「バトル・オーシャン/海上決戦」キム・ハンミン監督“チェ・ミンシクはカメラを向けるだけでオーラが溢れる…感嘆した”

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映画「バトル・オーシャン/海上決戦」(制作:ビッグストーンピクチャーズ)は、韓国では近年稀に見る正統派時代劇だ。李舜臣(イ・スンシン)という明確で巨大な目的に向かって、脇目もふらず愚直に走り続ける。最初からスタイリッシュなアクションや小さな笑いのような小細工はこの映画の関心事ではない。野暮ったく感じられるほど堅い正攻法を動力に、力強く前進していく。このような作品の信念が通じたのだろうか。公開4日で350万人、公開12日で1000万人の観客が応えてくれた。その中心にはキム・ハンミン監督がいる。

実際「バトル・オーシャン/海上決戦」のヒットを期待する声はあまり多くなかった。韓国映画が4作も公開される夏のピークシーズンに、正統派時代劇「バトル・オーシャン/海上決戦」が観客を呼び寄せるにはあまりにも重すぎるテーマではないかというのが業界の主な見解だった。何よりも上映時間の半分にも及ぶ海上戦闘シーンへの懸念の声が高かった。しかし「CGがめちゃくちゃだ」「戦闘シーンが1時間にもなるなんてありえるか」などの懸念は、映画が公開されると杞憂になった。

写真=映画「バトル・オーシャン/海上決戦」スチール
「むしろ僕は、海上戦闘シーンが大衆的、商業的に観客との接点となるポイントだと思いました。李舜臣将軍という人物は知っていても、彼が自ら海の上で戦うシーンは見たことがありませんよね。海、海戦、船が『バトル・オーシャン/海上決戦』ならではのポイントであり、差別化できる点だと思いました」

それでは、なぜ他でもなく鳴梁海戦なのだろうか。文禄・慶長の役の6年目に少数の朝鮮水軍が日本水軍に勝利した鳴梁海戦は、韓国で歴史的に最も偉大な戦いとして挙げられている。キム・ハンミン監督は鳴梁海戦について「李舜臣将軍の真髄がある海戦だ」と語った。

「李舜臣の要諦が詰まった海戦です。兵士たちの恐れを勇気に変え、同時に海戦を勝利に導くというのは、李舜臣将軍が元々持っていた生死に対する超越した精神があったからこそ可能なことです。韓国は今も大変なことがあるじゃないですか。鳴梁海戦の精神を通じてそれが慰めとなり、人々の力になればと思いました」

李舜臣がこの映画の核心であり、それ自体が情操となるだけに、キャスティングは重要な問題だった。キム監督は英雄を超えて聖雄と呼ばれる李舜臣将軍役にふさわしい俳優として、チェ・ミンシクの他に頭に浮かんだ俳優はいなかったと伝えた。名前だけで凄まじい“李舜臣”という役に耐えられる底力を持っている俳優が、忠武路(チュンムロ:韓国の映画界の代名詞)に他に誰がいるだろうかと話した。台本もまだできていない状況で、南道(ナムド)料理店で出会って焼酎を飲んだ二人は、歴史観、映画、李舜臣について率直に話し合い、「バトル・オーシャン/海上決戦」という船に乗船した。

「現場では(チェ)ミンシク兄さんにすごく頼っていました。ジムボールの高さが5メートルはあるんです。階段を作らないとトイレに行くこともできない状況でした。そんな中でも共演俳優やスタッフに声をかけ続け、現場の雰囲気を穏やかにしようと努力していました。何と言うか、生まれながらの俳優だと思います。カメラを向けるだけでオーラが溢れるんです。韓国にこのような俳優は数えるほどしかいません」

デリケートで激しく大変だった撮影現場の雰囲気を和らげ、元気付けたのがチェ・ミンシクの役割だったとすれば、来島通総役を演じたリュ・スンリョンはものすごい集中力と真剣さで監督に別の意味での力となった。「神弓 KAMIYUMI」(2011)以来、2度目のタッグとなったリュ・スンリョンについて、キム監督は「俳優に敬意を抱いたのは初めてだった」と高く評価した。

「リュ・スンリョンさんは演出の意図をすごくよく理解してくれて、それ以上の演技力を見せてくれます。すごく頭が良く、体力もあります。休む時もモニターの前にちゃっかり座って、研究をします。うちの撮影現場が面白かったのは、一方ではチェ・ミンシク兄さんがスタッフや俳優たちと盛り上がって会話をして、一方ではリュ・スンリョンさんがすごく真剣に座っているんです(笑) 二人にとても感謝しています。どのシーンも撮影が始まる度に二人に感嘆しました」

キム監督は「バトル・オーシャン/海上決戦」を作り上げながら「生きている李舜臣を映画に撮ろう」という思いを忘れず、心に刻んだ。「乱中日記」を深く読み込み、李舜臣将軍の精神と悩みを映画に丁寧に刻んでいった。キム監督は「俺たちがこんなに苦労したことを、子孫たちは分かるだろうか」「分かっていなかったら人の子じゃないな」という台詞から「バトル・オーシャン/海上決戦」のシナリオを書き始めた。そして将軍となる者の義理は忠に従うべきで、忠は民に向かうべきだという李舜臣の最後の台詞で締めくくり、観客にどっしりとした響きを伝えた。

「鳴梁海戦は誰も助けてくれなかった、避けたかった戦闘でした。それにもかかわらず、李舜臣将軍は民と国、王への義理でその戦闘を貫き、最終的に勝利しました。李舜臣将軍を理解するにおいて、重要な鍵となるのが他でもなく鳴梁海戦です。同時に、2014年を生きる僕たちに重要なメッセージを伝えてくれると思います。『バトル・オーシャン/海上決戦』が成功すれば、閑山島(ハンサンド)海戦や露梁(ノリャン)海戦まで映画化します。言葉通り、李舜臣ブームが生まれてほしいと思っています」

記者 : キム・スジョン、写真 : チョ・ソンジン