「ミス・リプリー」傷、男…そして嘘

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映画「リプリー」のトム・リプリー(マット・デイモン)は「辛い現実より格好いい嘘のほうがましだ」と言った。そしてこの映画の原作である小説「リプリー」をモチーフとしたMBC「ミス・リプリー」のチャン・ミリ(イ・ダヘ)は、「偽りだとしても世界を自分のものにしたかった」と叫ぶ。高卒という理由で何度面接を受けても不合格になり、「学歴が無ければ身体を見せろ」とセクハラを受けるなど、世間はいつも冷たかった。だから、彼女は東京大学を卒業したと嘘をつく。ホテルで初の東大出身ホテリアーという肩書を得て、ホテル総支配人 チャン・ミョンフン(キム・スンウ)と、モンドリゾートの後継者ソン・ユヒョン(パク・ユチョン)という二人の男性のハートを奪う。明らかに世の中の全てを手に入れたかのようだったが、彼女を待つのは終わりの見えない断崖だった。

「ミス・リプリー」が支持される理由は、平日の夜10時台に放送される唯一の王道恋愛ドラマというだけでなく「一般的ではない恋愛ドラマ」にある。2011年5月17日にソウルのバンヤンツリーホテルで開かれた制作発表会で、キム・スンウは「3、4話まで見れば、平凡な愛、一般的な三角関係ではないということが分かるだろう」と言った。彼らの関係を支配し、事を決めるのは、愛からの感情ではなく男を成功の踏み台としか思っていないチャン・ミリの欲望だ。そして、「40代にして初めての恋を経験した」と言うチャン・ミョンフンと、まじめな愛を夢見るソン・ユヒョンは、その欲望に容易に巻き込まれてしまう。


内面からの複合的なエネルギーの調和

この作品はチャン・ミリのストーリーだと言える。イ・ダヘが「ターニングポイントだと考え、命がけで演じている」と語った理由は、まさにこのためであろう。制作発表会で公開されたハイライトからは、イ・ダヘはキャラクターの核心をよく捉えていると言える。ややともすると悪人で、きつい女性に見えるチャン・ミリが、取るに足らない学歴と家柄のために侮辱を受けた時、いい里親に出会って幸せに暮らす孤児院の友人ナ・ヒジュ(カン・ヘジョン)に本能的に見せた嫉妬は、チャン・ミリがそのような選択をする他なかった理由を察するように仕向ける。イ・ダヘは「チャン・ミリに共感できたため、気苦労し、悪口をたくさん言われるであろう作品と分かっていながらも出演を決めた」とし、「社会的に許されることではないけれど、“あのような状況なら私もそうしたかもしれない”と思ってもらえるぐらいの演技を見せたい」と強い意志を表した。SBS「マイガール」で、食べていくための嘘を日常茶飯事のこととするかわいい詐欺師ジュ・ユリンを演じた姿とは相反する魅力が期待できる。

チャン・ミリを含む4人の主人公全てが複雑な環境にいる人物であるだけに、KBS「トキメキ☆成均館スキャンダル」以降、ドラマ出演が期待されていたパク・ユチョンの2番目の作品となるこのドラマで、「断片的な人物にならないように、監督と目つき、表情、セリフの細部まで議論」し、安定した演技を見せるために努力したという点も、このドラマが期待されるもう一つの要素だと言える。

2011年5月にもロマンチック・コメディドラマが平日夜10時台に数本の作品が放送されていたが、同時間帯のSBS「私に嘘をついてみて」と、KBS「童顔美女」が視聴者の期待に沿えられない展開を見せる中、「ミス・リプリー」は最後の期待作とも言える。既婚者だと嘘をついた「私に嘘をついてみて」のコン・アジョンと、年齢を偽った「童顔美女」のイ・ソヨン、2人の女性の間でチャン・ミリの嘘は、どれほどの説得力を見せたのだろうか。後発走者のパワーをとくと拝見しようではないか。

記者 : イ・ガオン、写真:チェ・ギウォン、編集:チャン・ギョンジン、翻訳:平川留里