「屋根部屋のプリンス」イ・テソン“ユチョンとは撮影初日から親しくなりました”

OSEN |

2005年、映画「親知らず」でその存在を広めた新人俳優が、2012年には感情の極限を見せる悪役演技まで完全にこなす“本物の俳優”に成長した。「メンブン(メンタル崩壊)・テム」「ヘク(核)・テム」「トン・テム(トンテ(干しスケトウダラ)+テム)」「フッ(黒)・テム」など数多くのニックネームを生み出すことで大きな人気を得たSBSドラマ「屋根部屋のプリンス」の悪者、ヨン・テム役のイ・テソンのことだ。

劇中でヨン・テムは、イ・ガク(JYJ ユチョン)とパク・ハ(ハン・ジミン)カップルを絶えず窮地に追い込む悪者だったが、同時に何をしてもうまくいかない、可哀想な悪役でもあった。悪役が悪行を働き、それが成功した時に憎まれるものだが、失敗するばかりだったヨン・テムは、そのおかげで視聴者の同情票を得て高い人気を得た。

「テムが様々なニックネームで呼ばれ、また合成写真も沢山作られたことで、個人的には話題になって良かったのですが、ドラマの流れには邪魔になりかねないと思いました。人物が戯画化される可能性もあると思い、ドラマの中盤から後半にかけて、自分のTwitterにそのようなパロディー写真を作ることは慎んでほしいという内容を掲載しました。そしたら、ファンの方々も理解してくれ、感謝しました」

イ・テソンは、ドラマの後半になるほどひどくなるテムの悪行を演じながら、心を無にしたと話した。理解できない部分もあったが、それを克服することも俳優の仕事だと思ったためだ。ドラマ全般に渡って事件のカギを握っていたのはヨン・テムだったため、彼はドラマが進行されるほどテムがどこまで墜落するかをすでに知っていたし、理由のない悪役は作らないと言った監督を信じて、信念を持って演じたと話した。

「テムが悪行を働いてこそ、イ・ガクとパク・ハカップルがより際立つことになると思いました。俳優が非難されることが嫌で説得力を持って役を演じず、ドラマの完成度が低くなればそれは駄目だと思いました」

イ・テソンは、ユチョンに比べ相対的に注目されない悪役を選んだ理由を率直に語った。一部では、イ・テソンがヨン・テム役で「屋根部屋のプリンス」に合流することに疑問を持つ人もいた。イ・テソンは前作のMBC週末ドラマ「愛情万々歳~ブラボー!マイ・ラブ~」で主人公として演じたため、主人公でもない“悪役”を受け入れた彼により大きい関心が集まった。

「主人公には、いろいろな意味があると思います。主人公の表面的な意味は、タイトルロールとポスターの初めに名前が入る人のことでしょう。前作では僕がいわゆる“主人公”でしたが、今回は違いました。キャスティングの時からユチョンがメインになるドラマであることを知っていました。主人公の視点で書かれたドラマで、ユチョンに注目が集まるのは当然のことです。今回のドラマの主人公は、イ・ガクとパク・ハカップルだったし、僕は自分の役に最善を尽くせば良いと思いました。僕は基本的に“主人公でなければやらない”という考えはしません。もしそのような気持ちがあったとしたら、『屋根部屋のプリンス』には、出演する理由がなかったでしょう」

すでに主演としてキャリアを積んだ彼が主人公でないにもかかわらず、「屋根部屋のプリンス」に出演した理由は何なのか気になった。

「初めてキャスティングのオファーを受けた時は、出演しないつもりでした。当時は『愛情万々歳』で得た“良い人”のイメージを維持していくことが重要だと思いました。しかし、同時に演技に対する自分なりの欲がありました。週末ドラマ、それも長編ドラマである人物を演じた時のストレスがありました。平凡な人物を決められたパターンで演じなければならないことから感じられる、役者としての葛藤のようなものでした。その時テムに出会ったし、内面の感情を強く表現するテム役が気に入りました」

「屋根部屋のプリンス」の人気は、“水木ドラマ戦争”とまで呼ばれた大作との競争を勝ち抜いて収めた成果だったため、より光を放った。ライバルだったKBS 2TV「赤道の男」とMBC「The King 2hearts」の攻勢は激しく、「屋根部屋のプリンス」は放送中盤に視聴率が低迷するかのように思えたが、最終話では視聴率1位を記録し、有終の美を飾った。

「視聴率にはあまりこだわりませんでした。初めから激しい三つ巴を予想していたし、手ごわい相手だったから。最終話で視聴率1位になった時は、本当に気分が良かったです。もともと最後に勝利した喜びが大きいですね。カウントダウンで負けても判定勝ちになった気持ちと言えるでしょうか。大逆転したようで本当に嬉しかったです。最終回の放送前週に『赤道の男』が放送事故を起こしましたよね。その時(1位を)少し予感しました。視聴者の方々は冷静で、失敗を容認しないから(笑)」

「屋根部屋のプリンス」の成功の秘訣として、強いチームワークが挙げられる。出演した役者たちは、Twitterで撮影会場を公開したり、互いに親密なコメントを掲載するなど和気藹々とした現場の雰囲気を伝え、彼らのTwitterの内容は連日話題になった。その中でもイ・テソンとユチョンの友情は断然目立った。

「ユチョンとは、撮影初日から親しくなりました。俳優同士が出会うと、互いにミスをしないように注意し、礼儀正しくなろうと壁のようなものができるんですが、ユチョンと初めて撮影した時は、そういった状況ではありませんでした。初日にヨットシーンを撮りましたが、環境条件が壁を崩すしかないきっかけを作ってくれました。あまりにも寒くて大変だったんです。二日間二人きりで船で撮影したから、互いに配慮するしかない状況でした。口が凍るから互いにカイロを当ててあげたり、船が揺れると掴んでくれたり(笑) 俳優同士で初めて台詞をやりとりすると感じられる感情というものがあるけど、ユチョンは熱心にやっていると感じました。自分の分量だけ演じる俳優もいるけど、ユチョンは僕が単独でバストショットを撮る時も、相手役を全て演じてくれました」

ユチョンは「屋根部屋のプリンス」の撮影序盤に父を泣くし、皆が悲しみを感じた。これでユチョンが「屋根部屋のプリンス」の撮影に合流できないのではないかという憂慮もあった。大事件を経験しただけに、ユチョンが精神的にも相当なショックを受けたはずだったためだ。だが、彼は葬式が終わってからすぐに撮影に復帰するプロらしい姿を見せ、皆を驚かせた。

「みんな口には出さなかったけど、ユチョンの顔色を伺っていました。顔はすでに憔悴しきってたし、南米公演から戻ってきた直後で体力的にもしんどそうでした。そのような状況で彼に“大丈夫か”と聞くのは意味がないと思いました。本人は感情を外に出さないよう熱心にやっているのに。僕は時間が必要だと思いました。それでユチョンにこのように話しました。『今このように忙しいから(悪いことも)胸に収めておくことができるのではないか』ある状況に置かれた時、肯定論と否定論があるけど、僕は肯定的な方に導いて行くのが良いと思いました」

これまでほとんど年上の俳優や大先輩と演技してきたイ・テソンにとって、「屋根部屋のプリンス」で共演した俳優との縁は特別なものだった。同世代の俳優や年下の俳優らと共演することが少なかっためだ。イ・テソンは、ドラマで共演したユチョン、ハン・ジミン、チョン・ユミを“僕ら4人組”と表現し、愛情を示した。

「ユチョンはこれまで3作品に出演した新人だけど、演技をしてきた時間や経験を考えずに見た時、作品に臨む姿勢がとても誠実で役に対する責任感が強い人です。ユミさんとは最近も時々メールをしてるけど、お互い本名で呼ばないんです。ドラマでの役名が自然なので(笑) 4~5ヶ月の間ドラマのキャラに没頭して、“僕たちが散々非難されてこそドラマが人気を得るわけだ”と言いながら互いに慰め合ってました」

「ハン・ジミンさんは、今ちょっと怒っています。ユチョンがこの前のインタビューで、ハン・ジミンさんは気さくな隣の姉さんみたいだと言ったんですが、ジミンさんがそれを見て朝からメールを送ってきました。ユチョンがそうやって話すから結婚もできなさそうだと(笑) ジミンさんがパク・ハのキャラクターに没頭して、いつでもパク・ハのような身なりと語り口調なので、僕らは気さくで生活力のある女優だと思ったわけです。それほどハン・ジミンさんの演技が上手かったんですよ。だけど、女優だからなのか、少し臆病になっていました。僕が収拾すると言ったら、記者懇談会を行わない限り収拾がつかないだろうと言って、未だに少し根に持っています(笑)」

インタビューの最中、ひたすら明るくて肯定的なエネルギーに溢れた彼だったが、恋愛話になると少し変わった。彼は、恋愛に対する考えもそのまま明かすクールな男だったが、真剣ながらも率直な彼の答えからは、誰かに会ってまた別れながら経験した大小の傷がそのままにじみ出ていた。彼は、自身の職業を配慮してもらわないといけない立場であるだけに、相手をいつも先に気遣って努力するタイプだと言いながらも、恋愛話になると息苦しくなると話した。28才の血気旺盛な青年は、なぜ恋愛には否定的になったのだろうか。

「恋愛の話になると息が詰まる感じです。恋愛というものは、一緒に色々な思い出を共有し、自由でなければならないけど、役者の恋愛は注目されるし、話題になるからお互いに気を使うようになります。実際に僕の周りの芸能人は自動車や密閉された場所で恋愛するし、僕も恋愛を頭に浮かべると、それを考えること自体が息苦しい感じがします」

彼は、二人きりでやりたいことがどれだけあるのだろうかと話しながら、芸能人が公開恋愛をして自由にショッピングやデートをすることはある程度理解できると言った。だが、公開恋愛をする意向があるのかという質問には首を横に振った。

「公開恋愛は、お互いとっても良くないと思います。女性側のダメージがあまりにも大きいからです。別れても常に言われます。それをマーケティングに利用する人もいるし。相手が一般人だったら傷はもっと広がるようです。結婚まで行くなら公開恋愛をするだろうけど、人のことはどうなるかよく分からないですからね」

彼がこのような意見を語るのも無理はなかった。彼は、来年軍隊に入隊する準備をしているためだ。「恋愛に疲れているように見える、当分恋愛する気持ちはないのか」と尋ねると、入隊を控えた自身の状況を悲観するかのような、面白い返事が返ってきた。

「僕は、理性的で現実的な人です。本当にクールに聞きたいです。『僕、来年軍隊に行くけど、軍隊に行く時までなら付き合う?』と(笑) 本当に運命のパートナーが現れて除隊まで待ってくれて、その後1~2年間付き合って結婚まで進む可能性はほとんどないでしょう。入隊する前まで付きあおうとも言えない状況だし、何も計算しないで付き合うこともできないし…こういうことを考える自体が疲れるんです」

人気絶頂の俳優が入隊を控えて不安を感じる事もあるだろうが、28才の俳優イ・テソンはすでに男性俳優の全盛期と呼ばれる30代を見据えていた。今の20代をどのように送るのかが、30代をどのように迎えるのかに直結するため、軍隊での経験を立派な俳優になるための訓練だと思うことにした。

「義理を守ってくれれば僕は絶対裏切りません。軍隊に行っても毎日応援してほしいということでなく、僕が新しい作品に出演する時、“あ、『屋根部屋のプリンス』のイ・テソンだな”と記憶に残ってくれれば、この作品は無駄にはならないと思います。最近、僕の前作でもある『親知らず』と『9回裏2アウト』の話をたくさん聞かれます。それが記憶に残ったという意味ですけど、今その時の話を聞くと本当に嬉しいです。後になって『屋根部屋のプリンス』の作品も、そのように聞かれることがあればいいなと思います」

記者 : キム・ナヨン