「さまよう刃」ソ・ジュニョン“いつになったら売れるのか、10年間聞かれたけれど…”

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ストレート。この男を説明するのに、これより適切な言葉はない。気さくに見える顔の内側には熱い心臓が跳ねている。嫌いなものはどうしても嫌いで、好きなものはどうしても好き。不義を見て見過ごすことは決してない。公人、芸能人は彼にとってもう一つの修飾語に過ぎない。話したいことは話さないと気がすまない。ある人は子どもっぽい行動だと叱るが、それでいいのだ。俳優ソ・ジュニョン(27)はそんな男だから。

犯罪スリラー映画「さまよう刃」(監督:イ・ジョンホ、制作:エコフィルム)でオクグァン(イ・ソンミン)の直属の後輩で、新米刑事ヒョンスを演じたソ・ジュニョン。娘を亡くして殺人者になってしまった父サンヒョン(チョン・ジェヨン)とそんな彼を捕まえなければならない刑事。ジレンマの中心に立っている若いキャラクターだ。サンヒョンとオクグァンの物語として流れていくが、少し観点を変えると若いヒョンスが成長する物語にもなりうる。普通の刑事ヒョンスになるか、少なくとも不義に向かって戦う義理堅い刑事ヒョンスになるかは、観客の想像に任せる。

2004年MBCドラマ「悲しき恋歌」のミュージックビデオでクォン・サンウの子役としてデビューしたソ・ジュニョンは、いつの間にか芸暦10年目の中堅俳優になった。まだ初々しさがこんなにも感じられるのに10年目だなんて、歳月は早いものだ。

大衆に顔を知らせたのはKBS 2TV「四捨五入(パンオリム)3」だ。その後、「魔王」「大王世宗(テワンセジョン)」「笑ってお母さん」などでお茶の間で活躍した。そして2011年SBSドラマ「根の深い木~世宗(セジョン)大王の誓い~」では広平(グァンピョン)大君として大きな存在感を放った。その後、KBS 1TV毎日ドラマ(月~金曜日に放送去れるドラマ)「あなただけよ」のキ・ウンチャンとしてお母さんたちからの愛を独り占めしたりもした。

だからと言って、ドラマでだけで活躍したわけではない。2011年、韓国映画界にセンセーションを巻き起こした「Bleak Night(原題:番人)」(監督:ユン・ソンヒョン)に出演し、イ・ジェフン、パク・ジョンミン、イ・チョヒと共に映画界の新星へと跳躍した。

不思議なことに主演、助演から端役までかまわない。普通は助演からはじめ主演を演じ、ずっとそれを続けていくが、ソ・ジュニョンは定石(?)に従わない。主演として活躍しても小さな役でサプライズ登場したりもする。その考え、分かりそうで分からない。

「主演が何で、助演は何ですか?ただ時間の問題です。どれぐらい画面に長く映るのか。結局その違いです。役割の出演分量の何が重要ですか。僕がどれだけこの映画に上手く溶け込むことができるのか、僕にはそれがもっと大事です。気付いてもらえなくたってかまいません。僕が作品に出演したというその事実は変わらないじゃないですか。すべて自己満足です」

はきはきとして率直なソ・ジュニョンは、分量について「まったく気にしない」と断言する。大体の場合は欲張る年頃だが、真理が分かる最近まれに見る青年だ。吐き出すようなきつい言葉も彼が話すと憎くない。正道が分かる俳優、彼の存在が嬉しい。

「僕はピンク映画以外は全部やります。まあ、19禁ラブストーリーもしないというわけではありません(笑) 言葉の通り刺激的な映画があるじゃないですか。今、僕と同年代の俳優が多いじゃないですか、スターになった…。あれこれいい作品がたくさん入ってくるでしょう?その中には本当に素晴らしい低予算映画も入っているでしょうけれど、色々な問題があるので、できないと思います。やりたくても所属事務所が止めるケースもありますから。僕にはそんなことがありません。ハハ。やりたい作品の出演オファーが入れば、何が何でもやるし、やりたいです。周りから『作品を選びなさい』と言われますが、理解できません。僕がやりたい作品なのに、その作品の値段を考えないといけないなんて、ありえない話です」

ソ・ジュニョンには今でも「Bleak Night」のドンユンを求める人が多いそうだ。もう4年前の話だ。その間さらに男らしくなり、演技も変わったが、今でもドンユンを求めているそうだ。だからと言って、決してドンユンに戻るつもりはないという彼だ。「Bleak Night」のドンユンを求める監督がいたら、まずはオーディションからしてくださいと叫ぶそうだ。その過程で数回断られた経験もあるそうだ。それでも彼は自分のポリシーを変えるつもりがまったくない。その精神がソ・ジュニョンが考える正道だ。

「僕も人間で、俳優なので当然注目を浴びたいです。代わりに方法が違うと思います。断言するに、売れるために演技をしたわけではなありません。もう少し正直になると『四捨五入3』以降からはそんな考えをすべて消しました。その前までは若くて、演技が何かも知りませんでしたから。ストレスを受けたりもしましたが、今はまったく。スターになるというのはどういうことですか?キム・スヒョンになることですか?もしかしたら、これらすべてが画一化した合理化じゃないですか?売れるというのは“人々が僕だけを見ないと”ではありません。大衆には僕より作品をもっと見て欲しいです。作品だけで20本以上ですが、まだ“新星”だそうです(笑) 皆僕に10年間『あなた、いつ売れるの?』と聞きますが、そんな方々に聞き返したいです。“売れないといけませんか?”。今、演技力で認められた先輩たちを見るとみんなそうじゃないですか。結局作品で認められます。僕がスターになる日は、そんな日ではないでしょうか?」

記者 : チョ・ジヨン、写真 : チョ・ソンジン