EXO「Growl」が示した新たなヒット戦略“3無政策”とは?

OSEN |

音楽界でEXOブームを分析する動きが活発になっている。

特に、10代ファン層をより強化し増やすと共に20~30代までも魅了したうえ、アルバムと音源という二兎を手にした「Growl」は、新しいボーイズグループのヒットモデルになった。「Growl」はSBS「人気歌謡」とMnet「M COUNTDOWN」で3週連続1位になり、MBC「ショー 音楽中心」とKBS「ミュージックバンク」でも1位を獲得した。この楽曲のおかげで1stアルバムの売上げは70万枚を超え、音楽配信サイトのMelOnではリリースから1ヶ月が経った13日午前現在もTOP5にランクインしている。

一時期、強烈なフック(同じフレーズを繰り返すこと)とカル群舞(体を曲げる角度から指先まで完璧な刃物のように合わせるダンス)を中心に競争してきたボーイズグループだが、今音楽界ではEXOが新たに示したヒット戦略に注目している。いわゆる“3無政策”だ。特定のメロディをわざと繰り返すフックソングを切り捨て、ポイントダンスの代わりにパフォーマンスの全体的な完成度を高め、メンバー個人のバラエティ出演などは控えるという戦略だ。


◆フックがない

「Growl」にはボーイズグループ特有のカリスマ性を強調するシャウト唱法がなく、わざとサビを繰り返すフックソングではないという点で差別化される。

「Growl」にも「僕は唸る」という印象的なフックがあるが、このフックの比重はそれほど大きくない。それよりも全体的に多様なメロディが存在し、メンバーのパート配分による必要のないラップは入れない。

SMプロデュース室のイ・ソンス室長は「全ての楽曲にフックがあるため、フックソングかどうかを区別することは難しい」と前提しながらも「ただ『Growl』はループ(特定リズムの繰り返し)を基本にしながらも、フリーコーラスでクライマックスも従来のパターンに従わず違う伴奏を入れ、歌に変化を与えた。いわゆる“フックソング”と呼ばれる歌とは違い、アーバンR&B(UrbanR&B)ジャンルを反映しメロディが展開しているところなどが異なる」と説明した。

この歌は、似たような歌に飽きつつあった20~30代までも魅了した。イ・ソンス室長は「『Growl』は新しいジャンルの楽曲ではない。しかし、同じパターンが繰り返される伴奏とメロディで“フック”を作る方式ではないため、かえって最近テレビでよく耳にする他の音楽と差別化されたと思う」とし「だから子供の頃にポップやR&Bを聞いていた20~30代のリスナーにもアピールすることができた」と評価した。


◆ポイントダンスがない

特定のメロディを際立たせるためのポイントダンスの代わりに、完成度の高いパフォーマンスを選んだことも目に付く。従来のボーイズグループがステージでメンバーの息の合った動きを強調するのに対し、12人のEXOメンバーはそれぞれ違う動きを披露し、2チームに分かれてからまた12人になるなど、様々な演出を作り出した。

SMパフォーマンスディレクティングチームのタク・ヨンジュンチーム長は、ストーリーテリングに重点を置いたと説明した。彼は「一般的にダンスを構成するときはポイントとなる動き、そして全体的な構成の組み合わせを重要視するが、EXOの場合は上記の要素と共に『ストーリーテリング』が重要だと判断した」と明らかにした。

そのストーリーは「Wolf」と繋がっている。彼は「『Wolf』には、オオカミそのものを表現するダンスもあったが、それよりも恋に落ちた少年の感性を表現しながらも強烈な男らしさを見せようとした。『Growl』は『Wolf』と繋がるストーリーで愛している女性を巡って争う内容をカメラのアングルを活用し、相手を見つめながら対決するストーリーに仕上げようとした」と説明した。

このようなバトルパフォーマンスは、MVに最もよく反映された。カメラは少年たちの対決シーンで実際に起きていることを直接観察しているかのように編集なしで撮影し、そのとき見えたメンバーらの自然な男らしさは男性ファンの挑戦意識まで刺激した。

タク・ヨンジュンチーム長は「女性にはただ可愛い弟のイメージを与えるだけでなく、男らしさが窺えるパフォーマンスと洗練されたスタイルなどが調和し、良い結果が作られたのではないかと思う。男性にとっては、一度は踊ってみたい、或いはカッコいいと思えるパフォーマンスだったのではないかと思う。今回の『Growl』はこのように音楽とパフォーマンスの相乗効果が現れたケースだと見ている」と評価した。


◆メンバーのソロ活動がない

EXOは目立つメンバーを前面に出し、知名度を上げるために活用する一般的な戦略も避けた。それぞれグループごとに華やかなビジュアルやスター性、或いはタレント性を持ったメンバーがいるはずだが、EXOは一人のメンバーを通じて知名度を高めるよりはグループの特色に重点を置いた。

EXOはこの上なく神秘的だった。6月に「Wolf」をリリースする前、韓国での活動になんと1年5ヶ月もの空白期間があった。ファンに忘れられないために、できるだけ頻繁に新曲を出し、バラエティを通じて人間的な魅力をアピールする他のグループとは確かに違った。一部ではSMのこのような戦略の効果に疑問を示したが、結果的には10代ファンの想像力を非常に刺激したと言える。

音楽界は、EXOのファンがアイドルスターを実際に偶像化し、熱狂的なファン層ができたのは東方神起以来初めてだと評価している。イベントに行く度にフェンスが崩れ、あまりにも熱狂的なファンのため、SBS「人気歌謡」はファンの立ち入りを制限するなどの対応を強化せざるを得なかった。音楽界で10年も警備の仕事に携わっているというある関係者は「もちろん最近でも人気グループは多いが、このようなブームと熱狂ぶりは東方神起以来初めて見た」と話した。

これは、神秘主義に距離上の親近感を加えた戦略が功を奏したためだ。グループ結成から“未知の世界から来た新しいスター”“12人のメンバーがそれぞれ超能力を持っている少年”をコンセプトに掲げた彼らは、ファンたちに多少距離感を感じさせる可能性もあったが、今回のアルバム活動の背景を学校にすることで、街中で撮った予告イメージ、制服を連想させるステージ衣装、実際の高校生たちのバトルを暗示するMVなどを披露し、完璧かつ身近にいるグループというポジションを獲得した。

「Wolf」の時まではEXOを強力なライバルとして意識していた他のアイドルグループの企画会社は、もうEXOを“違う段階”だと認識している雰囲気だ。ある中小企画会社の関係者は「習慣的に続けられてきたボーイズグループのヒット戦略を覆したケースと見ている。もちろん、すぐ効果が出てこなくても長期間の戦略が可能なSMの資本力とグローバルネットワークがあってこそ可能な面もあっただろう」と解釈した。

記者 : イ・ヘリン