「あなたの頼み」イム・スジョン“結婚?今もご縁を待っています”

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写真=MYUNG FILMS、CGVアートハウス

デビュー17年目。誰もが認めるベテラン女優だが、現実にとどまらずに限りなく挑戦し、その挑戦を通して成長するイム・スジョン。最近、韓国で公開された映画「あなたの頼み」(監督:イ・ドンウン)で、デビュー後初めての母親役を熱演した彼女は「今回の作品を通して新しい自分の姿を発見した」と話した。



――「あなたの頼み」のシナリオを初めて読んだ時、どんな印象を受けましたか?

イム・スジョン:とても面白かったです。とりあえず台詞がとてもよかったです。母親ヒョジンの視線を追っていくと、様々な人物の間で平凡で日常的な台詞が飛び交うのですが、それにとても共感できました。シナリオではなく、小さくて可愛い本一冊を読んでいる気分でした。

――デビュー後初めて、母親役を演じた感想はいかがですか?

イム・スジョン:年を重ねていくうちに、自然とそのような役も演じるようになったのだと思います。周りを見れば友人はもちろん、私より年下の子達にまでみんな家庭があるし、子供もいます。だから母親役に違和感は感じませんでした。

――ヒョジン役を演じながら、どんなことに一番重点を置きましたか?

イム・スジョン:何よりもヒョジンが、ジョンウク(ユン・チャニョン)を育てると決心したことを、観客の方々にも納得してもらわなければいけないと思いました。だからヒョジンが置かれている状態をもっと細かくお見せしようと努力しました。ヒョジンは、夫が亡くなってから人生がつまらなく、虚しさと寂しさを感じている人物です。そんな退屈な日常の繰り返しの中で(亡くなった夫と前妻との間にできた息子である)ジョンウクの母親になって欲しいという義理の妹の願いを聞き、人生で最も大きな決心をすることになります。一見、何も考えずにとった行動のように見えますが、これもすべてヒョジンの心理状態の延長線上にあったものだと思いました。

――そんなヒョジンの心理状態が、表情や衣装にもよく表れていますよね。

イム・スジョン:服だけを見ても、ヒョジンが全く楽しくなさそうなのがよくわかります(笑)。つまらない日常が繰り返される人生に疲れた様子がそのまま表れています。これについては、撮影前に衣装チームと相談して、キャラクターに合う衣装コンセプトを決めました。また、ヒョジンの表情も自然と表現できました。去年、韓国で放送されたドラマ「シカゴ・タイプライター」を終えてすぐに撮影に入ったので、疲れ切った顔がそのまま表れています(笑)。でもジョンウクを連れて来てからは、だんだん明るくなって元気を取り戻していくヒョジンの姿を見ることができます。

――息子ジョンウク役を演じたユン・チャニョンさんとの共演はどうでしたか?

イム・スジョン:チャンヨンさんは私がデビューした年(2001年)に生まれたという話を聞いて、本当に世代の違いを感じました(笑)。でもチャンヨンさんは、年齢の割に大人っぽい面があるので、演技をしながら年齢差はそんなに気になりませんでした。勿論チャンヨンさんは、私に気を使っていたと思いますが、今でもメールでよくやり取りする仲です。もうすぐまた新しい作品に入ると聞いたので、撮影現場にコーヒーのケータリングカーを送ろうかと考えています。

――ヒョジンを演じながら、母親に対するイメージや考えなどは変わりましたか?

イム・スジョン:まず母と子供の関係が、血縁だけに限定されるものではないということに改めて気付きました。今まで頭ではわかっていましたが、作品を通して心から感じるようになりました。現代社会での家族という形態も大きく変わってきているし、独身の人、再婚した人、養子を迎える人、国際結婚をした人など、様々な家族が存在します。だから映画を見た関係者や知人もとても共感できると言ってくれました。

――結婚に対する考えも変わりましたか?

イム・スジョン:若い頃も今もそうですが、結婚に対する考えは特に変わっていません。「結婚を必ずしなきゃ」とか「結婚せずに一人で暮らさなきゃ」と考えたことはありません。結婚したいと思えるような人に出会えば、自然と結婚するのではないかなと思います。今もご縁を待っています。

――今まで様々な作品に出演されましたが、韓国映画界で女優として感じる限界などはありますか?

イム・スジョン:そうですね。いつも感じることですが、韓国映画で女優が演じることができる女性キャラクターというのが、本当に限定されています。私たちの社会は未だに男性中心なので、仕方なく映画界も男性中心に流れていくしかないということを知っています。韓国映画界で男女のキャラクターのバランスがとれるまでには、もう少し時間が必要だと思います。でも、少しずつでも続けて声をあげていれば、段々よくなるだろうという希望を持っています。

――最近になって独立映画に続けて出演されていますが、何か特別なきっかけがあったのですか?

イム・スジョン:数年前から大小さまざまな映画祭で、審査委員を任され始めたのですが、その時に独立映画にたくさん触れました。そして韓国映画の力は、まさにその独立映画にあるということを感じました。新人監督や新人俳優の中には、素晴らしい人材が本当にたくさんいます。独立映画がたくさん作られてこそ、映画市場もある程度バランスがとれるのではないかと思います。

――ご自身の持つ認知度や才能を独立映画に還元しているという感じがしますが、それについてはどう考えています?

イム・スジョン:そういう部分もあります。自分によって人々が関心を持ってくれて「イム・スジョンがこんな作品もやってたんだ」と、その作品を探して見てくれたら、少しは助けになるのではないかと思っています。私も独立映画を通して、商業映画ではなかなか出会えないような魅力的なキャラクターを演じ、気持ちが浄化されたりします。お互いよい影響を受けあえる機会だと思います。

――直接作品を企画したり、演出したいと思ったことはありますか?

イム・スジョン:演出は難しいと思います。映画に出演しながら、監督という役割がどれだけ偉大で大変なのかを見てきたので、簡単な気持ちでは挑戦出来ません。でも企画やプロデュースなら参加できるのではないかと思います。計画はありませんが、関心はあります。そして女優以外にも、様々なことを企画してみたいです。もっと時間が経ってから、自分の名前のトークショーもしてみたいです。

――いつの間にかデビュー17年目になりましたが、残念だったり後悔していることはありますか?

イム・スジョン:正直、未だに私がどうして女優をしているのかよくわかりません(笑)。小さい頃は人前に立つと何も言えずに、顔を赤らめて、汗だけを流してるような子でした。今でもスポットライトを浴びなければいけない場に立つと、すごく緊張するし、頭が狂ってしまいそうです(笑)。それくらい消極的です。未だに、撮影現場でたくさんの人が私を囲んで見守っているのには疲れます。でも、私にぴったりの役に出会った時に感じる幸福感は、言葉で説明できません。作品をしながら、人間的に成熟していくのも感じます。だから、これまでの女優生活を振り返って見ると、残念さが残るというよりは「よく頑張ってきたな」と感じます。

記者 : イ・ウンジン、翻訳 : 浅野わかな