「殺されたミンジュ」マ・ドンソク“キム・ギドク監督が好きな理由?簡単には説明できません”

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1人8役の影のリーダーマ・ドンソク「アドリブ無しで100%セリフ通りです」

謎の死を遂げた女子高生オ・ミンジュを殺害した犯人を追う影たち。映画「殺されたミンジュ」の設定はシンプルだ。名を明かさない影たちが容疑者を一人一人捕まえている中、彼らのリーダー(マ・ドンソク)もまた、別の暴力の狂気に囚われ、影たちを困惑させる。

俳優マ・ドンソクは今回の作品で8種類の服を着替えた。これまで連続殺人犯、コミカルな元ヤクザなど、ユニークで強烈なキャラクターを演じて知名度を上げてきた彼だが、「殺されたミンジュ」では8つの職業を演じた。それぞれの容疑者を捕まえる度に影の集団は空挺部隊、ヤクザ、警察特殊部隊、米特殊部隊、保安司令部、国家情報院、清掃作業員などに変装した。本当の権力を捕まえるための偽装権力の登場である。

8つの職業を演じるとなると混乱しそうであるが、マ・ドンソクは黙々とキム・ギドク監督が考えるキャラクターを全身で受け入れた。

「今回の映画は自分の考えるレベルで役を規定せず、なるべく開けておこうと努めました。キム・ギドク監督は役に合っていなかったり関係のないセリフを入れたりするので、それが(状況と)合わないと思う時もよくありました。僕は普段から『セリフを変えましょう』とアイディアを積極的に出す方ですが、今回は“とりあえず一度演じてみよう”と心がけました。それでこそ監督の映画になるからです。だから『殺されたミンジュ』はアドリブ無しで100%セリフ通りです」


キム・ギドク監督が好きな理由?「簡単には説明できません」

これに先立ち、マ・ドンソクは記者懇談会で「『殺されたミンジュ』に出演した理由は、キム・ギドク監督の映画だったから」と明かした。偶然試写会場で会ったマ・ドンソクに「休んでいるのなら次の作品に出演しないか?」と直接彼に提案したというキム・ギドク監督。マ・ドンソクはそんな監督の話をする時、「僕は監督のファンだ」と強調する。「群盗:民乱の時代」「尚衣院(仮題)」などの撮影や、これから撮影しなければならない作品が立て込んでいる中で「殺されたミンジュ」への出演を快諾した理由は、彼を尊敬する気持ちが強かったためだ。

「監督のことが好きな理由は?と聞かれても、何とも表現しようがありません。自分の彼女のことが好きな理由について『手が綺麗だから』『腕が長いから』とだけ答えることはできませんよね。1人の人間のことが好きなのと同じように、監督のユニークな感じが好きです。映画的な文法も独特で、本当に芸術家としての姿を持っていると思います」

だからと言って、映画で演じる役について全く考えないわけではない。“キャラクターとシナリオ”がマ・ドンソクの心を動かす一つの鍵でもあるからだ。マ・ドンソクは「作品のジャンルや規模よりも、シナリオに惹かれる何かがあれば深く考えず、すぐ出演を決める」と話し「今回の影のリーダーも心にしっくり来る何かを感じた」と強調した。

「影のリーダーは私たちの視点から見ると一種の革命家であり、テロリストでもあります。権力の無分別な暴力を罰するために、彼もまた歪んだ方法で容疑者に暴力を振るうからです。『殺されたミンジュ』に登場する全ての人物は、加害者でもありますが被害者でもあります。日常で抑圧された部分を暴力で解消する影たちも同じです。ある意味ファンタジーのような人物設定ですが、心に響きました。シナリオに隠された意味もたくさんあったので勉強になる作品でした」

キャラクターに込められた意味は深かったが、実際の撮影はわずか10日で終わった。展開が速かったことから、俳優たちは感情の流れや演技のトーンを乱されるリスクも甘んじて受け入れるしかなかった。マ・ドンソクもまた、キム・ギドク監督との仕事を「100メートル走を走る感じ」と表現した。

「実際に監督の作品に置いて、演技のトーンを語ることはできないと思います。まず、監督の作品に登場する言葉が日常会話とは違うからです。特に、今回の作品は影たちが作品の中で複数の職業を演じるじゃないですか。容疑者に暴力を振るいながら怒鳴りますが、観客にはまた別の表現を見せる必要がありました。

僕は今まで現実的なパターンの演技を好んでいましたが、今回はそれに合わせて演じなければなりませんでした。演技に見えないように演じながら、影のリーダーが持つ悲しみや怒りも伝えることを念頭に置いて撮影しました」


「俳優である前に映画人、バラエティへの出演はまだ考えていない」

休む暇もなく持続的に観客の前に姿を見せる俳優マ・ドンソク。しかし、テレビでは中々彼の姿を見ることが出来ない。たくさんの俳優たちが映画の公開にあたりバラエティ番組に登場するが、マ・ドンソクだけは例外だった。マ・ドンソクは「出演しても、特に話すことがない」とさらっと言った。

商業映画でも、低予算や独立映画でも区別せず、作品さえ良ければ出演するマ・ドンソクは、それだけ映画に対する情熱が大きい。アメリカで体育及びトレーニングを勉強しながら格闘技選手たちのトレーナーとして活動し、2002年に韓国に来てからは映画だけに集中した。マ・ドンソクは「俳優として仕事を始めましたが、映画そのものが目的でした」と明かした。

「以前、SBS『ジャングルの法則』から出演オファーを受けたことがありました。でも僕にとっては映画の仕事自体がジャングルです。仕事をする中でストレスを受けたりもしますが、捨てるものは捨てて行かなければなりません。映画に携わっている方ならお分かりになると思いますが、本当に何一つ簡単なことがありません。一つのシーンを撮る時も、たくさんの人の努力が必要です。

人は僕に映画を続ける原動力について尋ねますが、好きだからしているのです。あえて理由を言うのであれば、家族のためかもしれませんし、他の人が何かを大切に思うことと同じように、僕も映画を大切にしながら仕事をしています。ますますシナリオが面白くなり、良い作品が出てくるので、僕も切実に出演したいと思います。企画もやってみたいですし、もっと面白い作品にも挑戦したいです」

記者 : イ・ジョンミン、イ・ソンピル