「屋根部屋のプリンス」の成功を支えた<悪の美男&美女>カップルに注目!

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ドラマ「屋根部屋のプリンス」のココが面白い! 鑑賞コラムVol.3

「悪役が光る作品は成功する」とよく言われる。悪役が欲まみれで心根が腐っていればいるほど、主人公たちの公平性や誠実性がより際立って見えるし、悪役が主人公たちを苦しめ試練を与えれば与えるほど、視聴者は主人公の“同志”のような気持ちで一緒に悪役に立ち向かおうと主人公に入れ込むようになる。視聴者が悪役の悪事に本気でムカつき、悪役を演じる俳優さんを「大っ嫌い!!」となれば、それはドラマにどっぷりハマっている証拠。そのドラマは大成功と言える。

今作の悪役は、紛れもなくヨン・テヨンのいとこヨン・テム(イ・テソン扮)と、パク・ハの姉ホン・セナ(チョン・ユミ扮)だ。

テムの欲望は非常にシンプルだ。テヨンを消し祖母の会社を乗っ取るのが目的のテムは、自分が天下を取るために邪魔ものは全て排除しようとする。テヨンが湖に落ちても助けようとしなかったり、パク・ハを拉致して冷凍庫に閉じ込めたり、偽テヨンを探すためにパク・ハの家を荒らしたり、最終的にはテヨンをひき殺そうとしたり。目的を達成するためなら殺人や拉致、不法侵入といった犯罪に手を染めようとも構わない。愛するセナを利用することすらいとわないのだから、本当に腐ったヤツだ。

一方のセナは、少々人間らしいというかイタい悪女だ。幼い頃義理の父親に叱られたセナは父親の連れ子のパク・ハを置き去りにして、父親と引き離してしまう。成人して再会した後は、パク・ハの事業資金を盗んだり、パク・ハが片思いするテヨン(ガク)を誘惑したり、パク・ハの実母が大富豪だと知るとパク・ハになりすましたり。ハイグレードな人種になりたいという欲ももちろんあるが、それよりも「パク・ハが自分よりも幸せなのが許せない」というわがままさと一方的な嫉妬心が、彼女を突き動かしている。

主人公たちを陥れようと、毎話大小様々な悪事を企てるテムとセナ。毎回、次は二人が何をしでかす(仕掛ける)のかとハラハラドキドキ。そしてそのお粗末な計画とその場当たり的な対応に絶句し、脇の甘さに失笑してしまう。そう、いつの間にか二人の動向から目が離せなくなっているのだ。

それもこれも、テム役のイ・テソンとセナ役のチョン・ユミが素晴らしい演技を見せてくれているおかげだ。私は「真の悪人」テムを演じたイ・テソンの目の演技が好きだ。テヨンを陥れたと「してやったり」という表情を見せたかと思うと、テヨンに対抗され悔しさを目ににじませる。特にクライマックスの狂気に満ちた瞳は迫力満点。“メンブン(メンタル崩壊)”したテムの瞳に鳥肌が立った。一瞬たりとも力を抜くことのない瞳。その瞳が悪事をやりきるという、テムの確固とした意思を感じさせてくれるのだ。

一方、チョン・ユミは、何か“やらかした”後の演技が秀悦だ。おどおどしたり、手を震わせたり、目が泳いだりと、「小心者」のセナの心をうまく表現していた。「そんなビクビクするならやらなきゃいいのに……」と思ってしまうが、そこがセナの良心であり救いなのかもしれない。

「真の悪人」テムと「小心者の悪人」セナ。二人の結末は対照的だ。彼らの運命を変えたものは何なのか? その答えは19話のガクのセリフに隠されている。ぜひ見事な<悪人>たちを最後まで見守ってもらいたい。「屋根部屋のプリンス」のもう一つの主役は、悪を演じきった<美男&美女>でもあるのだ。

執筆:ライター 酒井美絵子

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記者 : Kstyle編集部