Vol.1 ― BIGBANGのT.O.P 「『戦火の中へ』はありのままの僕だった」

10asia |

「オオカミの外見と羊の魂を持つラッパー」

あるファンがネットに書き込んだこの絶妙な文章はT.O.Pに対する最も明確な説明かも知れない。彼は鋭い目とタフな声を持つラッパーであり、ダミアン・ライスとパティ・ラベルが好きな豊かな感受性の持ち主で、韓国屈指のグループのメンバー、そして10代のころは長い反抗期を経験し内面の不安と闘った少年であった。

だからT.O.Pにどんな役者になりたいのか、人気のラッパーとしてどんなプロジェクトを持っているのかを聞くのは意味がない。彼は10代のころから今まで、自分を表現するために机に座って歌詞を書いてきたし、これからも書くと思われるから。そして彼は“自分自身を見ているようで”映画の「戦火の中へ」への出演を選択したと言う。彼は「戦火の中へ」で17歳のオ・ジャンボムを演じながら24歳である自分の人生をどのように反映したのだろう。T.O.Pと演技、ラップ、そして彼自身について話をしてみた。

―BIGBANGのメンバーではなく俳優としてひとりでインタビューされる気分は?

T.O.P:BIGBANGの時は話が上手な仲間がいるから、自分から多くを話す必要がなかったのに、今は口数が多くなっています。BIGBANGへ戻ったら話し手にされそうだから、インタビューで下手なことでも言っておいた方がいいかも(笑)。


「戦火の中へ」を通して前より余裕ができた」

―役者としては3本目の作品です。演技の方はどうですか?すればするほど楽しくなったり、負担になったりすると思いますが。

T.O.P:以前は何をするにも簡単に、軽くできませんでした。楽しんではいても常に悩みも多かったし、慎重でしたし。たぶん何かが怖くてそうだったと思うのですけど、今はそうした恐れがなくなったようです。「戦火の中へ」がいい影響をくれたようです。

―このインタビューの前に共演したチャ・スンウォンさんとキム・スンウさんに会いました。2人ともあなたのことを「うちのスンヒョン君」って呼んでました(笑)。先輩たちにすごく好かれたみたいですね。

T.O.P:「戦火の中へ」でご一緒させていただいた先輩と監督にはとても感謝しています。大人の前だと距離を感じて礼儀正しくなるので打ち解けるのが難しい時があります。でも、先輩たちは僕のほうが先に進んで親しくできるように仕向けて下さいました。撮影現場では監督で先輩ですが、撮影が終了すれば親しいお兄さんのように接してくださって、僕も感じるものが多かったです。

―今回の撮影が演技だけでなく自分の生活や感受性にも影響と与えたと言う事ですか?

T.O.P:先輩たちから感じるものはたくさんありました。僕は安定感があるという理由でフィギュアが好きなんです。フィギュアの堅くて安定した姿や乱れのない完成体という感じに惹かれるようなんですが、「戦火の中へ」の先輩たちを見てそうした安定感を感じたみたいです。先輩たちが撮影のない時間にいつも家へ電話をかける姿を見て多くのことを考えました。僕はそうした安定感を感じたことがなかったから。明日は何が起こるんだろう、明日は来るのかなって思ったことも多いですしね。でも「戦火の中へ」を通して前よりもっと余裕ができました。

―だから「戦火の中へ」のオ・ジャンボムを選択したのですか?オ・ジャンボムは17歳の少年ですが、命を賭けた戦争に駆り出されます。本当に明日をも知れない状況で不安にかられるしかないですよね。

T.O.P:だから惹かれました。不安な17歳の少年だから。その反面、僕もオ・ジャンボムも安定した大人になりたいんじゃないかなって。彼が実際の僕の性格、特にひとりでいる時の僕の姿とよく似ていると思いました。だから彼に成りきって生きてみたかったんです。

―KBS「IRIS -アイリス-」のビックを演じたときは「映画の『時計じかけのオレンジ』にビックのような人物がいたら」と想像しながらキャラクターを準備したと聞きます。それだけ仮想のキャラクターに近い姿として受け止めたということでしょうが、「戦火の中へ」には実際のあなたの姿が多く反映されているようですが。

T.O.P:できれば自分をそのまま役に投入させて自分の姿を見せようとしました。仮想の人物ではなく、僕自身がそのまま演技をしているという気がして。まだ完全に成長したとは言えませんけど、今までいろんな活動をしながら20代を生きてきたし、少しずつ成長したと思います。そうやって生きてきた方法をオ・ジャンボムに反映させたかったんです。17歳で戦争を経験し、学徒兵を率いる立場になったら悩みは当然多いだろうし、短い時間に成長するしかないでしょうから。僕だって自分が成長していなかったら、オ・ジャンボムというキャラクターを演じるのを恐れたかも知れません。


「自分自身を飾っていた時期もあった」

―17歳の少年の感情を表現するのはどうでしたか?

T.O.P:僕にもまだ幼い部分があると思います。フィギュアが好きな理由のひとつには、僕がまだ幼いままでいたいのもあるから。それにオ・ジャンボムというキャラクター自体が純粋で人間的な部分が多いので、僕が今まで見せていた部分とはまったく違う部分を探そうとしました。

―違う姿?

T.O.P:今までは僕とまったく違う姿を見せるために自分を飾っていたと思うんです。自分を騙しながら作り物の姿を見せていたというのではありませんけど、僕は常に音楽をしている人ですし、人々から自分の姿を隠すことはできません。しかし、人々と親しくなればなるほど人に飽きられるのではないかと心配していたようです。だから一時は、音楽をしている人間がテレビにたくさん出演しているなんてダメなんじゃないかと心配してました。当然そうした姿を人々に知られたくないから自分を隠して飾っていた時期があり、他の人とも距離を保ちたいと思っていたんです。でも、「戦火の中へ」で自分自身を最大限にそのまま見せることができたと思います。

―あるインタビューで、「IRIS -アイリス-」で自分のキャラクターを作るために自分に向かって質問をしたといっていたのを見たことがあります。今回はどんな質問をしましたか?

T.O.P:むしろ質問が多すぎて質問をなくそうとしました。これまでは演技をするときに「これでいいのか?」って考え過ぎていたんです。今度は反対で、撮影現場では複雑に考えたりせず、これまで舞台の上でしてきたように演じようと思いました。僕には大先輩たちのように、演技をするときキャラクターを掴み取るような経験がありません。でも5年の間に経験した舞台での経験を生かしてキャラクターを掴もうとしました。そうする他に方法もありませんでしたから。

―BIGBANGのエッセイ「世界に君を叫べ」の中で、KBS「アイ・アム・セム~I am Sam~」に出演した時に自分の演技スタイルが型にはまることを恐れて演技学校へ入るのを拒否したとしていますが、今はどうですか?

T.O.P:演技に対する考えは人によって違うでしょうが、僕の性格だとそれが合っていたと思います。何かを習って型にはまるより、子供のころから経験してきたこと、感受性のようなものをそのまま維持しながら演技に反映するのが今はまだいいだろうと思います。例えば、僕がラップをする時の声だって10年以上悩んで作った声なので、所属事務所の社長さえ、僕は他の人とラップ発声が違うと言うくらいです。演技も僕の望む方向へ向けて少しずつ作っていく最中だと考えています。テクニカルなことはそれから習うべきなのではないかと思います。

―自分の役にそれだけ没頭しないといい演技はできないと思います。しかしBIGBANGの日本での活動と並行しながらだとそれが難しくありませんか?

T.O.P:撮影現場で音楽を聴きながら役に感情移入しようとしました。経歴が数十年の先輩たちとは違って、役へ感情移入するノウハウがまったくないので、音楽的な部分を繋ぎ合わせようとしたんです。

記者 : カン・ミョンソク、写真:チェ・キウォン、編集:イ・ジヘ、翻訳:イム・ソヨン