「群盗」ハ・ジョンウ“坊主頭で太陽エネルギーの原理が分かった”

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俳優ハ・ジョンウが今夏の期待作「群盗:民乱の時代」(以下「群盗」)で帰ってきた。

朝鮮後期、貪官汚吏(不正を行い私利私欲を貪り、私腹を肥やす役人)が横行する腐った世の中を痛快に覆す義賊たちのアクション活劇「群盗」で、ハ・ジョンウはドチ役を演じた。ドチは知能が低く、純粋な白丁(ペクジョン:中国と日本の律令制において、公の職を持たない無位無冠の良民の男子)だったが、意図せず事件に巻き込まれ、唯一の肉親だった母と妹を同時に失い、義賊に生まれ変わる。

―先日、マスコミ試写会が行われた。映画を観た感想は?

ハ・ジョンウ:「群盗」は徹底した娯楽アクション活劇だ。意図通りに出来上がったと思う。ドラマチックな叙事を期待された方々は、多少ギャップを感じたかもしれない。軽快な音楽と派手なアクションに「群盗」の価値と美徳がある。マスコミ試写会の時に完成版を初めて観た。上映時間が2時間17分もあれば重く感じられてもおかしくないが、思ったよりも映画が短く感じられた。

―朝鮮時代の貪官汚吏をやっつける義賊の話なので、多少重く表現するのではないかと思ったが、至るところでユーモアがあふれている。シリアスとユーモアの間のバランスはどうやって調整したのか。

ハ・ジョンウ:面白いどんでん返しが欲しかった。今まで「哀しき獣」「ベルリンファイル」「チェイサー」などの重い映画で、それに合うトーンの演技をしてきた。しかし、「群盗」の場合、テーマは重いが、僕が演じたドルムチ(記者注:白丁ドルムチから義賊ドチに生まれ変わる)は軽くコミカルな要素がたくさん溶け込んだ人物だ。このドチを見てさらに面白く思ってもらえるのではないかと思う。アイドルでもそれぞれの担当があるように、僕も群盗の兄さんたちに仕え、自身をできるだけ低くする、爆笑できるコメディを担当した。

「首をぴくっと振るドチ、ユン・ジョンビン監督のチック症を取り入れた」

―映画の序盤、チョ・ユン(カン・ドンウォン)の手下のヤン執事(チョン・マンシク)が起こした火事によって家を燃やされ、ドルムチは髪が焦げてずっと坊主頭だ。石のように硬い頭と、バカすぎるキャラクター。格好良く見えるわけではないので、コメディを担当したくないと思われたかもしれないが。

ハ・ジョンウ:まず作品を信頼していたし、ユン・ジョンビン監督に対する信頼があった。むしろ面白そうだと思った。今までお見せしてきたキャラクターとは相反する部分があり、そのギャップに面白さがあるのではないかと思った。

スキンヘッドなので、昼間は太陽エネルギーを直接受けた。髪の毛があるのとないのでは、ものすごく差があることが分かった。頭が熱を保存し、日が暮れると熱を吐き出した。本当に事実だ。太陽エネルギーの原理がその時に分かった。日焼け止めをいくら頭に塗っても、夜になると熱気が残っていた(笑)

―ドルムチは18歳で、2年余りの時が経って義賊ドチになる時は20歳。さらにマ・ドンソクが演じるチョンボは22歳だ。観客のこの設定に爆笑していた。

ハ・ジョンウ:これは論理的に考えても妥当な台詞だ(笑) 朝鮮時代の平均寿命は35歳。40歳を超えられなかった。まともな食事もできず、ハードな労働を強いられた賤民(朝鮮時代で一番身分の低い人)たちは、老化が早く、早死した。映画でマ・ドンソク兄さんが22歳、カン・ドンウォンが20歳半ばという設定だ。

―後にドルムチは家族を失い、復讐を誓いながら義賊に入団してその頭として成長していく。ヒーロー物を見ているような気分だった。

ハ・ジョンウ:映画「ハンコック」のウィル・スミスや「パイレーツ・オブ・カリビアン」のジャック・スパロウも意識した。ハンコックのように緩い感じを出そうとした。義賊に入ることになり、イ・ソンミン先輩から顔に血を受ける時も間抜けな感じだ。人より勘が鈍いという設定だった。

かつてのお笑い芸人の、殴られた後にしばらくしてから痛みを感じるユンテクさん(のコンセプト)を取り入れたりもした。映画「ジャック」のロビン・ウィリアムズのように、知能は低いが強烈な感じを、ぼんやりした空虚な眼差しは「12モンキーズ」のブラッド・ピットを意識した。自分が演じる役をデザインする時、キャラクターのモデリングをたくさんする。

―ドチのキャラクターを設定する時、ユン・ジョンビン監督の癖である、チック症のように首を片方にぴくっと振る動きを取り入れたと聞いた。

ハ・ジョンウ:撮影が始まる前にキャラクターについて話をしながら、ユン・ジョンビン監督に「どうする?」と訊かれたが、僕は「明日、見てください」と答えた。そして、ユン・ジョンビン監督が普段、首をチック症のように振ることを初日の撮影で見せた。心で「これ、通じるかな?」と思った。最初の撮影は、チョ・ユンの家から奪った食料を車に乗せて出るシーンだったが、(その設定を)隠したまま、その時初めて公開した。監督もスタッフ全員も驚きながらも面白がったので、続けることになった。歩きはレイ・チャールズやスティーヴィー・ワンダーなど、ヒップホップスタイルの感じを真似た。

「アクションシーンのために、刀を持ち歩きながら回す練習をした」

―ユン・ジョンビン監督の作品は4度目だ。2005年の映画「許されざる者」、2008年の「ビースティ・ボーイズ」、2011年の「悪いやつら」、2014年の「群盗」まで。

ハ・ジョンウ:監督の作品は出れば出るほど信頼感が増すようだ。俳優ハ・ジョンウがこのチームに入るというよりも、ユン監督を手伝って全体を一緒にサポートできることは何だろうか、それをたくさん考えた。「許されざる者」で僕がデビューし、「ビースティ・ボーイズ」「悪いやつら」などを経て、今回「群盗」まで来た。「群盗」はキャラクターも面白く、映画も興味深かったが、自身がこの作品に一助できる部分には何があるかを悩んだ。

―4年ぶりにカムバックしたカン・ドンウォンが「群盗」でドチより目立つ面がある。

ハ・ジョンウ:ユン・ジョンビン監督の映画はほとんど二番手のキャラクターが目立つ印象だ。「ビースティ・ボーイズ」でも主人公はユン・ゲサンで僕は助演だった。「悪いやつら」もチェ・ミンシク先輩が映画をリードする人物だ。「群盗」はドルムチがリードするが、二番手のチョ・ユンが良く見える。シナリオを読みながら「ああ、カン・ドンウォンが4年ぶりにしっかりカムバックするんだな」と思った。

―チョ・ユンの派手な剣のアクションと同じぐらい、ドチの双刀のアクションも見物だ。強さと重量感、荒々しいが嘘のないまっすぐなパワーを込めて双刀を振り回していたが。

ハ・ジョンウ:何テイクも撮った。一度だけでもきちんとしてみようと思った。竹林で空に向かって回した時に使ったのは木刀、チョ・ユンとのアクションシーンではゴムの刀、持ち上げる時は鉄の刀だった。刀を回すのがあまりにも難しかったので、車で持ち運びながら回した。これでも上手く回さないとという気持ちだった(笑) 刀のフックに指をかけて回すが、下手すると指が折れるのでちょっと難しかった。

「腐敗したキジ、ダニの群れと撮影…大騒ぎだった」

―映画のオープニングとエンディングの義賊たちが群れを作って馬に乗り、野原を走るシーンが印象的だ。軽快な音楽と共に荒野を疾走する姿が、西部劇を連想させる。このシーンはすべて、キャスト本人が出演して撮影されたものなのか。

ハ・ジョンウ:オープニングとエンディングのシークエンスは、群山(グンサン)市セマングム原で撮影した。馬40頭が激しく走るシーンだ。馬は非常に敏感で臆病な動物であるため、制作部も出演者たちも非常に緊張していた。1頭の馬が走り出すと、残りの馬も一緒に走る。そして、言うことも聞かない。ある日、1頭の馬が猛ダッシュして逃げ、翌日見つけたこともある。イ・ギョンヨン先輩とイ・ソンミン、チョ・ジヌン、ユン・ジヘが馬から落ちた。ユン・ジヘが一番酷く落ちた。僕も馬に対するトラウマがあり、心理治療をしてから再び馬に乗れるようになった。

―全北(チョンブク)全州(チョンジュ)、慶南(キョンナム)河東(ハドン)、江原(カンウォン)三陟(サムチョク)など、全国を回りながら撮影した。7ヶ月にわたる厳しいスケジュールだったと思うが、どうだったのか。

ハ・ジョンウ:チョ・ジヌン兄さんとマ・ドンソク兄さんは普段からよく会う。キム・ジェヨンという俳優もよく会うメンバーだ。しかし、一ヶ所で長く撮影するわけではなく、あちらこちらに移動しながら撮影したので、出演者たちのスケジュールもうまく合わず、一杯したい時もなかなか集まれなかった。そこで、移動しながらお酒を飲んだ。ジヌン兄さんの車で一杯、ドンソク兄さんの車で一杯、缶ビールを手に、同じ方向を見ながら話をした。

―7ヶ月の間、苦楽を共にした出演者の間でのエピソードはないか。

ハ・ジョンウ:智異(チリ)山チュソルに入る時、船から下りて入るシーンがあったが、ロングショットから始めて、クローズアップしていく。その時、マ・ドンソク兄さんが小道具としてキジ3匹を背負っていた。実際、模型のキジを使っても良いのだが、監督がリアリティを重視したため、小道具チームが本物のキジ3匹を手配してきた。

しかし、このキジの死体が、暑かったせいでわずか1日で腐敗した。韓国で“殺人ダニ”(フタトゲチマダニ、刺されると死に至るダニとして韓国で殺人ダニと呼ばれ話題となった)が流行っている時期だった。このシーンを撮影しながらドンソク兄さんもキジを持ったままずっと演じていたが、時間が経つにつれてどんどん異臭が漂い始めた。「兄さん、キジ何とかしてよ」と冗談を言ったりして、兄さんも消臭スプレーや脱臭剤を使っていたが、数時間が経つと兄さんが体を掻き始めた。

そこで、マ・ドンソク兄さんの服を見てみると、なんと、服にダニがものすごくたくさんついていた。チョ・ジヌン兄さんも体を掻いていた。キジのせいだと思い、解剖してみると、中にはウジや様々な虫がいた。みんなとても驚いた。チュソルに入るその義賊チームは、保健所に行って消毒したり注射を打ったり、大騒ぎしていたことが記憶に残っている。

記者 : チョ・ギョンイ、写真 : イ・ジョンミン