Vol.2 ― BTS(防弾少年団)も手がけてきた演出家MASAO…彼が思う成功するための条件とは?

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倖田來未、w-inds.、SUPER JUNIOR、Da-iCEなど多くのライブ演出を手掛けるMASAO。大学時代にダンスの魅力に嵌り、バックダンサーとして活躍した後、演出家の道にたどり着いた。

U-KISS、防弾少年団、MONSTA Xなど数々のK-POPグループも手がけてきた彼に、これまで演出してきたステージの魅力やアーティストの魅力を語ってもらった。

Vol.1 ― 倖田來未、SUPER JUNIOR、Da-iCEなど多くのライブを手がける、演出家MASAOが明かすMONSTA Xの魅力とは…?

――韓国のアーティストを初めて手がけたのは?

MASAO:U-KISSです。U-KISSの後は、SUPER JUNIOR、防弾少年団、MONSTA Xを手がけました。防弾少年団は、2015年の8月に大阪・東京で行われた「防弾少年団 JAPAN OFFICIAL FAN MEETING VOL.2 -UNDERCOVER MISSION-」というファンミーティンの演出をさせてもらいました。

――今では海外でも認められるアーティストとなった防弾少年団ですが、当時演出していて、何か違うものを感じましたか?

MASAO:ダンスはみんな上手かったと思います。暇さえあれば踊っていました。あとは、メンバーのやんちゃな雰囲気がものすごい出ていて、好きな人にはものすごいハマるんだろうなぁと感じました。楽曲もダントツでかっこよくて、顔は可愛いのに、HIP HOP色が強くて。男性からも好かれそうだなと思いました。

――ステージのアイデアはどこから生み出していますか?

MASAO:うーん、どこからだろう。いつも絵を描いているので、“お絵かき”ですかね。ホワイトボードとかに描き出したりして、その瞬間に考えています。事前にこういう風にしようとかは、あまり考えないですね。昔は表参道とかのショーウィンドウの飾り付けを見たりしていました。あとは、気になったものや建物とかを写真や動画に撮ったりして。それを、ふとした時に「そういえばあの時の写真!」と掘り出して、こんな感じに演出しても面白いねと参考にしたりもします。でも、やっぱり基本は“お絵かき”ですね。
 

アーティストとして成功するための条件とは…?

――K-POPアーティストならではの、この魅力を全面に出すという風に決めていることはありますか?

MASAO:それはK-POPに限らず、グループやその人のキャラクターによりますね。例えばSUPER JUNIORの時だと、SUPER JUNIOR本体があって、その中にSUPER JUNIOR-K.R.Yという歌うユニット、SUPER JUNIOR D&Eという踊るユニットがあります。SUPER JUNIOR-K.R.Yの時は、1人1人ソロをやるので、その人のキャラクターに合わせるなど、工夫をしています。組み合わせによって歌やダンスなども変わって来ますよね。

――MONSTA Xは特にどこを見せようというのはありましたか?

MASAO:MONSTA Xは2回演出を担当しました。一番最初がクリスマスパーティーで、次に「MONSTA X, JAPAN 1st LIVE TOUR 2018 “PIECE”」を演出したんですが、彼らの場合、“強さ”を出そうとしました。楽曲の強さに加えて本人たちの魅力をうまく見せようとしました。

――これまで演出してきた中で一番印象に残っているステージは?

MASAO:やはり倖田來未さんですね。2007年の「KODA KUMI LIVE TOUR 2007-Black Cherry-」と、2010年の横浜スタジアムでやった「Koda Kumi Dream music park」が印象に残っています。横浜スタジアムだと、岩をぶち抜いてジープが出てくるという演出もしました(笑)。あの当時はやりたい放題やっていました。

――これまでたくさんのアーティストを見てきたと思いますが、成功するための基本的な条件は何だと思いますか?

MASAO:最終的にはその人やグループの個の人間力だと思います。上手い人や見た目のいい人でもなかなか売れないことがあって、最終的にはその人の魅力が重要になってくると思うんです、オーラとか。倖田來未さんはやっぱり、それがすごかったんです。ホールで1人でやっていたのに、彼女が歌うと、すごい声量で会場内がビリビリするんです。「ここのホール狭いな」と感じたのは彼女以来いないですね。最近はビリビリと痺れるような感覚を受けるアーティストはいないんですが、僕はそれが成功するための条件かなと思います。あと、人柄がいいと人が寄っていきますよね。K-POPは割とそういう人が多いですね。SUPER JUNIORとかもついつい手を差し伸べたくなるイメージです。見ていて、こういう所が好きになっていくんだろうなと感じますね。
 

ダンサー、演出家になる夢を追う原動力になったものとは…?

――MASAOさん自身がダンスに夢中になったきっかけは何ですか?

MASAO:ベタなんですが、テレビで「ダンス甲子園」を見てですね(笑)。大学4年生になった時に、親にもうちょっとだけダンスやりたいと話したんですが、当時みんな就職していたので「そんなことのために大学入れたんじゃない」と怒られました。それでも「2年くらいは続けたい」と言って、レッスンをやったり、ちょこちょことメディアの仕事をやったりしていました。初めて大きいステージに立ったのは、SMAPのバックダンサーとしてでした。そうやってバックダンサーをやっていたんですが、「これいつまでできるんだろう」という不安が20代後半から生まれてきて。「ダンサーだと誰でもいいんじゃないか」と思い、振付師になりました。でも、楽曲によってはダンスのジャンルが違うので僕じゃダメな時もあって。それじゃだめだと思い、“ダンスコーディネーター”という話が挙がった時に、これを固めていこうと思ったんです。そうして、今では演出をやることになりました。ダンスをやっていなかったら、ここまでも来れなかったと思います。

―― 一人のダンサーから一転、自分じゃなきゃできない仕事を作っていったんですね。

MASAO:自分じゃないとダメという所にまでたどり着くのが難しかったですね。自分じゃないとダメって言ってもらえたら、仕事として続いていきますからね。

――厳しい世界という印象もありますが、ダンサーをやっていく中で、現実的に辛かった時期もありましたか?

MASAO:僕は運が良くて、そのような辛かったことというのはほぼ無いんです。世間的にダンサーとしての仕事が増え始めた先駆けあたりにいたので、何だかんだ仕事はありました。唯一落ち込んだのが、実家の家の工事があった時に、銀行で2000万円のローンを借りられるか聞いてきて欲しいと親に言われたんです。銀行に行って「今ダンサーをやっています」と言ったら、借りられるのが600万と言われて「これはヤバイ」と落ち込みました。これだけ、一生懸命に時間をかけてやってきたものが、世の中ではこの評価なんだということが一番ショックでした。

――ダンサー、演出家になる夢を追う原動力になったものは何ですか?

MASAO:元々ものづくりは好きだったんです。振り付けしたり小道具使ったりとか、それはダンスの発表会の時からそうなのですが、作るのが好きで、それがだんだん大きなものになっていったという感じです。だから、現場が何個か重なっても全然苦ではないです。お客さんが湧いているのを見るのが自分の中の最高の楽しみで、お客さんの喜んだ声や歓声が原動力になっています。また「きゃー」って言わせたいとか「あの演出良かった」と言わせたいです。
 

「ステージに立つのは彼らだという強い認識は持つようにしています」

――演出をやる時期が何個も重なったりもするんですか?

MASAO:はい。最大で5~6個も重なったことがあります。今はw-inds.、Da-iCE、SUPER JUNIOR D&Eなどです。

――現場で混乱してしまうことはないですか?

MASAO:想像力に全力を使っていて、記憶力が本当に無いので、あっちでもこれをやったとか覚えてないんです(笑)。現場ではその現場のことしか考えないようにしていて、あまり混ざったりはしないです。ただ楽曲が近い感じだとちょっと悩んだりしますね(笑)。

――演出をする時、本人たちからも意見を聞きますか?

MASAO:はい、聞いています。

――本人がやりたいもの、演出家として見せたいもの、会社として見せたいものがそれぞれあると思いますが、そういった折り合いはどのようにしていますか?

MASAO:折り合いは付けるようにしています。演出を作っている時にどうしてもアーティストと意見がまとまず、演出内容でせめぎ合うこともあるんです。それでもアーティストが「どうしてもこの案でいきたい」と言われたら、僕はその案で進めます。これは僕の考えなのですが、結局ステージに立つのは彼らなんです。最終的に彼らが「やらされている」という空気になってしまうと、あまり良いものはできません。なので、Bをもっとかっこよく(演出)してあげようと努力します。だから「ステージに立つのは彼らだ」という強い認識は持つようにしています。僕自身もステージに立っていた人間なので、尊重していきたいという思いを持っています。
 

「ライブ演出が好きなのでずっとやっていきたい」

――MASAOさん自身も過去にそのような経験はありましたか?

MASAO:意識はしていなかったのですが、「この衣装着て踊らされるんだ」と思ったことはありましたね(笑)。「これダッサイな」「これ、俺が選んだわけじゃないんだけどな」と。今まではダンサーとして演出に関わることはあまりなかったのですが、今は“させる側”としてその辺を気にしています。「着たくない」と言われたら「まぁ、そりゃ着たくないよね」と理解もできますし(笑)。人前に出るのに、納得しないで出るなんて嫌じゃないですか。

――今後、演出家としての夢や目標は何ですか?

MASAO:「とにかくずっとライブをやっていきたい」と思っています。「オリンピックとか興味ない?」と言われたことがあるんですが、興味がないんです。ライブ演出が好きなのでこれをずっとやっていきたいと思っています。

――ライブ一本で勝負していきたい! 他の領域は興味ない! と。

MASAO:実はミュージックビデオも2本くらいやらせていただいていて、楽しいと思いました。そういった映像のディレクションもしています。だから、この分野もこれから膨らませていきたいなと思っています。PVも撮りたいです(笑)。

――(笑)ライブ演出との魅力の差は何ですか?

MASAO:切り取れるところです。やり直せるというのは良いですね。ライブはナマモノの良さがありますが、失敗しても後戻りは出来ません。それぞれ違う魅力があると思います。

(協力:MASTER LIGHTS @masterlights_official

記者 : Kstyle編集部