“特別な女優”キム・へオクの圧倒的な存在感

OhmyStar |

写真=KBS

「いとしのソヨン」「オ・ジャリョンが行く」…仕草一つ一つで演技する、彼女の再発見

最近もっとも目に付くベテラン女優を一人挙げるとしたら、キム・へオクの名前はおそらく必ず登場するだろう。MBC「オ・ジャリョンが行く」とKBS 2TV「いとしのソヨン」で正反対のキャラクターをリアルに表現している彼女の演技は、極めてナチュラルながらも、圧倒的な存在感を誇っている。まさに、女優キム・へオクの再発見といっても過言ではないほどだ。

ただそれだけの女優になるところだった。演技はうまかったが、人々の視線を引きつけることはできなかった。叔母となり、年老いた母になり、そのように歳月の流れに流されるところだった。しかし、キム・へオクは諦めなかった。色んな作品の中で自分のすべての情熱を燃やし、ベテラン女優としてもっとも成功した、美しい姿で自分ならではの“道”を開いた。誰一人の助けもなく、ひたすら自分一人の才能と努力によってだ。

「いとしのソヨン」で胸を打つ内面の演技を繰り広げているキム・へオクは、韓国を代表するベテラン女優として人々の前に凛々しく立っている。いつもキャラクターが与えられると「この女性の幼い頃はどうだっただろうか。この女性の若い時代はどうだっただろうか」ということから考えるというこの女優。顔が崩れるのは怖くなくても、キャラクターが壊れることに対しては羞恥を感じ、恐ろしいと言うこの女優は、綺麗に映りたいという女優本来の欲望を乗り越え、真なる役者としての理想郷を見つけ出した。

どの役柄もこれ以上にないほど演じこなす幅の広い演技と、世の中のすべてのものを飲み込んだような深い眼差しは、それがまるで実際のことかのように人々の心を魅了し、胸を打っている。キム・へオクは、嫁をいじめ、いたずらに結婚を反対する月並みの母のキャラクターにだけとどまることはなかった。彼女はいい歳でロマンスを夢見る女性であり、分別のない泥棒で、息子のために心を痛める母であり、野望に燃える財閥家の奥様だった。色んな作品で自分ならではの確固たる個性を持って演じたのだ。

それでだろうか。キム・へオクは、表情だけで演じる、ありふれた女優ではない。彼女は目と鼻と口と仕草すべてで演技をしている。徹底的かつ的確に、そのうえ非常にナチュラルで余裕ありげに。まるで自分が演じるキャラクターが彼女の存在の一部であるように、キム・へオクの演技は少しの隙も、乱れもなく清潔ですっきりして淡白かつ率直だ。そのためキム・へオクは深い内面の演技者であり、微かな目の震え一つにも戦慄を与えられる、真の役者になりえるのだ。

このように、決して一ヶ所にとどまらない勤勉さと誠実さは、“平凡な彼女”を“非凡な役者”として刻印させた。キム・へオクの演技力は老弱男女世代を問わず、いつでもどこでも強い印象を残し、人々の魂を魅了した。測りきれない情熱と演技力のおかげで彼女はこの時代最大の“ホット”なベテラン女優であり、かつもっとも多様な幅広い演技を披露できる女優となった。

少なくともキム・へオクは、他の女優たちのようにルックスを武器にして人々を幻惑しようともしなかったし、数多くのCMに出演しながら自分の名前を売ることもなかった。キム・へオクを見られるところは、いつもカメラが回り数多くの台詞が飛び交う場所、監督のキューサインとスタッフの汗の匂いのする“ドラマと映画を作るところ”、そこだけだった。そして今も、キム・へオクは涙と汗の匂いに満ちたあの“暮らしの現場”の中で、依然としてリアルな人生を表現する女優として、黙々と自分の道を歩いている。

才能と努力、情熱の黄金比率により女優としては稀に、年をとるほどピークへと走っているキム・へオクに残っている夢は何だろうか。おそらく、絶えず演じる役者として生きること、そしてそのような“伝説的な女優”として記憶されること、それだけではないだろうか。いつでもどこでも最善を尽くす美しさで、女優として生きることがどういうことかを自ら証明しているこの女優こそが、私たちが本当に尊敬すべき、“この時代のマイスター”なのである。

記者 : キム・ソンギュ