Vol.1 ― ソン・スンホン「直前にできたての台本を受け取っても、『できない』とは言えません」

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1996年、MBCシットコム(シチュエーションコメディ:一話完結で連続放映されるコメディドラマ)「男女6人恋物語」でデビューし、いつしか俳優歴17年目になる俳優ソン・スンホンが、韓国ドラマ制作の現実にもどかしさを示した。そして、韓流スターとして韓流ブームを見つめる視線について、ありのままの率直な意見を語った。

MBCドラマ「Dr.JIN」のすべての撮影を終えたソン・スンホンに9日、会いに行った。ソン・スンホンは、この場で自身の演技力に関する論議に加え、韓国ドラマの制作環境について自身が感じたことを正直に明かした。

ソン・スンホンは、「韓国ドラマの現実が、俳優やスタッフにもう少し親切だったらいいのに」と話した。“改善”や“発展”ではなく、ソン・スンホンは“親切”という言葉を選んだ。俳優やスタッフたちに配慮しない制作環境に対するもどかしさを見せた。

「1週間に2話ずつ撮影しなければなりません。第5話以降は、70分のボリュームを1週間に2話ずつ撮影しなければならないので、日曜日の放送が夜10時であれば、午後6時まで撮影をしていました。外国の方が見たら、理解できないことだと思います」

日本の制作環境についても言及していたソン・スンホンは、「(劣悪な環境の中で)それをやり遂げてしまう韓国人を見ると、不思議でもあります」と話した。しかし彼は、環境のせいにする前に俳優として完璧な演技を視聴者に見せることが優先だと強調した。

「(イ・)ボムスさんやジェジュン(JYJ)とこんな話をしてみると、『いずれにせよ、やらなきゃならない』という結論になりました。俳優として直前にできたばかりの台本を受け取ったとしても、結局は視聴者に見せなければなりません。『できません』なんてことは言えません。ボムスさんの話の中で印象的だったのは、『どんなに悪条件でも、やらなければならないことが僕たちの仕事じゃないかな。こんな暑い日に、不満も不平もない人なんているわけがない。やろう』と言っていたことです。その言葉に、『先輩も頑張っているんだから、自分がこんなんじゃだめだ』と思いました。しかし、とても劣悪な環境であることは事実です」

ドラマの劣悪な制作環境のため、比較的余裕をもって撮影が行われる映画を好むのではないか、という質問に対し、制作環境の違いを認めながらも、それを理由に偏った選択はしないときっぱりと断言した。

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「やはり映画の方がドラマよりは俳優やスタッフたちに親切ではありますが、テレビという媒体の力は、映画と比べて桁外れだと思います。優劣をつけるというのは、違う気がします。より親しみを持って視聴者に近づくのは、テレビという媒体です。単純に考えて、2時間の映画を3ヶ月かけて撮影するのと、2時間のドラマを5日間で撮影するのは、肉体的に差があります。しかし、ふたつのジャンルはそれぞれ長所も短所もあるので、どちらがいいとは言えません。だからと言って、『私は映画にだけ出演する』『ドラマだけに出演する』というのは、違うと思います。テレビでは見せられないジャンルがあります。それを映画で見せなければなりません」

ソン・スンホンは、アジアを越えて全世界に広がっている韓流ブームに、むしろ反感を持っている一部の韓国世論を心苦しく思っていた。韓国の歌やドラマ、映画などが世界的に認められ人気を得ているが、それを韓国では“泡”だと評価していることに対してだ。

「韓国で映画やドラマを作り、韓国の観客が見てそれで終わり、という時代がありました。しかし、5~10年の間に韓国ドラマや映画が海外に広がっています。僕が幼い頃、チョウ・ユンファやレスリー・チャンが現れただけで熱狂していたような雰囲気が、いつのまにか韓国に訪れたようです。アジア市場で韓国のコンテンツに熱狂し、韓国ドラマやK-POPに対する影響力が強くなりました。とてもいい機会だと思います」

ソン・スンホンは、アメリカを例に挙げた。アメリカの国力が現在のように全世界に影響を与えるほど強いのは、文化がベースになっているからだと説明した。

「アメリカが強国というイメージを持っているのはもちろん、その国が持つ資源や経済力も同様ですが、ハリウッド映画やアメリカが持つ芸術、文化を見ながら育った私たちが漠然と“金髪はアメリカ人”だと思い、アメリカのアニメや映画を見ながら“あ、アメリカという国って最高だ”と気付かないうちに思ってしまっています。ハリウッドほどではありませんが、今、アジア市場で韓国がそのような雰囲気を作り上げています。人によっては、それは“泡”ですぐに消え去ってしまうと言いますが、しかしそんな“泡”が10年以上の間維持され続け、いい文化が生まれました。しかし、韓国の人同士で“泡”だとネガティブに考えています。それを見ると、とても残念な気持ちでいっぱいになります」

ソン・スンホンは、韓流ブームによって外国人が韓国に関心を持ち、韓国語を学ぼうとする人が相次いでいる現象をポジティブに見つめていた。そして、韓流ブームに対するさらなる応援と激励をした。

「海外から来たファンがドラマやK-POPのために韓国に来て観光したがり、韓国語を学ぼうとするのは、本当に大きなことなのに、そういうことに対する大切さがわからない人々がとても多い気がして、残念な気持ちも大きいです。本当にいい機会です。この機会をうまく生かして、アジア市場を越えて全世界に広がってほしいですね」

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記者 : イ・スンロク