YGヤン・ヒョンソク代表「MVは重要なコンテンツ」

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「もはや海外進出のために、こちらからドアを叩く必要はありません。ノックの音が聞こえたらドアを開ければよい時代が来たと思います」――。

韓国の大手芸能事務所、YGエンターテインメントのヤン・ヒョンソク(梁鉉錫)代表は、所属歌手のPSY(サイ)の新曲「江南スタイル」が、一度もプロモーションを行わずにミュージックビデオだけで海外でも反応を得ているのを目の当たりにし、さまざまな思いがあるようだ。

特に米国市場には、SE7EN(セブン)をはじめ多くの歌手たちがノックしたもののドアは開かれなかった。しかしPSYは1本のミュージックビデオで海外から反応があり、「全く予想もできなかったこと」だという。

このように時代が変化したのは、動画投稿サイトYouTubeやソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)など、デジタルメディアの力によるものだということは誰もが知っている事実だが、こうした環境の中でヤン代表が最も神経を使ったのがミュージックビデオだった。

ヤン代表は「過去に、世界のマイケル・ジャクソンファンはミュージックビデオを見ながらダンスを真似たり、感動したりしました。今の時代、ミュージックビデオは世界の人々とコミュニケーションを取る重要な広報コンテンツです。一つの芸術作品としてアプローチしてこそ音楽は輝くことができるのです」と強調する。

世界に披露するミュージックビデオの制作に注力

こうした考えから、ヤン代表はBIGBANG(ビッグバン)や2NE1(トゥエニィワン)ら所属アーティストのテレビ番組への出演を減らす代わりに、ミュージックビデオの制作に巨額を投じた。その背景にはヤン代表のこだわりがあった。

「今はテレビが発する情報を受け入れるよりも個人が情報を選択する、開かれた時代だ」と語るヤン代表は、所属アーティストらの曲がテレビの音楽番組で3週連続1位を記録することよりも、人々が選択するネット上の音楽配信チャートで10日間1位となり、ミュージックビデオの再生回数が多い方がうれしいのだという。

多くのプロデューサーがアーティストのミュージックビデオに力を入れるよりも番組出演を重視するが、ヤン代表は正反対の戦略を展開した。おかげで韓国内外で所属アーティストに関するコンテンツが信頼を得るようになり、手応えも感じている。

その結果、YouTubeが先月発表した集計によると、上半期(1~6月)に韓国内外のユーザーが最も多く見たK-POPの動画ランキングで、BIGBANGの「FANTASTIC BABY」が1位、「BLUE」が2位、「BAD BOY」が4位、「MONSTER」が6位と、10位内に4曲のミュージックビデオが入った。

さらに2NE1の「I AM THE BEST」のミュージックビデオは、14日現在、YouTubeでの再生回数が5000万回に迫っている状況だ。

PSYの「江南スタイル」のミュージックビデオも人気が高い。ジャスティン・ビーバーを育てたマネジャー、スクーター・ブラウンが短文投稿サイトTwitterに「どうして私はこの男と契約をしなかったのか(How did I not sign this guy!)」とつづり、T-Painやロビー・ウィリアムズら海外のポップスターが同ビデオについて言及するなど、SNSで広まり、YouTubeでの再生回数は2700万回を突破した。

ヤン代表は「江南スタイル」のミュージックビデオについて、「コミカルな映像、シャッフルダンスブームを起こしたLMFAOの曲のような楽しい音楽、中毒性のあるダンス、PSYという独特のキャラクターが調和し、海外でも好評を得ています」と説明した。

ミュージックビデオ事前審議制度には疑問

一方、韓国で18日から施行される映像物等級委員会によるミュージックビデオの事前等級審議制度については「旧時代的な発想だ」との見方を示した。

ヤン代表は「K-POPが海外でブームとなった理由のうちの一つが、質の高いミュージックビデオです。地上波放送の審議を強化するというのなら納得できます。しかし、これまでにミュージックビデオのせいで模倣犯が出るなどの社会的問題が発生したこともない。たとえ問題があるミュージックビデオがあるとしても0.01%にも満たず、残り大多数は不要な状況に置かれることになるでしょう」と語った。

また、ミュージックビデオは世界のファンが見る映像だが、同制度は韓国内の基準を適用して審議しようとしていると指摘した。ドラマや映画よりも数が多い音楽関連のコンテンツは審議にも時間がかかり、曲の発表を計画通りに進めるのも難しくなるとした上で、「この制度は代表選手をサッカーの試合に出場させておきながら、片方の足を不自由にしてプレーしろと言っているようなものです」と語気を強めた。

記者 : 聯合ニュース