Vol.2 ― 「結婚前夜」2PM テギョンからチュ・ジフンまで、ホン・ジヨン監督が明かす9人の俳優の素顔

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映画「結婚前夜」(監督:ホン・ジヨン、制作:SOOFILM)を見ている間、ずっと一つの思いが頭の中に浮かんでいた。「この俳優たちはなぜ今頃になってこんなキャラクターに出会えたんだろう?!」「結婚前夜」は人々には知られていなかった9人の俳優の新しい顔が見れるというだけでも十分に価値がある。

俳優の新しい顔を発見すると同時に、それぞれ異なる色の物語を118分という上映時間に盛り込み、割合の分配にまで気を遣ったはずのホン・ジヨン監督(42歳)の努力を考えてみてほしい。ホン・ジヨン監督は9人の魅力をスクリーンに美味しく盛りつけるためにシナリオの段階から徹底して計算をした。撮影、編集、仕上げ作業で小細工をしようとは最初から思っていなかった。一本の映画の中でそれぞれのキャラクターをどうやって有機的に配置し、リズミカルな化学反応を起こすか悩み抜いた。

ホン・ジヨン監督本人は「運が良かった」と話すが、深く配慮に富んだ観察力でなければ不可能なことだ。「結婚前夜」はオムニバスというジャンルの中で俳優たちのアンサンブルをほぼ完璧に導いた良い例である。

「誰も引き出さなかったものを、私が引き出しました。その俳優が本来持っているものですが、誰も発見しようとしなかった顔を。なので運が良かったと言っているんです。幸運の主人公が私になったとも言えましょうか。私一人だったらきっとできなかった作業です。俳優とお互いに心を開き、信頼を築いたので可能だった映画です」

ホン・ジヨン監督は9人の俳優からどのような顔を引き出したかったのか、落ち着いた口調で話を聞かせてくれた。形式的な褒め言葉ではなく、心から俳優を大事に思う監督の愛情がインタビュー中ずっと溢れて出ていた。ホン・ジヨン監督と撮影することのできた「結婚前夜」の9人の俳優たちが羨ましくなるほどだった。


“飛べるほど軽い”キム・ガンウ&“台詞の暗記クイーン”キム・ヒョジン

12年前に別れてから再会し、結婚を控えているカップルのテギュ(キム・ガンウ)とジュヨン(キム・ヒョジン)。結婚を約束し、ときめく毎日を過ごしているが、テギュが浮かれた気持ちで訪れた区役所でジュヨンの隠されていた過去を知り、二人の前には悪夢のような現実が展開される。

「僕の過去は大丈夫だけど、君の過去はダメだ!」と納得できない台詞を図々しく発するキム・ガンウは、これまで見せてこなかった隙だらけの一面で演技を見る楽しさを倍増させる。なぜもっと早くこのようなキャラクターに出会えなかったのかと思うほど、スクリーンの中のキム・ガンウは自然体そのものだった。

「これまでキム・ガンウを見ながら、『なぜあの俳優に何度もああゆう演技をさせるんだろう?』と思っていました。これまでは真剣な役が多かったですね。今回は限りなく軽いキャラクターを任せてみたいと思いました。本人も変身を求めていましたし。キム・ガンウは鼻のせいで実物と比べると画面で損をする方です。そこで、眼鏡をかけました。『さあ、飛べるほど軽い演技をやってみましょう』という心構えでした」


ホン・ジヨン監督はキム・ヒョジンについて“台詞の暗記クイーン”と絶賛した。実際「結婚前夜」でキム・ヒョジンは台詞を自由自在に操り、驚くほどの演技力を披露した。常にゴージャスでセクシーな役だけを演じてきたキム・ヒョジンが、今回は泌尿器科の医師ジュヨン役を務め、ヒステリックな姿で早口の台詞を完璧に演じきって抜群の演技力を誇った。

「キム・ヒョジンもなぜこんな風に作品の中で消費されるんだろうと思う、残念な瞬間がありました。『終わりと始まり』で一緒だったミン・ギュドン監督(ミン・ギュドン監督とホン・ジヨン監督は夫婦である)がキム・ヒョジンをたくさん褒めていました。キム・ヒョジンは台詞の暗記クイーンです。劇中でキム・ガンウとレストランで早口なのにあれだけの量の台詞を発しながら口喧嘩をするシーンは、本当に容易い演技ではありません。台詞が口にすでに馴染んでいるからこそ可能な演技ですが、キム・ヒョジンとキム・ガンウはそれを一発で決めました」

“大人の女性”イ・ヨニ&“スポンジ”2PMのテギョン、そしてチュ・ジフン

「結婚前夜」の最年少カップルソミ(イ・ヨニ)とウォンチョル(テギョン)、そして二人の仲を揺るがす男ギョンス(チュ・ジフン)。交際7年目のカップルであるソミとウォンチョルは結婚を控え、ときめきと安定感の間で悩むことになる。「私たち、結婚したら何を頼りに生きるの?」というソミの質問に「仲間意識で生きるよ」と答えるウォンチョルの乾いた言葉は、長い恋愛による倦怠感に悩む観客なら膝を打ち、共感するだろう。

特にイ・ヨニは今回の作品を通じて女優として一段と成長したと言っても過言ではない。愛の前で動揺し、崩れ、一瞬にして他の男に惹かれる女性の複雑な心理を丸ごと表現し、ただ綺麗なだけのイ・ヨニではなく、愛の浮き沈みを表現するイ・ヨニとして観客と対面する。

「イ・ヨニからは少女ではなく、大人の女性の姿を引き出したいと思いました。テギョンとのラブシーンの撮影の前に、イ・ヨニがとても心配していました。とてもたくさんのことを話し合い、説得した結果、結局心を開いて撮影することになりました。二人の男性の間で迷う複雑な気持ちが、ラブシーンでも繊細に表現されるように望みました。私は露出の多いラブシーンは嫌なんです。イ・ヨニが私のことを信じ、私もイ・ヨニを信じたのでシーンも思い通りにとても愛らしく出来上がりました」

テギョンはスクリーンデビュー作とは信じがたいほど安定した演技でソミとギョンスの間で揺れることなく中心を保ってくれた。若くして出世したスターシェフのウォンチョルは、アイドルから韓流スターへ、また俳優へと成長した彼の姿と似ていた。ウォンチョルは7年間愛した女性の心が揺れる姿を見守るしかないウォンチョルの繊細な感情の変化も逃すことなく表現してくれた。

「テギョンはとても前向きで礼儀正しい子です。今後が楽しみですね。アイドルのスケジュールというのは私たちが思う以上にハードなんですね。私はテギョンのスケジュール表を見て本当に驚きました。そこまで忙しい中で、初めての映画でこれほどの演技をしたというのはすごいと思います。テギョンは私が何かを説明すると、その意図を正確に把握してスポンジのように吸収します。理解の早さが人並外れた子です。本人の足りない部分もクールに認め、努力をするところも偉いですね」

そんな中、ホン・ジヨン監監督の前作「Kitchen キッチン ~3人のレシピ~」同様、男女主人公の仲に無理やり入ってきて、魔性(?)の魅力を誇るチュ・ジフンの自然な演技もこの映画を見る醍醐味の一つだ。

「チュ・ジフンの普段の姿をスクリーンにそのまま盛り込んでみたいと思いました。わざわざ飾らなくても、そのままでカッコいいでしょう?空港でソミを見送るシーンがありますが、『Kitchen キッチン ~3人のレシピ~』ではチュ・ジフンの涙が流れるまでずっと待っていたんですが今回はすぐに流れました(笑) チュ・ジフンとは『Kitchen キッチン ~3人のレシピ~』を一緒に撮ったからか、より気楽に気が合うところがありました」


“スマートな俳優”マ・ドンソク&クジャルのアンサンブル

正直、マ・ドンソクがラブコメディまでできるとは夢にも思っていなかった。筋肉質のボディラインに華やかな花柄のシャツを着てウズベキスタン出身の美人新婦ビカ(クジャル)の名前を叫ぶ彼の姿は愛らしさを超えて、キュートにまで思えてくる。

今回の作品で結婚の時期を逃した純粋な花屋の青年ゴノに扮したマ・ドンソクは、デビュー以来初めて本格的なラブコメディに挑戦し、また新たな素晴らしい代表作を完成させた。結婚を一週間後に控え、男としては致命的な異常兆候に気付いて悩む彼の姿は、観客が切実(?)にゴノ&ビカカップルを応援するようにする。

「マ・ドンソクは頭が本当に良い人です。私たちは彼から少し間抜けなヤクザなどを想像しますが、私はキュートなところを引き出したかったです。マ・ドンソクは私と同い年ですが、私は彼のことを可愛く思います(笑) なので、衣装も華やかなパターンのシャツやサスペンダーを使いました。クジャルも本当にスマートな女優です。実は彼女は映画とは違って韓国語がとても上手です。上手なのに、下手なふりをする演技ってもっと難しいんですよ。情熱に溢れていて、習得力も驚くほど早かったです」


“魅力的な”コ・ジュニ&“才能の多い”イ・ヒジュン

もしかしたらデボク(イ・ヒジュン)とイラ(コ・ジュニ)カップルの物語は、「結婚前夜」で最も現実的なエピソードかもしれない。クラブで出会って過ごした一夜で子供ができて、結婚に至った二人。新婚旅行、嫁入り支度、司式、宗教など何一つ合うところはない。

デボク&イラカップルは愛する時の溢れる活力と結婚に直面した時に経験する対立の落差がどのカップルよりも大きい。なのでさらに苦く、残像も長く残る。イ・ヒジュンとコ・ジュニはコミカルなシーンでも、ロマンスや対立でもその中の愛の浮き沈みを余裕のある演技で表現している。

「コ・ジュニは普段から自分が持つキャラクターをたくさん持ってきました。ウェディングプランナーなので、都会的でありながらも堅実な女の子、それでいて心は弱いキャラクターですね。コ・ジュニが魅力的によく演じてくれました。イ・ヒジュンは本当に熱心な俳優です。イ・ヒジュンと一緒に話し合ったのは、ヘアスタイルでした。パーマをかけたら、イ・ヒジュンの頭がもっと大きく見えるんですよ。イ・ヒジュンとコ・ジュニをワンショットで捉えられる場面がありましたが、遠くにいるイ・ヒジュンの頭がさらに大きくて(笑) 『これはないだろう』と驚いた記憶があります(笑) アドリブが嫌いな監督もいますが、私は今回イ・ヒジュンにアドリブにおいて多くの部分を許容しました。俳優としての才能とエネルギーがとても多い人です」

記者 : キム・スジョン、写真 : キム・ジェチャン、CINUSエンターテインメント