「ザ・ネゴシエーション」ソン・イェジン“撮影しながら悩んだ時間…辛いだけではなかった”

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写真=CJエンターテインメント

「撮影する1ヶ月半の間、髪をずっと整えなければなりませんでした。髪が早く伸びる方なんです」ソン・イェジンは美しく微笑んだ。彼女は最近公開された映画「ザ・ネゴシエーション」の撮影当時、交渉家ハ・チェユンを表現するために、長い髪をばっさり切った。映画では悪口も平気で吐き出す。「メロクイーンがあれでいいの?」と見ている人がむしろ心配になる。それだけ変わった姿だ。ソン・イェジンは「新たなキャラクターに対していつも渇望している」と話した。そして、「女優が悩む時間が長いほど、観客たちが見る姿はもっと豊かになる」と話した。自分の欲も、人々の期待も疎かにしない“代わりのいない女優”ソン・イェジン。最近、ソウルの三清洞(サムチョンドン)にあるカフェで、ソン・イェジンに会った。

――「ザ・ネゴシエーション」のどんな点に惹かれましたか?

ソン・イェジン:制限された空間、制限時間内に展開されるストーリーの緊迫さがよかったです。一触即発の状況で現れる瞬間瞬間の緊張感が楽しくて面白かったです。

――ハ・チェユンという役を作る時に重点をおいた部分はどこですか?

ソン・イェジン:チェユンが交渉に対してトラウマを持つことになる事件があるじゃないですか。交渉家としてチェユンは冷静ですが、彼女も感情を持つ人間です。当初シナリオでは、チェユンは交渉家という職業人としてのイメージが大きかったんです。しかし、無条件に定義だけを叫ぶようなキャラクターは魅力がありませんよね。もっと立体的で共感できるキャラクターを作ってみようと思いました。熱い人間愛を持った交渉家にです。

――実際に交渉家たちに会ったりもしましたか?

ソン・イェジン:会ってみることは出来ませんでした。でも実際に交渉家たちに会った監督に話を聞きました。交渉家たちは、警察側に立っていますが、情緒的には人質犯ともっと近いそうです。人質犯の内面をしきりに見るようになれば、彼らを理解するようになって、願いを聞き入れるようになるというんです。そんな風に交渉が行われるんです。

――冷静さと温かさを行き来する交渉家を演じることは、容易ではなかったようですね。

ソン・イェジン:交渉家は人質犯の前で揺れる姿を見せちゃいけませんよね。惰弱な姿を見せた時、人質を取った犯人は交渉家の能力を疑うようになります。自分が望むことを解決してくれるだろうという信頼がなくなるんです。ミン・テグ(ヒョンビン)はどこに飛んでいくか分からない人物であり、最後まで気を張っていなくてはならないのはチェユンです。人質犯に「あなたのどんな話も全部聞いてあげる」という姿と「あなたがどんな行動をしてもあなたを制圧することができる」という姿を同時に見せるのが難しかったです。

――交渉家役のために髪もショートにしたんですよね。

ソン・イェジン:ロングヘアで、警察の制服を着る姿を想像してみました。髪を綺麗に束ねたり、お団子ヘアの姿も考えてみましたが、キャラクターの外見が気に入らなくて。誰も切るようには言わなかったけど、髪を切るしかないと思いました。外見的な変化が与える影響が大きいですから。映画の中のストーリーは12時間繰り広げられる内容なので、撮影した1ヶ月半の間、髪型をずっと整えなければならなかったんです。髪は早く伸びる方です(笑)。おかげで「ザ・ネゴシエーション」の次に撮影した「いま、会いにゆきます」ではウィッグをつけて撮影しました。

――“リアルタイム 二元撮影(モニターを通じて会話する演技)”という独特な方法で制作されましたが、最初からそのような方法で撮影すると決まっていたのですか?

ソン・イェジン:議論をする過程で決まりました。制作チームでもやってみたことのなかった手法なので、とても心配したと思います。私も先が真っ暗でした。モニターで見える姿から、実際の声の震えや眼差しなどの微妙な変化が感じられないですから。そんな中で、極度の緊張感を撮影中ずっと維持しなければならないのも大変でした。

――不慣れな環境に他の時よりも敏感だったようですね。

ソン・イェジン:そうですね。セットに入っていることが嫌になったりもしたんです。体も使いながら感情を表現しなければならないのに、座って顔だけで演技する訳じゃないですか。とてもイライラしました。「ここは牢屋だ。撮影が終わったら、ここを出ることができる」という考えになるほど、心理的な圧迫がひどかったんです。セットから出られるお昼の時間が、その圧力から少しは抜け出せる唯一の時間でした(笑)。

――それほど辛い撮影だったら、やりがいもあったんじゃないですか?

ソン・イェジン:女優が悩めば悩むほど、観客たちが見る姿はもっと豊かになります。私は大変でも自らをもっと大変にするスタイルです。今回の映画を撮りながらも悩む時間を経験したけど、その時間が辛いだけではありませんでした。私も疲れた瞬間がありましたが、新しい技法で撮影したということ、また新たな素材のストーリーを観客に披露したという点でやりがいを感じました。

――俳優ヒョンビン氏と共演する作品は今回が初めてですね。どうでしたか?

ソン・イェジン:撮影しながらも、大きなスクリーンで見たときも、ヒョンビンさんが台詞一つ、動作一つにたくさん悩んだということが感じられました。シナリオの中でテグは悪辣な感じが強かったけど、ヒョンビンさんがずっと多彩に演じていました。テグから意外性を感じるようにした点も魅力的でした。映画を見た後に、「今まで演じたキャラクターの中で一番良かった」とヒョンビンさんに言いました。

 
――映画「いま会いにゆきます」、ドラマ「よくおごってくれる綺麗なお姉さん」に続いて、今年だけで3作目です。地道に仕事に没頭されていますね。

ソン・イェジン:あいにく今年だけで3作品を見ていただくことになりましたが、「あの人、また出てるの? うんざりする」などと言われそうで、怖いんです。それでも各キャラクターが全部違ってよかったです。変身しようとするというよりも、他のキャラクターを演じるのが良いです。ある意味怖いもの知らずなんです(笑)。

――その中でも自分にぴったりのキャラクターを挙げるとしたらどの役ですか?

ソン・イェジン:多くの方々がラブストーリーでの私の姿を好んでくださるということはわかっています。アクションやスリラーにも挑戦してみたけど、それでもラブストーリーの中の私をもっと記憶して下さるということもありがたいです。私も密かに、そのようなことを念頭に置いているかもしれません。でも「私は恋愛がよく合っているから」と思って演技している訳じゃありません。

――休まずに活動し続ける理由は何ですか?

ソン・イェジン:私が好きなことだからです。観客に見せるためだけのものではありません。でも観客の評価によって、私がいくら好きでもできなくなるかもしれないのが、この仕事ですよね。だからそのような部分も念頭に置いています。様々な困難があっても作品を継続するのは、まだ情熱があるからです(笑)。作品でストレスも受けてマンネリに陥ったりもしますが、作品でまた、治癒されるんです。今年は治癒される、ちょうどそのような時でした。

――“投資したい女優””キャスティングしたい女優”という評価に対するプレッシャーも感じそうですが。

ソン・イェジン:ずっと上手くやり続けてこそ聞くことができる言葉なので、プレッシャーはあります。責任感も感じます。いつも“夏のスクリーン戦争””秋夕大戦”のように競争しなければならない状況に置かれ、そこから脱することができないからです。でも最近になって、興行成績が良いかどうかに縛られすぎてはいけないと思うようになりました。どのような演技を見せられるのかがもっと重要だと思います。

――演技も地道ですが、“美しさ”も相変わらずですね。

ソン・イェジン:時間は皆に公平に与えられています(笑)。見られる職業なのでいつも良いコンディションを維持しなければならないですが、自分でも昔に比べて皺が多くなったと感じます。でも年を取ることは当然のことでしょう。弛まず運動し、管理もしなければなりません。20代の顔を再び持つというのも話にならないことです。それでも幸いなことに、科学は徐々に発達していますよね? それだけが望みです(笑)。

記者 : キム・ジウォン