籍を問わず、すべての女性が彼に群がって来るという設定だが、どこをどう見てもその事実に納得がいかない。彼は一人でいれば魔性の男と言われる魅力のある男だということだが、その設定とはそぐわない外見と、ジョンインにはどうも通用しないアプローチで終始笑いを担当してくれる。結局、登場しただけで笑いを誘うことになるリュ・スンリョンは「僕の妻のすべて」によって、もっとも輝いた俳優と言える。同時に、彼が作り出した、ネジがひとつ飛んだかのような“悲しい”恋愛ドラマの人物を見るだけでも、充分楽しめる作品だろう。

記者 : イ・ジヘ、翻訳 : イム・ソヨン