「K-POPのここがスゴイ!」“プロヲタク”あくにゃんこと阿久津愼太郎が語る韓国アイドルの魅力

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今年3月に書籍『推しがいなくなっても、ぼくはずっと現場にいる―誰も語らなかったアイドルヲタクのリアル―』(主婦の友社)を出版した阿久津愼太郎。K-POP、ジャニーズ、そして地下アイドル界隈を渡り歩いてきた“プロヲタク”が考える韓国、そしてK-POPの魅力とは?

――様々なジャンルを推してきたあくにゃんさんにとって、それぞれの界隈の魅力はどんなところにあると思いますか?

阿久津:まずジャニーズは、成長を見られるところが好きです。見守るっていうことそのものを売り物にしている感じがあるんですよね。韓国では練習生期間を売り物にはしないじゃないですか。ジャニーズはそれを公式が提供してくれているから、こっちも楽しみやすいというか。あとは、デビューに対する想いが強い。もちろん、デビューしたい気持ちは韓国の練習生も同じくらい強いと思うんですけど、ジャニーズの場合だと、たとえば他のユニットに先にデビューされちゃった時の悲しさみたいなのがあるんですよね。他のユニットがデビューするってなったら、「じゃあうちは何年後だ?」とか「うちは当分デビューできないんじゃないか」とか。K-POPは自分の推しがデビューするかしないかだけど、ジャニーズJr.の場合は他のユニットに先にデビューされるとか、推しの同期がデビューしたとか、デビューに対して結構ドラマがあるんですよ。デビューできないから推しが辞めた、ということもあるので……。しかも、今はどこがデビューしてもおかしくない時期だからこそ、熱い!

――K-POPはどうでしょうか?

阿久津:K-POPは終わりがあるというか、当たり前に人気だったグループがなくなるじゃないですか。日本だと嵐とかSMAPがいい例ですけど30歳、40歳になってもアイドルでいられるというのが確立されてるから、年齢に対する不安はないんですけど、K-POPって終わりがあるんだなというのは正直、驚きました。そこのビジネスライクさはマジですごいし、それが逆にヲタクとして熱量上がるなと思ってて。本当に今、応援しなきゃいなくなってもおかしくないという危うさがありますよね。韓国は兵役もあるし。7年契約っていうのもありますよね。個人的に好きなのは、みんな一緒に住んでるっていうのがかわいくて。ジャニーズのヲタクも地方公演のホテルの部屋割り話がめっちゃ好きなんですよ。誰と誰が同じ部屋だったとか。それがコンテンツになるんです。でも、韓国はこれが毎日行われてるってことですよね。みんな一緒に大きい車で移動する感じとか、すごくかわいいと思います。

地下アイドルだと、事務所が大きくないから借りてる部屋が限られてて、後輩がその部屋に住むからって先輩が追い出されて、結局解散したというグループもあります。全員が一緒に住める訳ではないというシビアさがありますね。


「K-POPのMVへの熱量の高さ、SNSの使い方はすごい」

――K-POPならではの好きなところはありますか?

阿久津:言葉が通じないところ、ですかね。新大久保の地下アイドルってすごくて、メンバー全員ほぼ日本語ペラペラなんですよ。でも空港のお見送りに行くとパスポートの色が違くて、やっぱりこの人たちは外国の人なんだってその時、思うんですよね。それに、ビザがあるから何ヶ月かに1回は帰国しなきゃいけなくて、それが「竹取り物語」じゃないけど、「あ、やっぱり異国の人なんだ!」ってなるっていうか。でもそれが逆に愛に変わるというか。ちょっと異世界の人に対して、来てくれてありがとうと思いますしね。

地下アイドルって距離が近いから、だからこそ演出が必要なんですよ。近いままだと本当にズブズブで、何で自分は彼らにお金払ってるの? って話になりますし(笑)。手紙を出す時も、がんばって韓国語で書くんですよ。韓国語は地下アイドルを応援しはじめてからやっと少しは覚えられるようになりました。韓国語の授業を受けてたからハングルを読んだりはできるんですけど、単語は握手会で一言ずつ覚えていく、みたいな。メンバーが帰国しちゃう時、「寂しい、帰ってほしくない」って言いたくて、韓国語を友人に教えてもらって覚えてました。だから、僕の韓国語は握手会用語専用なんですよ。日常会話的なのはできるよとか、ビジネスは無理だよとか、会話レベルってあるじゃないですか。それで言うと、僕は握手会レベル(笑)。「お兄さんしか見えない」とかは言えるけど、他の単語は全然知らないんですよね。韓国旅行で使う「おかわりください」とかは言えないけど「僕が誕生日プレゼントだよ」とかは言える(笑)。

――言語もそうですが、K-POPならでは専門用語は1つの文化ですよね。

阿久津:あと、今はちょっと違うかもしれないですけど、僕が一番応援してた時って韓国を応援する人って“痛い”じゃないけど、ちょっと変な目で見られてたじゃないですか。「入れ揚げてる」みたいな。それが僕はすごく好きで。なんかちょっとアングラというか、そういうのが好きなんですよね。CDも、TSUTAYAにはないけど新大久保にお店がいっぱいあって、そこで買うみたいな。新大久保っていう謎の土地に行く感じも、異世界観って言うのかな。そういうのが好きでしたね。だから、僕はみんなに受け入れられるK-POPアイドルが好きなわけではないんですよね。地下アイドル好きも変な人たちとして見られてるけど、そういうのがたまらなく好きなんです。

地下アイドルの最大の魅力は、多分ジャニーズJr.が好きな人と一緒なんですけど、先輩の曲をガンガンやりまくるっていうところ。持ち曲が少ないので、他のアーティストの曲をライブでやりまくるんですけど、マジでセットリストが神。SEVENTEENもやるしBTSもやるし、BIGBANGやるし、みたいなセットリストでライブが1時間あるんですよ。だから普通にK-POPを知ってる人が行ったら面白いですよ。

――K-POPというシステムで面白いなと思うところはありますか?

阿久津:ファンが楽しめると思うのは愛嬌コーナー(可愛いポーズを見せる)で必要以上に恥ずかしがってる人(笑)。あれが僕は好きなんですよね。でも愛嬌をやらないと次に行けない感じ。「どんなポーズがみたいですか?」って聞かれると絶対「愛嬌!」って言うファンがいるんですけど、愛嬌に対して必要以上にハードルが高いところが見ててかわいいというか、やらされた後とかも含めてかわいいなって思って見てます。恥ずかしがらないと成り立たないみたいところも好きですね。

――K-POPのここがすごい、と思うところは?

阿久津:僕はパフォーマンスはマジで一切興味ないんですけど、ただMVはすごいなと思いますね。考察しがいがあるというか、伏線が敷かれたMVが多いじゃないですか。僕的には疲れるなと思うこともあるんですけど、「ここで靴を履いてないのは」とか「ここでメンバーがひとりだけ右側を向いてるのは」とか、みんなめちゃくちゃ好きですよね。MVとか、ティザーに対する思いがすごく強いなとは思ってます。24時間で何万回再生突破! とか、そういう再生回数が評価のひとつになってるのも独特ですよね。MVに対する熱量の高さはまだ僕はついて行けてないですけど、そこがK-POPは独自の魅力だなと思います。

あとは、SNSの使い方がうまいというか、時代に合ってるなと思いました。韓国はファンが撮った写真をどんどん世の中に発信していくじゃないですか。一方で、地下アイドルって今はチェキをSNSにあげちゃダメなグループが増えているんですよ、ファンが嫉妬するからって。現場にいる数少ないファンに配慮した結果、発信力ゼロになっちゃった、みたいな。それでもいい、みたいなところは日本は振り切ってるなと思いますけどね。


「ヲタ活での渡韓、ひとりでも行っちゃいます」

――K-POPのヲタ活といえば渡韓ですが、あくにゃんさんは渡韓したことは?

阿久津:大学2年生の時に初渡韓しました。その時はBTSにハマってて、テテ(V)が生まれ育った場所を見たいと思って、ひとり「アナザースカイ」したんですよ(笑)。その後、地下アイドルにハマって、その子たちがデビューとかカムバックするたびに音楽番組の観覧や、週末のサイン会への参加目的で韓国に行くようになりました。

――ヲタ活での渡韓は友達と行くんですか?

阿久津:渡韓は、友だちと一緒に飛行機で移動する時もありますけど、現場に行けばみんないるし、ひとりでも行っちゃいます。基本的に韓国での活動って地下アイドルを追ってる身としてはおいしくはないじゃないですか。しゃべれる訳でもないし、距離も遠いし。日本だったら横並びでチェキ撮れるのに、韓国だとテーブルが挟まってくるし。でも、音楽番組に出演してる中で推しが一番人気がないっていう認識がヲタクにあるから、みんなめっちゃ声出すんですよ。たぶん僕たちが一番声でかいですよ、あの中で(笑)。そういうのは面白いです。「みんな、このグループを知って!」っていう気持ちがあるから。自分たちの声援で推しを目立たせたいというか、「この子たち、実は人気あるんだ。よく知らないけど」って思わせたい、みたいな気持ちがありますね。

――いつも活動している日本とは違う環境で、推しを見た時、どんな気持ちですか?

阿久津:僕が推してたTARGETが初めて韓国でカムバックした時、ステージに火花が出たんですよ。その時は「うちの子たちに火花を焚いていただける!?」みたいな感じでした(笑)。あと、サノク(事前収録)って基本的に他のグループと抱き合わせなので、うっかり他のグループにハマったり(笑)。RAINZと一緒だった時はRAINZにハマって、リリースイベントイベに通い倒してましたね。

韓国って音楽番組に来た人の数もランキングの集計に入ってるところがすごく好きなんです。音楽番組の応援に来させるためにスタンプカードがあって、毎日テレビ局にスタンプをもらいに行ってました。中に入れなくてもいいんですよ、行けばスタンプもらえるから。スタンプを集めると直筆手紙とかサイン入りポスターがもらえるんです。毎日音楽番組に行くっていうのが面白いですよね。そもそも毎日、音楽番組があるのも面白いし。渡韓している時は、音楽番組の合間に食事したり観光するみたいな感じでした。

――今はこんなご時世なのでなかなか渡韓もできませんが、恋しいものはありますか?

阿久津:弘大(ホンデ)に行きたいですね。弘大ってなんかいつも賑わってるっていうか、女性でもガンガン喫煙してたりとか、道端に唾吐いてる人も多いし、タピオカのゴミが散乱してたり、僕はそういうところに活気を感じるんですよね。盛り上がってんな、この国! って思える瞬間が多々あるから。あと「梨泰院クラス」が流行る前にしか梨泰院(イテウォン)に行ってないから、今度韓国に行くときは梨泰院にも行きたいです。それに、アイドルも結構行くらしいという話を聞いたのでクラブにも行きたいし、あとはロッテワールド! 元推しとロッテワールドに行くっていう企画をYouTubeでやりたくて(笑)。「やっぱり推しと遊園地に行ったら匂わせをしたくなるのか」っていう検証企画をやりたくて……、そもそも元推しがOKしてくれるかどうかわからないんですけどね(笑)。でもやりたい!


「ナムジャのトップペンになりたい!」

――自分の歴代の推しはどういうタイプが多いですか?

阿久津:ヨソプにハマって、BEASTで初めてライブビューイングを見に行ったんですよ。わざわざ宇都宮の映画館にまで行って。その時はカメラに手を振ってる推しを見て、自分に手を振ってもらってるみたいな感じになっちゃう、純粋なオタクでしたね。今は現場に一回でも多く入りたいとか言ってるけど、その当時は映画館のスクリーン越しでも沸いてたんですよ。ポスターを部屋に飾って、みたいなのをやってた時ですね。その後、しばらくK-POPからは離れてたんですけど、BTSとSEVENTEENで戻って、TARGETに出会って「あ、これだ!」みたいな感じでした。

――最近気になるグループはいますか?

阿久津:最近推しているのはTOMORROW X TOGETHERのボムギュ! もう地下アイドルはコリゴリというか(笑)。あと、コロナの時期だから地下も何もないじゃないですか。全員遠いから。じゃあせっかくだし大手にハマろうと思って、元々顔が好きだったから今はTXTのボムギュですね。今回の本の印税をすべてつぎ込んでいつか韓国のヨントン(テレビ電話)にチャレンジしたいなと思っています。僕、いつも男の子ひとりの現場が多かったので、ナムジャ(男性)のトップペンになりたいっていう気持ちがあるんですよね。だから、ボムギュに「僕はナムジャペンのトップを目指します」って言いたいんですよ。

あと気になってるのはEPEX。ペ・ジニョンがいるCIXの後輩グループです。デビューしたばかりで、まだ推しはいないんですけど、C9って必ず初期ビジュアルが白シャツにジーンズなんですよ。それを真似してこないだ自分の宣材を撮ったんですよ。C9の人っていうイメージで(笑)。

――好きになるグループや“推し”になる好みはありますか?

阿久津:最近になってやっと自分の好みがわかってきたんですけど、おとなしい子が好きなんですよね。だからたぶん推しが4人連続で辞めてるんですけど(苦笑)。アイドルに不向きな子が好きなんです。でも、それについてはストレスもあるんですよ。「もっとちゃんとやってくれよ!」って思ったりとか、「MC中にマイクを口から離すなよ」とか、「なんで腕組んでるんだよ」とか思うことも多いんですけど……。でも、器用な子が器用にやってても何も萌えないというか。不器用な子ががんばってる姿が好きなので。カメラに指差す時、顔と手がかぶってるけど大丈夫か? ってなるような子が好きですね(笑)。

――今後やりたいことはありますか?

阿久津:やり残したことでもあるんですけど、一回センイル(誕生日)広告をやってみたくて。ここで出すよって言うとみんな見に行ってくれたりするじゃないですか。あれを一度やってみたいですね。

――最後に、読者のみなさんにメッセージをお願いします。

阿久津:僕は、いろいろな界隈や沼を経験してみることは重要だなと思っていて。最終的にK-POPに戻るとしても、一回ジャニーズを見てみるとか、他ジャンルを覗いてみるというのをおすすめしたいです。もしかしたらそっちにハマっちゃうこともあるかもしれないけど、でも結局「やっぱり今の推しだな!」ってなるんですよ、人って。コロナ禍なので韓国の推しには直接会えないし、韓国に行ったりもできないから、日本のアイドルと見比べて楽しむことで、逆に推しの愛を補完するというか。推ししか見てないという人も多いだろうから、推し以外を見てみるのも案外面白いと思いますよ。

取材:尹 秀姫 / 撮影:前手秀紀

■書籍情報
『推しがいなくなっても、ぼくはずっと現場にいる―誰も語らなかったアイドルヲタクのリアル―』(主婦の友社)
著者:あくにゃん(阿久津愼太郎):著 
定価:1,540円(税込)
詳細:http://shufunotomo.hondana.jp/book/b561884.html

■あくにゃん(阿久津愼太郎)
プロのヲタク / YouTuber
『ヲタクをするために生きている』をモットーに『好き』を共有する、男性アイドル好きYouTuberとして活躍中。SNSや総フォロワー数は20万人を突破!

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記者 : Kstyle編集部