【REPORT】アリーナ級の存在感を放った防弾少年団…青春ストーリー「花様年華」堂々の完結編

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防弾少年団が2015年12月8日と9日、横浜アリーナで「2015 BTS LIVE <花様年華 on stage> ~Japan Edition~」を開催。昨年11月にソウルで行われた「2015 BTS LIVE <花様年華 on stage>」を日本向けに仕立て、超満員の観衆を沸かせた。9日公演の模様をレポート!


防弾少年団にとって初のアリーナ公演「2015 BTS LIVE <花様年華 on stage> ~Japan Edition~」は二重の意味で凄かった。
一つ目は彼らの成長ぶりだ。2013年12月に600人キャパの渋谷のライブハウスからスタートした防弾少年団。彼らは2年をかけて着実に実績を積み重ね、横浜アリーナに辿り着いた。しかもそこにいる彼らはアリーナの広さを感じさせなかった。昨年9月に、同会場でのK-POPアーティストによる合同イベントにも出演しているが、あの時とはまったく違う彼らがそこにいた。いい意味で予想を大きく裏切るパフォーマンスを演じ、アリーナを狭く感じるほどにスケール感のあるライブでファンを魅了した。
もう一つは7ヶ月をかけて一つの物語を完結させたこと。「I NEED U」「花様年華on stage : prologue」「RUN」……この一連のPVで、彼らは一つのストーリーを綴ってきた。が、それは難解すぎて、把握しづらい面もあった。ところが、コンサートのエンディングに映し出されたある写真がすべてを解き明かすのだった。メンバーはこの物語について多くは語らない。もしかしたら、続編があるのかもしれないし、ここでの解釈が間違っているかもしれない。ファンもまた最後の写真が意味するところを考えながら、帰途についたことだろう。以下は記者の推測を含めながらのレポートとなる。


写真館で撮った記念写真に写っていたものとは?

スクリーンには開演前から黄金色の蝶が舞っていた。昨年11月末に発売したミニ・アルバム『花様年華pt.2』にも「Butterfly」という曲が収録され、“蝶”は本公演のストーリーを形作る大きな構成要素だ。そしてBruce Hornsby の「The Way It Is」をサンプリングした、2pacの「Changes」が流れると共に、場内の空気はタイトなヒップホップモードへ。スクリーンに現れた7人のメンバーは素で朗らかに微笑み、彼らは昭和な香り漂う写真館に集っているようだ。そして写真館の店主が2列に並んだメンバーに向け「ボッ」とストロボをたくと、その白い光が客席を眩しく襲う。気付けば、フロアもファンが手にするライトで、ストロボの色と同じ白一色に。早くも、ステージ上の世界と現実とが一つになり、ファンの期待は高まるばかり。果たして、その写真に映っていたものとは?

ステージに目を移せば上手には鉄製の飛び込み台のような鉄柱が。そう、これはPV中、Vが昇り、そこから海に向かって飛び込んだのと同じもの。黒のフーディーを身に付けた男性が階段を上っていく。この塔は本公演がPVの世界の延長上にあることを物語っていた。

幕開けは「Hold Me Tight」と「Let Me Know」の2曲。じっくり歌い込んでいく姿は余裕を放ち、今まで以上に彼らが大きく見える。スクリーンに映るのは、ビデオのファインダーから見た風景。赤いRECの文字が浮かび、おそらくJINが撮影しているのだろう。モノクロームでざらついた映像は現実というより記憶の中のもの。JINが自分の記憶を辿り、かつての友達(メンバーたち) と遊んだ森を映しているようだ。そして、それぞれがそれまで手にしていたスタンドマイクを袖に運ぶと、今度はパフォーマンスで魅せていく。歌ったのは「Danger -Japanese Ver.-」! スクリーンに浮かぶ映像もモノクロからカラーにチェンジし、彼らもダイナミックに攻めていく。バンドセットで演じたそれはファンキー度がアップし、フレッシュな印象に。生バンドのバックアップで防弾少年団は一層グレードアップした姿を見せることに成功する。

MCタイムは物語性を離れた、彼らのリアルな声。SUGAはイヤモニを外して客席の生の歓声を煽りながらクールにキメ、ジミンは客席に自分の名前を3度コールさせる。そして“永遠の希望”ことJ-HOPEは会場の隅々まで指をさしながら、「ホ~~」と雄叫び。ジョングクは「僕はこの歓声が聞きたかったです。日本では初公開するステージですので、是非期待してください」とにっこりし、ジンも「防弾少年団の音楽を素敵なバンドの方たちと一緒に準備しました」と話して、この後の展開を楽しみにさせた。

続いたのはファンなら何度も耳にしたヒップホップ・チューン「NO MORE DREAM -Japanese Ver.-」と「N.O -Japanese Ver.-」! 前者ではメンバーが左右に広がり、後者ではY字状に伸びた花道をフル活用。メンバーそれぞれのパフォーマンスがあちらこちらで同時に繰り広げられ、一瞬たりとも目が離せない! ジミンはセンターステージで踊った後、ここアリーナでも華麗な回し蹴りをキメた。


甘酸っぱくも、ほろ苦い青春ストーリー

ヒップホップ色の強い3曲を演じた後、彼らは甘酸っぱい青春の思い出にプレイバックしていく。RAP MONSTERは誰かの書斎に入り、本棚から本を取り出し、それに読みふける。書斎の本来に持ち主との思い出に浸っているのだろうか? SUGAはバスケットに興じた後に、喉の渇きを水で癒し、ジンはカメラを手に散歩。澄んだ眼差しで被写体を捕えた。写真館で記念写真を撮る前、メンバーはこうした夕焼け色の日々を過ごしていたのだった。

ほのぼのした雰囲気の中、今度はユニットによるパフォーマンスへ。RAP MONSTER、ジン、J-HOPEが爽やかな高校生タッチに「Converse High」を歌えば、SUGA、ジミン、V、ジョングクが「24 / 7 = heaven」で初デートのウキウキした気分を。そして再び全員が一つになった「Miss Right -Japanese Ver.-」もラブリーチューン。途中、ファンも声を合わせて大合唱すれば、会場中が幸せな気分に包まれた。

青春は甘いだけじゃなく、傷や痛みも伴う。彼らもまた仲間同士の衝突を経験し、泣いたこともあった……そうしたこれまでの苦労を振りかえった後に明日への希望を歌う「引っ越し」はRAP MONSTERがSUGAの肩に手をかけながらスタート。そしていよいよ、最新ミニ・アルバムのタイトル曲「RUN」を本邦初披露!

メンバーはこの曲を歌うことに「ワクワクする」と語り、まずはPVの上映でファンをじらす。これだけでも会場の興奮は沸点に達し、防弾少年団もバンド・バージョンでなく、疾走感満点のオリジナル・バージョンで応える。RAP MONSTERが「駆け抜けていく青春をイメージした」と明かしたこの曲のポイントは背を向けて、右から左からの、振り向きざまに上着をはだける仕草。青春真っ只中の詞にアダルトな振り付けをプラスすることで、今なお成長しているさまを表現する。続く「Butterfly」は幻想的な彼女を、決して捕まえることの出来ない蝶に例えた曲。バックにはクジラの絵が映し出され、同じ新曲「Whalien 52」のモチーフもプラスしたかのよう。「引っ越し」~「Butterfly」での“ほろ苦さ、苦悩”というテーマは「TOMORROW」にも引き継がれるが、最後は「逃げるな、諦めるな」というメッセージを歌いあげ、暗転後も右手人差し指を高く掲げるポーズを3秒キープし、深い余韻を残した。


圧巻のパフォーマンスがファンを未体験の感動へ誘う

ポジティブ・メッセージで締めた中盤から一転、後半はステージとフロアが一体になって怒涛の展開を見せる。RAP MONSTERの「僕たちのタイトル曲『RUN』のように最後まで走れますよね~~? 遊ぶ時間ですね。走れ~~」の言葉を合図に、メンバーとファンがひとつになってブッチギっていった。「HIPHOP性愛者」では、RAP MONSTERの体全体を使った「ヒップホップ」コールに、フロアも声量マックスに「ヒップホップ」とレスポンス。「フンタン少年団」ではジミンを筆頭に全員が弾けて“踊れや踊れ、走れや走れ”のパフォーマンス! メンバーは「みなさん、最高に盛り上がってますか~~? 楽しんでますか~~」(SUGA)、「大きい声で叫べ~~」(J-HOPE) と尚も煽り、本編最後の「BOY IN LUV -Japanese Ver.-」までファンの興奮は天井知らずだった。

ジンが子供のころの夢を振り返る映像に続いたアンコールも前代未聞のボリューム感だった。SUGA、J-HOPE、RAP MONSTERの3MCで演じた「NEVER MIND」はガチなヒップホップ・チューン。その後、他のメンバーも合流し、片田舎の駅のホーム風セット(メンバーの頭上にはそれぞれの出身地のボードも) で演じた「Ma City」は故郷賛歌。SUGAの口元をバンダナで覆いながらラップする様も格好いい。
ジョングクの指ハート・サインからスタートした「いいね!Pt.2~あの場所で~」は、セクシーダンスでファンのハートをとろけさせ、「FOR YOU」ではバックにタンポポの綿毛が散る。これは「RUN」のPVでRAP MONSTERがふ~~っと飛ばしていた綿毛と一緒のものだろうか? 最後は指ハートからのサランヘ・ポーズを演じて実にムーディー。そして幕占めはオリコン・デイリー1位をゲットしたばかりの「I NEED U (Japanese Ver.)」! ラストは紙吹雪が舞う中、感動のフィナーレを迎えた。


熱き青春から、次なるステージへ向かう防弾少年団

大舞台でのステージを成功させた彼らはファンへの思いをこう語った。
ジミン「こんなたくさんのファンの目を見ながら歌えて本当に光栄でラッキーでした。皆さんの目が綺麗ですね。これからも格好いいステージをお見せします」
ジョングク「大きいコンサートで皆さんに会えて良かったし、ステージをしながら皆さんと目が合って幸せでした。これからも皆さんにとって素敵な人になりたいと思います」
V 「こんな大きなコンサートができたことが嬉しくて、感動でした。まだまだ足りないですよね。これからも頑張ります」(投げキッス&指ハート付き)
SUGA 「楽しい思い出を作れて本当に嬉しいです。これからももっと楽しんで素敵な思い出を作っていきましょう」
ジン「アリーナという意味のある場所で皆さんと一緒で気持ちいいです。これからもずっと皆さんと一緒にいたいです。皆さんは僕の全てです」(ファンの歓声に目がウルウル)
J-HOPE 「こんなに大きい会場で一緒にいれて信じられないほど幸せでした。これからも永遠に一緒にいてください。サランヘヨ」(この後、J-HOPEとSUGAがラップの掛け合い風に「お疲れ様でした」)
RAP MONSTER 「こんなにたくさんの愛をもらっているんだなと感じました。ここは横浜アリーナじゃないですか。だからアリナとうございます。昨日も『横アリナとうございます』と何回も言いましたけど、それほど感謝しています。今日のライブが(皆さんの) 人生の中で花様年華のひとかけらになってほしいです」

甘くもほろ苦い青春を歌ったメンバーたち。RAP MONSTERは「(今日は) 僕たちの青春のストーリーを伝えました」と語った。そしてライブ中、RAP MONSTERと末っ子ジョングクの間でこんなやりとりもあった。

RAP MONSTER「(ジョングクと) 初めて会った時は14歳でした」
ジョングク「(目を細めながら) こうして応援してくれるみなさんがいて、もっともっと成長できたと思います」
RAP MONSTER「大人ですね」
ジョングク「(だから) 防弾青年団?」
RAP MONSTER「ジョングクのようにみなさんのおかげで僕たちは成長していると思います」

そして、エンディングで、記念写真の現像も終わったようだ。写真館の店主は店頭にその写真を飾るのだが、そこに写っていたのはジンだけだった。冒頭に述べたPVでも、RAP MONSTERがSUGAとジンの2ショット・チェキを撮っている。が、浮かび上がったのはジンだけで、つまり、ジンを除くメンバーは彼の記憶の中だけにいた。一連の映像が紡ぐストーリーの中で、メンバーは生を賭して青春を熱く駆け抜けていった。ジンはそんなこぼれ落ちそうな思い出をすくい上げ、独り懐かしむのだった。
リアルな世界でも、彼らは、少年が若さをスパークさせる青春の日々を全力で疾走し、奇しくもジョングクが「(今の僕らは防弾少年団というより) 防弾青年団」と言うほどに成長を遂げた。追憶とリアルが交差したこのコンサートを例えるなら、胡蝶の夢。ライブ中、ずっと飛んでいた蝶はこの意味の蝶だったのかもしれない。

「<花様年華 on stage>」を終えた彼らは、10代の青春に読点を打ち、次のステージに向かおうとしている。ラスト、飛び込み台のような塔が再び現れ、Vはそれを一歩一歩、じっくりと昇っていった。その姿は“僕らは更なる高みを目指す”とのメッセージを代弁したものか。その決意こそが、この公演を大成功に導いた理由だろう。この日のライブは防弾少年団のネクスト・ステージへの第一歩となった。

ライター:きむ・たく

「2015 BTS LIVE <花様年華 on stage> ~Japan Edition~」
会場:横浜アリーナ
日時:2015年12月9日(水) 開場18:00/開演19:00

【SETLIST】
01. House of Cards(Instrumental)
02. Hold Me Tight
03. Let Me Know
04. Danger –Japanese Ver.-
05. NO MORE DREAM –Japanese Ver.-
06. N.O –Japanese Ver.-
07. Converse High
08. 24/7=heaven
09. Miss Right –Japanese Ver.-
10. 引っ越し
11. Run
12. Butterfly
13. TOMORROW
14. HIPHOP性愛者
15. フンタン少年団
16. DOPE
17. SKOOL LUV AFFAIR
18. ホルモン戦争 –Japanese Ver.-
19. BOY IN LUV –Japanese Ver.-
<ENCORE>
20. NEVER MIND
21. Ma City
22. いいね!Pt.2~あの場所で~
23. FOR YOU
24. I NEED U (Japanese Ver.)
25. House of Cards(Instrumental)

防弾少年団オフィシャルサイト:http://bts-official.jp/index.html

記者 : Kstyle編集部