2012年の制作者 ― Dynamic Duo「僕たちの中にヒップホップがあるのだ」
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Dynamic Duoを主軸とするAmoebahoodは所属するグループがわずか4組。その中でもプロデューサーであるPrimaryと、まだ正式にデビューしてないリズムパワーを除くと、テレビで見られるグループはわずか2組の小さな芸能事務所だ。しかし、この会社は生き残りづらい芸能界でずっと成長しており、今年はレーベルの名前を掲げた公演を開催したりもした。アイドルグループや韓流という魔法の成功公式など関係なく“自分たちがやりたい音楽をやる”という純粋な目標を貫いてきた彼ら。そんな彼らだからこそ、過去の成果よりこれからが期待される。ひとつのトレンドが終わった後、その流れの先端に立った人は新しい道を探すが、流れの外にいる人は引き続き自分の道を歩けば良いからだ。後先など関係なく楽しい道に進むため、会社を作って運営するDynamic Duoに会った。彼らが聞かせてくれるステージの上と下、裏での暮らしは、どれも取り外すことができないひと塊となったダイナミックなストーリーだった。
―現在、Amoebahoodツアー中である。レーベル単位の公演というのはミュージシャンの単独公演とは違う意味を持つが、進めてもいいと確信したのはいつ?GAEKO:僕たちが兵役中の時、Supreme Teamが開催したコンサートが非常に成功した。僕たちと違ってSupreme Teamは堂々としていて、観客の前でビビったりしない。それに僕たちは男性ファンが多いけど、Supreme Teamは若いファンや女性ファンが多いから、この二つのチームが一緒に公演したら相乗効果 が期待できると思った。また、リズムパワーを新たなチームとして迎え入れて、事務所に属する人も多くなり、しょっちゅう顔を合わせるメンバーでステージを作ったら面白いかもと思った。
「ボーカリストの才能を見つける目を育てたなければならない」
―Movement公演にも参加したことあるし、仲の良いチーム同士で一緒にステージを作るということは初めてではないが、今回は主催者側の立場で公演を引っ張っていかなくてならないという点でこれまでとは違うことを感じたと思う。CHOIZA:逆に学んだことが多い。特に、Simon Dの場合、チームに良くないことがあったにも関わらず、ソロアルバムの活動もうまくやってくれたし、公演でも単独コンサートとほぼ同じようなエネルギーを使っていた。
GAEKO:僕たちは遊ぶ感じで気軽に思っていたけど、Simon Dはこの公演を待ち構えていたなと感じた。1人で30分以上ステージをコントロールするのを見て、本当にズバ抜けた才能がある人だなと思った。観客を退屈させない才能があるが、僕たちが10年かけて身に着けたノウハウを、Simon Dは本当に短い時間で身につけたと思う。
CHOIZA:それは頑張ったからといってできるものでもない。彼は才能があるから、短い時間の間にうちのチームを補ってくれるところまで成長したと思う。リズムパワーも自分の特性を発揮できるようにかなり頑張って準備したし、何よりも僕たちを含め3チームを後押しできるPrimaryがいて初めてこの公演が可能だった。チームごとに音楽の雰囲気もそれぞれ違うし、ライブセッションをよりうまくやろうと欲張ったらバンドも複数必要になるけど、Primaryは所属歌手の音楽をすべて知っていて本人が書いた曲も多いから、バンドマスターとして中心をうまく取ってくれた。彼が大きな全体図を描いてくれたと思う。
―役割分担がよくできているが、そこにボーカリストまで補強されたらさらに最高になれるのでは?と思ったりもした。
GAEKO:計画がないわけではないけど、会社のイメージのせいかラップをやる人ばかり来て、ボーカルを探すのがなかなか難しい。特に女性の方はうちの会社に志願しないし。実際、僕たちがラップをやっているから、ラッパーの中でスター性を持つ人は見つけ出しやすいけど、ボーカリストの才能を見つける目は今より育てる必要があると思う。
CHOIZA:これまでうちの会社は、インディーズである程度の実力を身につけた人々を誘ってきた。リズムパワーも個性あふれるラッパーだったし、Primaryも非常に上手だった。だからボーカリストもすでに実力がある人を探したいけど、アーティストは自分の分野で教わりたいと思う人を探していくものだから、簡単じゃない。
―素人から新人を発掘しないと、音楽に関するクオリティトロールが難しくないか?ミュージシャン対ミュージシャンだと言いにくい話もあると思うが。
GAEKO:うちの原則は“放っておく”こと。とりあえず、やりたいように音楽を作らせて、その結果の中で曲の選定に会社が介入する。最初、Supreme Teamのデビューアルバムを作った時、僕たちのノウハウを教えてあげようと張り切ったりもした。結果は良かったけど、Supreme Teamのメンバー内では音楽的に混乱を感じたようだった。そんな試行錯誤を経験してから、今は世の中に発表された時に人々から愛される音楽になるようアドバイスするくらいに、役割を調整した。
CHOIZA:言わば、僕たちがA&Rチームの役をすることになるけど、選曲や曲の順番、タイトル曲を決める時、ミュージシャンと会社の意見を聞いて仲裁をする役割。彼らからすれば、僕たちが先輩だからお互いに理解しやすいと思う。
―Dynamic Duoのアルバムに関しても、同じ作り方をしているか。5枚目のアルバム「ろくでなし」もそうだったが「どっちもどっち」も予想外に穏やかな曲だ。
CHOIZA:商業的な戦略(笑)
GAEKO:アルバムのプロモーションについてたくさん考える方で、何より、モニタリングをたくさんする。僕たちも好きなように作って、その中で最も良い曲をすすめてもらう仕組みになってる。11月にアルバムが出た時は年末だったから「燃える金曜日」を一番先に公開して、1月に出したアルバムでは寒い冬と似合う歌をタイトル曲にした。以前は穏やかな曲で活動するのが不安に思えたけど、こういうのもある意味、チャレンジだと思う。チームとして新しい姿を見せるタイミングであったとも思うし。
CHOIZA:GAEKOが軍隊で頑張って練習した歌の腕前を見せる時でもあったし(笑) レコーディングできるボーカルから、今はライブが可能なボーカルになったから。
GAEKO:ただ、イヤモ二(ステージ用イヤホン)が必ず必要!(笑) 正直、この世界でかなり長くやってきたけど、音楽市場自体が楽しい曲だけでは収益を得るのが難しい。だけど僕たちは、ステージに必要だから、楽しい曲をやらなければならない。そういう部分においてよくよく考えて計画を立てなくてならない。
―最小費用で最大効果を得られる方法だからか。
CHOIZA:その面でのノウハウができたりもしたし、正直に今回のアルバムの成果については運が良かったと思ったりもする。今、この時代の流れが僕たちを選んでくれているような気がするから。以前は僕たちが主流と非主流の間に挟まっていると感じたけど、最近は母親くらいの年配の方もヒップホップを気楽に受け入れるほど人々の好みがかなり変わったと思う。LeessangやEPIK HIGH、Simon Dがバラエティ番組に出演した結果でもあると思うけど、ラッパーがテレビに出ることが自然になり、僕たちはそういう雰囲気の中で思う存分活動している。
―外的状況による悩みが曲を書く時に影響したりもするのか。大衆性についてのバランスを考えるとか。
CHOIZA:曲を作る時、放送活動を意識した感じの曲は歌詞を少し優しい表現で書いたりする場合がある。アルバムのプロモーションのためには放送可能な曲が2曲くらいは必要だから、放送審議を考えるということで。
GAEKO:頑張ってアルバムを作ったのに、まったく活動できないと悲しいので。代わりに、残りの曲は自由に作る。
―1枚のアルバムの中で、自ら譲歩と補償が行われている仕組みだ。
CHOIZA:だけど、予想の結果が反対に出たら困ってしまう。気を使って書いた曲が予想外の理由で審議で放送不可になったり、自分勝手に書いた曲が放送可能になったり、放送局ごとに審議結果が異なる場合もあった。実は先のことなんか分からないということ(笑)
「一度やってみようという風に思ったら、心が楽になった」
―音楽を作る時はとりあえず楽しむことが一番という結論になるが(笑) 今回のアルバムは特にそういう感じが強い。入隊前に発表したアルバムでは、すべての曲がそれぞれ違うスタイルを見せようとする意図が強く見えたが。CHOIZA:軍隊で世の中を見る視線がかなり変わったと思う。もう僕たちがやることについて、想像もできないことなんか無いと思うようになった。一度やってみようという風に思ったら、心が楽になった。以前と似ているようなものをやるとしても、僕たちは今こうやって変わったからそれ自体で違う意味があると思ったりするし、好きなものをやるのが一番ということにも気付いた。そういう態度が全宇宙に少しでもより多く役立つはずだ。あえて無理する必要なんかないし、かえって気軽に理解しやすく話したら、聞いてる方も僕たちを友達のよう身近に感じると思う。少しダサくて間違っている言葉でも、本心が大事だから。
―正直、そういう親しみがDynamic Duoの底力だと思う。カッコイイふりをしない愉快なヒップホップこそが2人の特徴だと感じる。
GAEKO:僕たちまでカッコ付けたら、非常に激しく見えてダメだ。
CHOIZA:この人たちまでこうしなくちゃならないの?みたいな(笑) 僕たちのグループのイメージの良さは「ただやりたいことをやる人たち」である。あまりカッコつけていない代わりに、やりたいことはすべてできる。
GAEKO:そのため、いつか僕たちが偉そうなふりをするラップがやりたくなったとしら、それも十分できると思う。スワッグもヒップホップの大きな面白味のひとつだから、スキルを見せたい時はそういう音楽も選ぶことができるのだ。今回のアルバムはサンプリングがほとんど排除されているけど、次はサンプルが入った感じをもう一度出すこともできるし。Dynamic Duoの中で流行に合わせて、いくらでも変化することができると思う。
―2人を見て不思議に思えるのは、自由に様々な音楽をやるが、それが結局2人でやる音楽ということだ。2人がそれぞれ音楽的な突破口を探ろうと試みたことはないか?
GAEKO:2人でもまだできることがたくさんあるから、あえてそんなことを考えたりはしない。お互いに譲り合って、ひとつの曲の中でもお互いに合わせようとする態度がチームの維持にも役立っていると思うし。それに、今は2人が出す声の形がひとつの声のように思える。曲を作る時も僕が作った曲にCHOIZAのパートを空けといて、CHOIZAが書いた曲に僕のパートを残しとくのが当たり前だし。僕たちの間ではそうやってお互いを考え合うのがとても自然。
CHOIZA:10年間やり続けながら、デュオという形の制限を乗り越えたと思う。2人でやるのが一番得意だし。代わりに、他のラッパーと組み合わせて3人でやったり、他のプロデューサーの曲をもらって退屈さを打開するなど、少しずつ変化を与えようとはしている。
―そういう意味で興味深いところが、ラッパーが芸歴が重なるに連れ、プロデューサーやサウンドメーカーになってステージから降りるケースが多いが、Dynamic Duoはいつもステージ上の現役を志向するという感じがする。
GAEKO:欲張りなんだと思う。今回のアルバムにフィーチャリングまで書いて歌を歌ったりしたのも、ただ予算の問題だけではない。僕たちが中心になるアルバムを作りたかったからそうした。
CHOIZA:僕たちは70代になっても2人組のユニットで公演したい。40代になったらその歳に合うラップをやって、ステージに上がれなくてもラッパーとして音楽をやり続けたい。そういう意味でスティービー・ワンダーやジェームス・ブラウンを模範にしているけれど、彼らほどうまくできなくても長く続けたいと思う。
「僕たちはヒップホップで煮込んだスープみたいなものだから仕方ない」
―すでに長い芸歴を持っている。振り返ってみたら、会社を作った時もかなり若かったが。CHOIZA:その時は、世界進出すると思っていた。
GAEKO:僕たちはモチベーションが上がらない時、自分たちを隅っこに追い込む傾向があるみたいだ(笑) 3人組が解散され、2人でDynamic Duoとして活動しながら当時の会社と再契約をする条件は十分揃っていた。しかし、そんなシステムがつまらなく思えて独立を決めるようになった。
CHOIZA:その時は、お金の無駄とも思えるマーケティングが多かったこともあって、僕たちが望む方法でより合理的にできる広報ツールに関して、非常に多くのアイデアを持っていた。しかし、会社を始めてみたら、かなり大変だということに気が付いた。以前は不満ばっかり持っていたけど、僕たちが知らなかった業界の動き方を知るようになった。例えば、放送スケジュールにおいても、やりたいものもあればやってあげなければならないものもある。そのうち、前の会社の立場を理解するようになり、甲と乙という両方の立場を包容できるようになった。これまで会社に属するグループが僕たちしかいなかったから、僕たちが活動を休む時は会社の運営が厳しくなった。それで、僕たちが稼いだお金を職員たちの給料に出したりして、もう倒産するかもと思ったこともある。今はSupreme Teamの人気が出て、会社運営にも余裕ができたけど。
―怖気づいたりもしたはずだが、耐えて頑張れた力は何だと思うか。
GAEKO:皆にとってチャレンジだったから、お互いがモチベーションを上げ合えたことだと思う。
CHOIZA:皆で力を出して耐えたのが、結局耐える力になったんだと思う。幸い、内輪揉めがなく、お互いの心がひとつになり、これまでうまくやって来たと思う。僕の立場からはいつも友達と一緒だから、仕事と遊びの境界が曖昧だったりもしたし。実際、たくさん苦労もしたけど、もう一度生まれ変わっても今の人生を選ぶと思うほど楽しい時間だった。
―ツアー後にアメリカ公演も計画されていると聞いた。会社がさらに忙しくなると思えるが。
GAEKO:進出というより雰囲気を覗きに行くという感じ。
CHOIZA:Simon Dや現地のミュージシャンと共に公演をする予定だ。アメリカでもヒップホップ音楽がどんどん変化しているけど、ビートで勝負した以前と違って、最近のトレンドはメロディーが強調されて歌いやすいラップが入った曲だし。カニエ・ウェストもそうやっている。しかし、これまで僕たちが韓国の音楽市場に合わせて変化してきたスタイルが、それと非常に似ている。ボーカルが目立って、一緒に歌いやすいラップバースがある曲。そのため、アメリカでも僕たちの音楽が大衆的にどんな反応を得られるか試してみたい。
―韓国スタイルのヒップホップと見ることもできるが、一方ではそれをあえてヒップホップとして分ける必要があるか?と思いもする。ただ、作曲、編曲もするDynamic Duoの音楽であるのでは?
GAEKO:僕たちがやる音楽がヒップホップだから、僕たちの音楽をただヒップホップと言うのが非常に気楽で自然。ゴムタンスープのベースがいつも牛の骨であるように、僕たちはヒップホップで煮込んだスープみたいなものだから仕方ない。
CHOIZA:僕たちの中にヒップホップがあるのだ。僕たちがいきなりクラシック音楽を作っても、それはたぶんヒップホップの作り方で作られた音楽になると思う。もし、僕たちがいつか違うジャンルの音楽をやるとしても、iTunesで僕たちの音楽のカテゴリはヒップホップであってほしい。そう思っている。
記者 : ユン・ヒソン、編集:チャン・ギョンジン、ナ・ウンジョン