Vol.1 ― イ・ジェフン、映画新人賞6冠王の“ドラマ挑戦記”

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映画「Bleak Night(原題:番人)」では友情に生きたギテ、映画「高地戦」では心から叫ぶ中隊長、そして映画「建築学概論」では初恋の初々しさを伝えたスンミン。スクリーンでの存在感ある演技で確固たる位置を築き上げた俳優イ・ジェフンが、SBS月火ドラマ「ファッションキング」(脚本:イ・ソンミ、キム・ギホ、演出:イ・ミョンウ)を通じ、テレビドラマデビューを無事に果たした。

イ・ジェフンは先月22日に放送が終了した「ファッションキング」で、社会的成功と愛を追求する財閥2世のチョン・ジェヒョクを熱演した。極めて現実的な「ファッションキング」でのジェヒョクは、視聴者の心を動かし共感を得て、俳優イ・ジェフンの演技の幅をさらに広げることとなった。

イ・ジェフンは最近、ソウル市江南(カンナム)区新沙洞(シンサドン)にあるカフェで行われたインタビューで、「ファッションキング」を終えての特別な感想を伝えた。

「初めて連続ドラマの主演を引き受けた作品だからなのか、イ・ジェフンという俳優にとってのこの作品の意味は、とても大きいです。多くを学ぶことができた時間でした。テレビという媒体を通じて演技するということが不安でもありましたが、そんな不安も乗り越えることができました。今まで“映画に慣れた俳優”として見られてきましたが、『ファッションキング』を通じてそのイメージを崩すことができました」

「今年の映画賞」新人賞、「韓国文化芸能大賞」映画部門・新人演技賞、「青龍映画賞」新人男優賞、「韓国映画評論家協会賞」男性新人賞、「大鐘賞映画祭」新人男優賞、「釜日映画賞」新人男優賞。イ・ジェフンは昨年から今年まで様々な授賞式を通じて、6つの新人賞を一気に受賞した。彼が心配した“映画に慣れた俳優”というイメージは、その優れた演技力によって付いて回った幸せな悩みだった。

「はじめは舞台演技から学び、毎日ドラマ(月~金に放送されるドラマ)を通じてドラマを経験しながら、視聴者に見慣れてもらいたいということをいつも考えていました。個性的なイメージに偏ると、脱け出すことができずに、そのまま偏った道を行くことになっていたと思いますし、ラッキーだったようです。僕にとって体力的な面では苦労が続きましたが、結果的に見れば良い選択になりました。どんな配役でも視聴者に慣れ親しんでもらうことができたら、他に望みはありません」

彼の言葉のようにイ・ジェフンはドラマ「ファッションキング」や、映画「建築学概論」「漁村の幽霊 パクさん、出張す」まで、ドラマと映画に立て続けに出演し、休むことなく走り続けてきた。それにも関わらずイ・ジェフンは、疲れが見えないのはおろか、むしろ活気に満ちた姿をしている。

「一番の問題は体力だったようです。『建築学概論』と『漁村の幽霊 パクさん、出張す』まで撮影して、それと同時にドラマの撮影が始まって不安でしたが、覚悟を決めました。ドラマ撮影時の環境は、よく知られている通り、多くのスタッフと俳優にとって快適とは言えない時間でしたが、たとえ寝ることができなくても、シナリオを熱心に覚えたりしたことなど、すべての過程が幸せだったと思います」

「ファッションキング」でジェヒョクを演じたイ・ジェフンは、スクリーンで受けた好評とは、また違った評価を得た。しかし彼に対するすべての評価は、それほど人々の関心が高いということを示している。金銭的な面での心配がなく傍若無人な財閥2世の姿と、どんなに大金を払っても変えることのできない現実に絶望した一人の男の姿が、イ・ジェフンを通じてそのまま表現された。ドラマが終わりジェヒョクに別れを告げたが、イ・ジェフンにとって、彼はどんな存在だったのだろうか。

「成功に対する欲望と野心、愛について大いに葛藤する人物という点がとても魅力的でした。金銭的に恵まれた家庭というバックグラウンドやそこで暮らしている姿も確かに魅力的でしたが、自分の仕事と愛について迷う姿を演技したら面白いだろうな、という気がしたんです。挑戦したい気持ちが大きかったです」

世間では、取るに足らない中途半端な主人公カン・ヨンゴル(ユ・アイン)より、チョン・ジェヒョクのほうが気の毒だという評価があった。ストーリーが展開すればするほど、ジェヒョクの持つ富は意味を持たなくなる。そこで迷う人物の心は、すでに羨望の対象ではなくなっていた。

「愛する人に求愛しても、それを受け入れてもらえない時。そんな時がジェヒョクにとって一番傷ついて辛かった瞬間ではないかと思います。たぶんその瞬間を一番哀れに感じたのではないでしょうか。とはいえ、ドラマの特性上、4人の人物が皆それぞれの愛によって傷つく時、それぞれが一番ちっぽけで哀れに感じると思います。自分の思うように愛を与えることも受けることもできない経験は、すべての人々にとって悲しみでしかないでしょう」

インタビューの間ずっと「ファッションキング」について真剣で率直に語る彼からは、自身の演じた人物チョン・ジェヒョクに対する特別な愛着を感じることができた。最終回の放送以降、突然死んだヨンゴルについての同ドラマのファンからの不満に対して、イ・ジェフンの考えを聞いてみた。

「死に対する多くの推測が含まれていたら、余地を残す結末も悪くはないように思います。もうちょっと親切に説明することができた部分も、視聴者が推測できるように残しておいてあるので、意見はそれぞれあっても、今まで視聴した方々はある程度の解釈を持っていると思います。僕も、視聴者の方々はどんな風に考えたのか、結末についての可能性を一度お聞きしたかったんです。ガヨン(シン・セギョン)が殺したかも知れないというのは、視聴者の意見を聞いて初めて考えてみました」

記者 : チェ・ドゥソン