「秘密の女」イ・チェヨン、再び悪役を熱演“悪口を言われるのはもう怖くないけど…”

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写真=マイデイリー DB
2022年に「秘密の男」のハン・ユラがいたとしたら、2023年には「秘密の女」のジュ・エラがいた。より一層グレードアップされた悪女として帰ってきた女優イ・チェヨンは、再び平日の夜にお茶の間を楽しませた。

KBS 2TV毎日ドラマ「秘密の女」(脚本:イ・ジョンデ、演出:シン・チャンソク)が全103話を最後に、韓国で8月4日に放送が終了した。

「秘密の女」でイ・チェヨンが演じたジュ・エラは、YJグループの嫁になるために手段と方法を選ばない人物だ。実はジュ・エラは、母親の無念な死に対する復讐のために、仇の家族になるキム・ヒョンジョンであり、その過程で数多くの悪行を続ける。1歩遅れて本人が苦しめたチョン・ギョウル(チェ・ユンヨン)が実の妹であることを知って衝撃に包まれる。しかし、わざと知らないふりをして失明した状態で刑務所で心を痛める。

イ・チェヨンは劇中、YJグループの後継者ナム・ユジン(ハン・ギウン)を誘惑する時は夢中にならざるを得ないほどの魅惑的な姿を、悪行を続ける時は誰よりも怖い姿を、過去を後悔して号泣する時は人々の胸をしびれさせるような姿を、それぞれ披露した。視聴者を「秘密の女」に没頭させたのは、ジュ・エラを“最強の悪党”として作り上げたイ・チェヨンの努力と演技の実力が光を発した結果だった。

最近行われたマイデイリーとのインタビューで、イ・チェヨンは「特に大変な作品でした。普通、放送が終わると、嬉しいが少し寂しい気分になるとよく言いますが、私は何となく心が痛いです」とし、昨年12月から今年7月までの約8ヶ月間を共にした「秘密の女」の放送を終えた感想を明かした。

「秘密」シリーズに3回連続で出演した俳優はイ・チェヨンだけだ。彼女は「シノプシスが出来上がる前から監督から連絡がありました。昨年、個人的に良くないことが多く、怪我もたくさんして心配になるくらいでした。ところが監督は私をデビューさせてくれましたし、『秘密の女』は監督のKBSでの最後の作品でした。私のスタートを切ってくれて、最後をお願いしてくださったので、とても悩みました」とし、「再び悪役を演じるということでプレッシャーを感じました」と語った。

続けて「『秘密の男』以後の私のフィルモグラフィーを見ると、悪役を演じるのは最大限避けようとしました。スペクトラムを広げたくて、様々なことにたくさん挑戦しました。しかし、監督と脚本家が『秘密』シリーズを作ろうとしていました。私もシリーズ化されれば面白いなと思いました。私が唯一生き残ったので、それに対するプライドもありましたし、『秘密』シリーズを楽しく続けていきたかったです」と、出演の理由を明らかにした。

イ・チェヨンは、ジュ・エラをこれまで演じた悪役の中で、最もダイナミックで悲劇的なキャラクターだと評価した。

ジュ・エラと「秘密の男」のハン・ユラを比較して、彼女は「復讐の出発点から異なっていました。ハン・ユラは成功したいソシオパスですが、一生懸命努力したにも関わらず、生まれた環境のせいで『私をこんな目に遭わせるなんて』『私がお金を手にする』という感覚だったとすると、ジュ・エラはお金は重要ではなく、『私の母の命を奪った? では君の命も奪ってあげる』という感覚でした。なのでジュ・エラはより悪く、可哀想な人物です」とし、「結局最後には自分がしたことで、1番大事にしていることを台無しにしてしまう悲劇的な結末を迎えます。ギョウルとテヤン(イ・ソンホ)が結ばれてハッピーエンドで終わりますが、あまりにも悲劇が大きくて視聴者にとっては辛かったかもしれないです」と話した。

演じるキャラクターは、動物を参考にして演じるというイ・チェヨン。今回は蛇の動きを参考にしてジュ・エラを表現したという。ジュ・エラを見るたび、強烈だがなぜか冷ややかに感じられたのはこのためだった。彼女は「ドラマに入る前に、監督に『台本が強いですが、演技も本当に強くしたほうがいいですか?』と聞いてみました。すると「エラ、ワールドカップで言えばお前はブラジルだよ。君にできることは全部やってみて』と言われました。ジュ・エラを見た時、鳥肌が立ったらいいなと思いました。それで蛇の動きや攻撃性を参考にして演技に取り入れましたが、後で編集する方から『チェヨンさん、なんでこんなに舌をぺろぺろしてるんですか?』と聞かれました。習慣ではなく設定でした。また、そっと近づいて気持ち悪く演じようとしました。監督が『力を抜いて演じた』とおっしゃっていましたが、わざとそうしました」と明かした。

このように、ジュ・エラに完璧に溶け込んだ彼女は、台本にない部分も細かく計算して演じ、現場では称賛が殺到したという。

その中で1つのシーンを思い浮かべた彼女は「ギョウルの目が見えなくなった時、首を掴んだのは台本にありませんでした。撮影が終わった後、セット場がとても静かでした。『ここまでする必要があるの?』という反応でした。ギョウルを演じたシン・ゴウンさんから『本当にありがとう。感情が一気に込み上げてきた。だからみんなイ・チェヨン、イ・チェヨンというんだね』と褒められて、すごく嬉しかったです。強いシーンの撮影が終わると、いつも『大丈夫ですか?』と尋ねますが、むしろそうしてくれて感情が込み上げてきたと言ってくれます」と微笑みを浮かべた。

しかし、視聴者の反応はあえて見なかったというイ・チェヨン。その理由を尋ねると「とても怖かったです。悪役をたくさんしていて、視聴者から悪口を言われるのはもう怖くないですが、ジュ・エラがかわいそうでした。演技をする時、憂鬱になりました。ドラマが終わったとき、精神的にも健康でいたいのに、またそれを見ればまた心が痛いからです」と、悪役の苦悩を打ち明けた。

今作のヒロインであるイ・チェヨン、チェ・ユニョン、シン・ゴウンは、いずれも86年生まれの同い年だ。それだけに「このチームは特に息が合いました」とし「ドラマが終わってもグループチャット上のメッセージがそれぞれ100件以上になります。渓谷にも行ってきました」と明かし、注目を集めた。

実は、イ・チェヨンは昨年中旬から最近まで誰よりも忙しい日々を過ごした。「秘密の女」からtvN「シークレット・ファミリー」、SBSバラエティ番組「ゴールを殴る彼女たち」まで、色々なスケジュールを並行しながら1日も休む暇がなかった。現在、事務所に所属せず1人で仕事をしているが、このすべてを順調にやり遂げた。

彼女は「精神力で耐えました。とても大変でしたが、サッカーをしたら体力が少し良くなりました。今回は1日も休みがなかったです。痛かったり倒れたりすると、どうしようもなくなります。それで本当に精神力で耐えてきましたが、終わったとき体にたくさんの影響がありました。終わってすぐ、やることリストに『元気になること』と書きました」と明かした。

1人でスケジュールをこなす理由としては「とても良い事務所から連絡がきますが、実はデビューの時からすべての人生の目標が『健康な人生を過ごそう』ということでした」とし、「本当に重要なのが、メンタルヘルスです。この仕事をかなり長くやっていますが、どうすれば健康にもっと長くできるのかを考えると、私はデビューの時から1人で自分でやる人ではなく、誰かによって作られた人だということに気づきました。会社のプラン通りに動いた部分もありますし、私1人で作品を選ぶとか、私がどんな俳優でありたいのか、というのが1つもありませんでした。基礎がしっかりしていないため、支えがあってこそより長く俳優として健康に活動できる気がしました」と明らかにした。

また、「スケジュールも1人で整理したり、私にかかる予算を組んだり、出演料を交渉しながら、私のギャラがいくらなのかを冷静に把握しています。1人で仕事をしてみて、周りのスタッフにより感謝するようになりました。ありがたさをたくさん感じています。私が良い演技をして元気に仕事をするためには、今このような栄養分になる苦労の時間が必要だと思います」と語った。

肉体的にも精神的にも健康になるための目標を立てたイ・チェヨン。MBTI(性格診断テスト)がENTJだという彼女は、スキンダイビング、サンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路、酒造技能士資格の取得など、やることリストを見せた。

ジュ・エラを脱ぎ捨てたイ・チェヨンは、本来の愉快で気さくな姿に戻っていた。

彼女は「私、面白いことをやってみたいです。私、すごく面白い人です。切実にやってみたいです。ロマンスも好きです。ロマンスコメディーはいいですね」と今後の活躍への期待を高めた。

記者 : パク・ソヨン、写真 : ソン・イルソプ