「夜間飛行」クァク・シヤン“ベルリン映画祭でのスタンディングオベーション、鳥肌が立った”

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作品ごとに優れた審美眼で新人俳優を発掘してきたイソン・ヒイル監督が今回も成果をあげた。キム・ナムギル(「後悔なんてしない」)、チン・イハン(「脱走」)、ハン・ジュワン(「あの夏、突然に」)、イ・イギョン(『白夜』)に続き、「夜間飛行」ではクァク・シヤンとイ・ジェジュンという有望な新人を発掘した。

イソン・ヒイル監督が「一緒に仕事ができてラッキーだった」と絶賛したクァク・シヤンは自身の性的アイデンティティを隠したまま、ソウル大進学を目指して学校と母親の期待を一身に受けている模範生のヨンジュを演じた。いつもニコニコと笑っているが、その笑顔の後ろには人に言えない悲しみが込められている。

イソン・ヒイル監督はクァク・シヤンについて「手が触れれば感性が爆発するほどの優れた表現力の持ち主だ」と絶賛した。クァク・シヤンは今回の作品を通じていじめられる友達をかばう優しさ、キウン(イ・ジェジュン)に対する切なさ、母親に対するすまなさ、校内暴力で苦しみ、何もかもから離れたくなる心境を同時に表現した。さすがイソン・ヒイル監督の眼識は優れたものだった。

「正直最初はクィア映画(性的マイノリティを扱った映画)なのでプレッシャーはありました。うまく表現できるか心配もしました。でもある瞬間、人が恋することに理由があるのかと思いました。僕の恋愛を思い出してみたら、ふとした瞬間の恋の感情は全部同じではないか、恋に男女があるのか、と思いました。そうやってヨンジュの感情を理解したら、演技も一層容易になりました」

彼は映画の撮影に先立ち、“ヨンジュの口調”を作り始めた。優しいヨンジュの口調と声は映画「パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち」のジョニー・デップからインスピレーションを受けた。

「ジョニー・デップはジャック・スパロウを演じるためにしばらくゲイと一緒に生活しました。そのエピソードを思い出し、『パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち』をもう一度見ました。ほかのクィア映画は見ませんでした。監督の前作も見なかったです。ほかの同性愛者キャラクターを参考にしたらむしろもっと混乱するだろうと思ったからです」

直接口調まで作りながらヨンジュという服を着たものの、イ・ジェジュンとの同姓愛シーンは決して容易なことではなかった。彼は心の準備をきちんとしてから撮影現場に入ったが、二人の姿を見ながらぎこちない様子を見せるスタッフのせいで大変だったという。

「僕はすでにヨンジュになったのに。むしろ周りの人がぎこちない様子でした。ある日、スタッフが集まった場所で頼みました。『(イ)ジェジュンさんと僕は『夜間飛行』にすべてを込めたい。皆さんに手伝ってもらいたい』と。その時から楽しく撮影することができました。当時、僕はとても切実だったんです(笑)」

「夜間飛行」は今年2月に第64回ベルリン国際映画祭のパノラマ部門に招待された。デビュー作でベルリン映画祭に参加する幸運を手に入れた彼は映画祭の話を始めると息を整えながら「今も胸がいっぱいだ」と打ち明けた。

「実感がありません。今は少し落ち着いたけど、少し前まではベルリンのことを思うだけで興奮していました。ときめき、胸もいっぱいになるけどすっきりした気持ちではありません。韓国でも映画祭に行ったことがないのに、ベルリン映画祭だなんて。不思議な感じがしました。立ち上がって拍手する人もいました。鳥肌が立ちました(笑) 一生忘れられない思い出です」

SMエンターテインメントの練習生出身である彼は俳優になる前にランウェイに立つモデルとして精力的な活動を続けた。その後、2NE1のメンバーBOMの「You And I」ミュージックビデオを通じて短いながらも演技の味を知り、テレビの中の自身を見ながら胸の中で何かが動くことに気づいた。彼は除隊後、本格的に俳優という目標に向かって歩き始めた。SBS週末ドラマ「気分の良い日」と映画「夜間飛行」で俳優としての一歩を踏み出した彼は「一時的なスターではなく、韓国映画界を率いる人」になるのが夢だと言いながら目を輝かせた。

「僕はノートを一冊持っています。俳優としてやりたいことを書くノートです。そこにはレッドカーペットに立つこと、舞台挨拶をすること、ファンと対話することなど、いろんなことが書かれています。『夜間飛行』のおかげでいくつかは叶いました(笑) 僕の一番大きな願いは『韓国で認められること』です。最近演技が上手な人は?と聞くとみんなチェ・ミンシク、ハ・ジョンウ先輩だと答えますね。僕もそのように認められたいです」

記者 : キム・スジョン、写真 : イ・ソンファ