Vol.2 ― 「ファイ」キム・ユンソク“小さな巨人ヨ・ジング、最初は誰なのかも知りませんでした”

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家に帰ってきた息子を嬉しく迎える父親の姿は、見慣れた風景だ。どの家庭でもあまり変わりのない、日常的な風景の一つだ。しかし、彼らは少し違う。少し変な親子関係。雰囲気のそれぞれ違う、5人の独特な父親を持つ17歳のファイ(ヨ・ジング)の物語だ。

理性的で緻密な設計者であり、ファイの助力者でもあるジンソン(チャン・ヒョンソン)パパ、運転専門でどもりではあるが温かいギテ(チョ・ジヌン)パパ、冷たい行動派のドンボム(キム・ソンギュン)パパ、パパたちの中で最も若く、銃器専門のスナイパーであるボムス(パク・ヘジュン)パパ、そして冷酷で冷たいカリスマ性溢れるソクテ(キム・ユンソク)パパまで。

映画「ファイ 悪魔に育てられた少年」(監督:チャン・ジュンファン、制作:ナウフィルム、以下「ファイ」)では、5人の怪物のような犯罪者のお父さんたちとそのような怪物を飲み込んだ一人の少年が126分を率いていく。特にパパたちのリーダーソクテと息子ファイの緊張感は映画が進むにつれどんどん高まり、目が離せない緊張感を与える。40歳をとうに超え45歳となったキム・ユンソクと、まだ16歳になったばかりのヨ・ジングが観客の心を響かせる。

経験から出てくるキム・ユンソクの爆発的な存在感に、“歩き出したばかりのひよこ”ヨ・ジングがついていくのは当然難しそうに思われていたが、いざ蓋を開けた「ファイ」を見ると、キム・ユンソクに負けないほどの底力を見せ付けていた。29歳違いという歳月の差はなかった。ただ、俳優対俳優が披露する楽しい遊び場であった。

キム・ユンソクも否定はしなかった。休むことなくヨ・ジングを絶賛する姿を見ていると、久しぶりにかなり気に入った仲間に出会えたようだ。ヨ・ジングの名前を口にするキム・ユンソクの顔が自然に笑顔に変わっていくほどだった。もう言葉は要らない。

写真=映画「ファイ」スクリーンショット
「ヨ・ジングを最初は誰なのかも知りませんでした。チャン・ジュンファン監督がファイ役に彼を選んだと話した時に『誰?』と聞き返しましたね(笑)ドラマをあまり見ないので、当時はまだジングのことを知りませんでした。10代の子役俳優だと言われ、最初は反対しました。このように重くて難しい役を10代がどうやって演じるのか心配になったんです。けれど、チャン監督は確固たる信念を持っていました。ファイはヨ・ジングだと…」

「ファイ」を撮影した昨冬、ヨ・ジングは高校進学を控えている中学3年生だった。もちろんヨ・ジングはこれまで期待以上の姿で人々を驚かせたりもしたが、ファイは才能のあるヨ・ジングが務めるにはプレッシャーになる役だった。もしファイという人物を間違って理解すれば、映画がそのまま奈落に落ちてしまうというのは明らかなことだった。キム・ユンソクが懸念したのも当然だ。

「僕が思うに、劇中のファイは17歳なんですけれども、実際の17歳にはない感情を持っている、言葉通りドラマチックな人物でした。なので『演じ切れるのか?』と不安になりました。ファイには青年と少年の間という曖昧な部分があるんです。ソクテにもファイは自身の肉をかじって食べるもう一つの分身なんですから。けれど、ヨ・ジングは違いました。スポンジのように、ありのままをそのまま吸収するんです。俳優としての才能が人並み外れた子です。チャン・ヒョンソン、チョ・ジヌン、キム・ソンギュン、パク・ヘジュンなど錚々たる俳優が集まりましたが、その中でもベストはヨ・ジングだったと自信を持って言えます。その年でファイを消化できる俳優が他にいるんでしょうか?ハハハ」

“天才子役”と呼ばれているヨ・ジングについてキム・ユンソクは、天才という言葉よりは“小さな巨人”という表現を使った。生まれながら人とは違う、演技の巨人の血が流れているということだった。決して言葉だけのお世辞ではない。なかなか褒め言葉は口にしないキム・ユンソクの絶賛であるだけに、ヨ・ジングへの信頼は高まった。

巨人たちの戦いは息もできないほどの緊張感を届ける。何より、ファイが隠されていた真実に対面してから展開される対立は、少しだけ触れたら爆発してしまいそうな時限爆弾のようだ。

劇中の世界を作ったキム・ユンソクと、その世界で自由にキャラクターを演じきるヨ・ジングのアンサンブルは「ファイ」がウェルメイド映画に進化できた原動力であった。ヨ・ジングへの絶賛を惜しまなかったキム・ユンソクだが、逆に考えて見ると頼もしくサポートしてくれる助力者キム・ユンソクがいたからこそ可能だったヨ・ジングだ。もしかしたらキム・ユンソクは、ヨ・ジングを俳優として自身の分身のように思ったのではないだろうか。

「ファイがソクテに『お父さん、なぜ僕を育てたんですか?』と聞きます。僕が思うに、ソクテは自分の痕跡を残そうとする本能ではなかったのでしょうか。みんな同じではありませんか。子供を産んで育てる理由は、自分と最も似ているもう一つの自分が自分より少しは良い人になってほしいと思い、自分よりは良い人生を生きることを祈りますよね。そこでファイを育てたのです。世の中で自分と似ている彼が自分を乗り越える存在になって欲しいと思ったんですね。結局は自分を飲み込んでしまうとしても……」

記者 : チョ・ジヨン 写真 : イ・ソンファ