【アルバムレビュー】ヒョンドニとデジュニ、ユーモア溢れる歌が余韻を残す

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写真=D.I.MUSIC

ヒョンドニとデジュニのミニアルバム「Gangster Rap Vol.1」レビュー

最近ミニアルバム「Gangster Rap Vol.1」を発表した「ヒョンドニとデジュニ」は、お笑いタレントのチョン・ヒョンドンとヒップホップミュージシャンDefconn(デフコン)が結成したプロジェクトグループだ。

今回のミニアルバムに対し音楽評論家のハン・ドンユンは、「今年上半期にリリースされたアルバムの中で一番面白いと言っても過言ではない」と評価した。彼の言葉通り、今回のミニアルバムには、聞けば愉快になる計5曲が収録されている。

最初のトラック「Intro」は曲名通り、最初の入りの曲だ。Defconnとチョン・ヒョンドンは、「僕たちの歌を聞く準備はできたのか/もしまだ準備ができていないなら、準備しろ」という歌詞で冗談を言う。彼らは、「yo」を繰り返しながら、「yo」で始まったり、終わったりする言葉を無意味につなげながらダジャレを言うが、これは本格的な始まりの前の軽いウォーミングアップで、自分たちの歌を気楽に聞いてくれと間接的に言っているのだ。キーボードが作り出すビートとDefconnのおどけたような掛け声も楽しみを与える。

「苦しい時に聴いたらもっと苦しくなる歌」は、失恋した男女に贈る楽曲だ。歌い手は、この曲を「苦しい時に聴いたらもっと苦しくなる歌」だと言い、聞き手に向かって「聞くな」と繰り返しているが、なぜか警告されたことほどやりたくなるのが人間の心理だ。「ギャラリーチョン(ギャグのキャラクター)」時代の台詞のトーンをそのまま持ってきたようなチョン・ヒョンドンの“気持ち悪い”ラップと、はっきりしない声で絶えずまくし立てるDefconnのラップが注意を引くが、彼らの風刺と嘲弄は、数百年前に宮廷で活躍したピエロのような印象を与える。そのため、さんざんまくし立てているにも関わらず、聞く人に不快感を与えることはない。

「Yes or No」は、韓国のお笑い番組「ギャグコンサート」の人気コーナーであった「ナムボウォン(男性人権保障委員会)」を連想させる楽曲だ。話し手は、これまで女性と付き合いながら感じたすべての“不合理”と“矛盾”を挙げながら、彼女たちに「Yes or No」と聞いている。「君がおごるときは海苔巻き、俺がおごるときはステーキ」「君の携帯電話帳の彼氏は俺の番号ではない」などの歌詞は、男たちが共感できる状況を面白く表現している。また、それぞれの話ごとに「Yes or No」と繰り返して聞くDefconnの大胆なラップは笑いを誘う。単純だが、インパクトのあるビートやコミカルな歌詞が印象的な曲だ。

「ハンシムポチャ(情けない屋台)」は、恋人と別れた男が寂しい気持ちを歌う曲だ。ハンシムポチャは、男が彼女とよく行った場所。別れてから1ヶ月も経ったのにまだ気持ちの整理ができていない彼は、寂しい気持ちでいつものようにハンシムポチャに足を運ぶ。いたずらっぽくないチョン・ヒョンドンのラップは、男性的かつ真剣で逆に新鮮な感じを与えるが、これは速いスピードのDefconnのラップとよく調和している。フィーチャリングを担当したBoniは、都会的で吸引力のある声で「ハンシムポチャ」を訪ねる男の寂しさをよく伝えてくれる。

今の韓国社会の若者たちをリアルに描く

「オリンピック大路」は、江南(カンナム)で遊びたい江北(カンブク)出身男の気持ちを表現した曲だ。男は、“ホット”な江南でよく遊ぶが、家がカチ山(カチサン)にあるため、いろいろと難点が多い。オリンピック大路を通じて江南に行く道はいつも混んでいるし、時々気に入る女性に会っても住んでいる所が違って諦める場合が多い。だから、「やりたいがやれないことが多い」「それで今日も激しく生きている」などの歌詞からは、出世と江南進出に対する欲望が読みとれる。Defconnとチョン・ヒョンドンのラップは、偽悪とウィットを行き来し、単純に繰り返されるリズムとメロディーは中毒性がある。MCナルリュ(ユ・ジェソク)が歌うリフレインは、曲の単調なところを補完する役割をする。オリンピック大路で運転中、道が混雑したときにはこの歌を聴くことにしよう。ストレスの一部を飛ばしてくれるかもしれない。

「Gangster Rap Vol.1」は、笑いながら軽く聞ける曲だけ収録されているように見える。全般的にユーモアのある歌詞と威張るようなラップは自然な笑いを与え、犬の吠える効果音と「俺たちは噛みません」という歌詞や、「OECD/俺らのCD/ワン・プラス・ワン」などのダジャレは、爆笑を誘う。

しかし、これがすべてではない。歌詞を繰り返して聞くほど、彼らの曲が今の韓国社会の若者の姿をリアルに描いていることが分かる。例えば、江南への憧れ、高級ブランド品への欲求、クラブ文化、美容整形ブームなどが挙げられるが、その中で一番面白いのは、迷惑メールを示す「キム・ミヨンチーム長だから聞くな」(「苦しい時に聴いたらもっと苦しくなる歌」)という歌詞だろう。このような現実的な歌詞のおかげで「Gangster Rap Vol.1」の滑稽とユーモアは、そのまま消えることなく、余韻を残している。

このレビューを書いたソ・ソクウォン記者は、歌手の名前でハングルを覚え、少年の頃ピアノを弾いていましたが、息子の将来を心配した母の決断で戻れぬ橋を渡り、今は平凡なリスナーとして暮らしている音楽愛好家です。現在は映画関連の仕事をしており、一生涯の著作を夢見ています。

記者 : ソ・ソクウォン