n番部屋事件を追跡…Netflix「サイバー地獄: n番部屋 ネット犯罪を暴く」監督が制作過程を語る“私たちが知っているのは氷山の一角”

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写真=Netflix
韓国史上最悪の性犯罪「n番部屋事件」の実体を追跡するNetflixのドキュメンタリー「サイバー地獄: n番部屋 ネット犯罪を暴く」が話題となっている。

「サイバー地獄: n番部屋 ネット犯罪を暴く」(以下、「サイバー地獄」)は、n番部屋事件を目の当たりにした記者、プロデューサー、警察など、24人のインタビューを通じて犯罪の実体を明かしていくサイバー犯罪追跡ドキュメンタリーだ。犯罪歴史上、類を見ない新しい形の非対面犯罪、“サイバー性犯罪”を記録、追跡する「サイバー地獄」は、予告編とポスター公開時から大きな注目を集めた。

n番部屋事件の実体を暴こうと、犯罪を追跡した大学生から記者、プロデューサー、時事番組の作家など、様々なジャーナリスト、そしてサイバー捜査隊の警察まで。犯人検挙に至るまで、不屈の精神で彼らを追いかけた24人のインタビューを通じて、熾烈な追跡記をリアルに描いた「サイバー地獄」は、自身だけの演出スタイルを披露してきたチェ・ジンソン監督が手掛けた。以下はチェ・ジンソン監督が作品の企画意図や制作過程について語った一問一答である。

写真=Netflix
――「サイバー地獄」はどんな作品ですか。

チェ・ジンソン監督:これまでNetflixで紹介されてきたドキュメンタリーは、連続殺人やサイコパス、性犯罪など、ずっと前から存在する犯罪に関するものでした。しかし、「サイバー地獄」は人類史上、類を見ない新しい類型の“サイバー性犯罪”を記録し、追いかけた作品です。

――「サイバー地獄」を企画することになったきっかけと過程、その始まりを教えてください。

チェ・ジンソン監督:2020年初頭、これまで全く想像できなかったような、奇妙な犯罪に関する話が少しずつ耳に入るようになりました。性搾取の映像、テレグラム、ハッキング、暗号貨幣(仮想通過)、非対面の集団犯罪など、一般人には理解するのが難しい犯罪が、私たちの日常の裏で残酷に起きていることを遅れて知りました。そしてこの事件を初めて追跡した市民、“追跡団 炎”に会い、また事件を初めてマスコミで公論化した記者たちにも会いました。彼らに会ったことで、n番部屋の犯罪がこれまで認識していたものよりもずっと組織的で恐ろしく、残酷だということを知り、作品でこのことを扱いたいと思いました。

――n番部屋事件に関するニュースと記録、コラムなど、膨大な資料の中からどのような基準で調査を行い、整理をしたのですか。

チェ・ジンソン監督:最初は、n番部屋と博士部屋の実体を把握することが難しかったです。その中に入ったことがなく、すでに事件がかなり進行している状態だったので、一体その中でどんなことが起きたのか、“実体的な真実”を把握するのが優先でした。マスコミで一部明らかにされた内容も、真実を把握するには足りなかったのです。“追跡団 炎”とジャーナリストたちから、彼らが事件を追跡しながら集めたn番部屋、博士部屋の資料を受け取ることができました。被害者が分かる部分はすべて消した状態の資料で、この資料を通じてオンラインによる犯罪現場を探索することができました。苦しかったですが、絶対に必要な過程でした。

――インタビュー対象者の選定はどのような基準で行われたのですか。また、キャスティングの過程を教えてください。

チェ・ジンソン監督:誰を作品の主人公にするのかが重要でした。この事件を一番先に追跡し始めたのが、記者を目指していた大学生たちだったというのが興味深かったのです。“追跡団 炎”という名前で彼らはn番部屋に入り、これを取材して世の中に知らせました。事件そのものも気になりましたが、発端が一般市民だったという点が意味深く、彼らを主人公にしようと思いました。

また、この作品は映画「スポットライト 世紀のスクープ」のように、ジャーナリストたちが真実を追跡する作品でもあります。この作品を通じて私が出会ったジャーナリストたちは、警察以上に犯罪者を捕まえたいという気持ちが強かったのです。彼らはn番部屋に自ら入り、被害者に会い、犯罪者たちとのインタビューを試みました。彼らの心の中には“必ず捕まえる”という思いしかなく、結果それを成し遂げました。韓国のサイバー捜査隊は、世界最高の捜査官たちだと言いたいです。彼らはオンラインとオフラインを行き来しながら、犯罪者を追跡するのに死力を尽くしました。

――モバイルチャット画面を通じて事件の展開を見せるという演出方式を選んだ理由はありますか。

チェ・ジンソン監督:n番部屋事件が、テッド・バンディのような連続殺人事件や、ジェフリー・エプスタインの性犯罪事件のような古典的な犯罪様式ではなく、ネットワーク上で最新のテクノロジーを通じて起きた“ニュータイプクライム”というのがとても重要なポイントでした。そして視聴者にもこのような概念を意味のあるものとして感じてほしいと願っていました。まるで映画「search/サーチ」のように、SNSとオンラインのUI(User Interface)使って事件が表現されたら、この犯罪の特異性が観客にしっかり伝わるだろうと思いました。被害者を直接インタビューすることは、最初から考えていませんでした。彼らに対する新たな加害になるかもしれないと思ったためです。取材とインタビューを通じて把握した被害を、視聴者に映画としてきちんと伝達できる方法がこのような画面構成だと考えました。

――スリラー映画を見るような作品です。このような演出をした理由はありますか。また、一番注力した部分はどこですか。

チェ・ジンソン監督:ドキュメンタリーも劇映画だと考えています。特にジャンルを区分しないのが私の演出スタイルです。そのためいつも考えるのは、“面白くなければ、意味もない”ということです。作品の重要な意味を観客にしっかりと伝えるためには、ジャンル的であり、面白くなければなりません。また、ビジュアルも魅力的であるべきです。最初に企画する時から、(見る人を)引きつける犯罪追跡劇にしようと思いました。それでこそ、この作品の中の犯罪の特異性や追跡者たちの苦悩がきちんと伝わり、被害者に対してもより共感できると思いました。インタビューをする時も、犯罪映画に合うセットと照明を用意し、編集と音楽は犯罪映画の構想とリズムにしようと考えました。また、被害者が経験した犯罪の残酷性をできるだけ非直接的で、倫理的に表現するためにモノトーンのアニメーションを使用しました。

――作品を撮影する上で、難しかったことは何ですか。

チェ・ジンソン監督:難しかったことといえば、やはり被害者が多い犯罪を取り扱う作品なので、この方々に被害が及んではならないという思いが一番大きかったです。インタビューを受ける人たちも同じ悩みを持ちながら、インタビューに応じてくれました。事件の実体を浮き彫りにしながらも、被害者に新たな被害があってはならない演出でした。性犯罪事件ですが、できるだけ煽情的にならないように、倫理的に表現しようと心がけました。

――視聴する際、どのような部分に重点を置けばよいでしょうか。

チェ・ジンソン監督:韓国の観客なら、n番部屋事件について誰もが少しは知っているでしょう。しかしこの作品を見れば、私たちが知っていた事件の実体というのは氷山の一角だったと感じられると思います。事件の惨状は私たちが知っているものよりひどく、犯罪の方式も私たちが知っているものよりずっと複雑で、巧妙で、緻密でした。また、この事件の追跡者たちは、私たちが思っているよりずっと熱い思いを持っていました。被害者の方々に、追跡者の方々に、そして視聴者の方々にこの作品を通じて伝えたいことは、いくら隠れても“犯罪者は必ず捕まる”ということです。そしてこの言葉は、犯罪者たちにも同じく聞かせたい言葉でもあります。“あなたたちは必ず捕まる”と。

記者 : パク・ソリ