「メモリーズ 追憶の剣」チョン・ドヨン“年齢に関係なく、死ぬまでラブストーリーを演じたい”

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写真=ロッテエンターテインメント
天下のチョン・ドヨンにとっても映画「メモリーズ 追憶の剣」(監督:パク・フンシク、制作:TPSカンパニー、配給:ロッテエンターテインメント)は“初めて”の連続だった。初めて重たい刀を持ったままワイヤーに乗ったし、初めて目の見えないキャラクターを演じながら限界にぶつかって苦しんだ。武侠も初めてだった。そうやって毎瞬間、自身の限界を乗り越えるために挫折、また挫折したチョン・ドヨンのおかげで、観客は彼女の最高の演技が楽しめる甘い機会を得られることになった。

「メモリーズ 追憶の剣」は、志が違った3つの刀のストーリーを描いた映画だ。チョン・ドヨンは大儀と復讐のためにすべてを犠牲した盲人女性剣客ウォルソを演じた。チョン・ドヨンは「人魚姫」(04)の済州道(チェジュド)試写会当時、パク・フンシク監督が話してくれた「メモリーズ 追憶の剣」のストーリーに夢中になり、8年後、自ら出演の意思を明かした。完成されたシナリオを読んだ後は、そのすさまじい振幅のドラマに感嘆した。しかし、いざ撮影に入ると挫折と限界の連続だった。

ウォルソは復讐心、愛、母性愛が絡んだ複雑なキャラクターだ。チョン・ドヨンは目が見えない女性剣客という設定により、刀が頬すれすれに通り過ぎる瞬間も瞬きをすることができなかった。深く、広い感情演技も目を排除したまましなければならず、歯がゆかった。いろんな面で山また山のウォルソという人物をこんなにしっかり、深く表現する女優がチョン・ドヨンのほかに誰がいるだろうか。

チョン・ドヨンはウォルソの複雑な感情の中、“メロ(恋愛もの)”に傍点を打って演技をした。濃い愛だから可能だった物語だという。“侠”ほど大事だったのがすさまじい“メロ”の情緒だった。実際、チョン・ドヨンはいつも“メロ”に惹かれて作品を選ぶという。「無頼漢」「ハウスメイド」「素晴らしい1日」「ユア・マイ・サンシャイン」、そして冬に公開される「男と女」まで、彼女のフィルモグラフィを見ると自然と頷ける。

「基本的に私は愛に惹かれます。強いストーリーだったけど、基本的な情緒は全部メロでした。私こそ多様なジャンルが経験できなかった女優じゃないかなと思います。メロは死ぬまでしたいです。若い人だけが恋愛するわけではないでしょう。愛の形、年齢に関係なくいつまでもメロがしたいです」

以下はチョン・ドヨンとの一問一答。

―「メモリーズ 追憶の剣」を選んだ理由は?

チョン・ドヨン:シミュレーションに合わせて練習したが、現場の条件はまた違うじゃないか。たくさん妥協した。信じがたいけど、私、体を動かすことは苦手だから。監督が「人魚姫」の時のストーリーは今のと少し違っていた。3人の女性剣客のストーリーだった。シナリオを読む前からしたかったし、私が先に連絡をした。

―一度仕事を一緒にした監督とは、再び仕事をしないタイプなのに、パク・フンシク監督とはすでに3度目だ。パク監督のどのようなところを信頼したのか。

チョン・ドヨン:3つの作品で一緒に仕事をした初めての監督でもあるけど、唯一シナリオをくれた監督でもある。2つの作品で息を合わせたイ・ユンギ監督を除いて、ほかの監督は一度一緒に仕事をした後はシナリオをくれなかった(笑) パク・フンシク監督に対する人間としての信頼よりも、監督がやろうとする物語がよかった。人間的な信頼より、作品的な信頼で決めた。

―公開が遅くなった。

チョン・ドヨン:もとの予定通り、昨年冬に公開しても競合作はあったはずだ。昨年12月に公開された「国際市場」もパク・フンシク監督がすごく避けたがった作品だ。

―イ・ビョンホンとは「我が心のオルガン」以来16年ぶりに共演した。

A.正直 「我が心のオルガン」の時はよく覚えてないけど、今回は本当に楽だった。アクションが下手だといじめられたけど、ビョンホン兄さんも私も易しいキャラクターではなかったから。再び演技がしたい時は相手を配慮しながら撮影した。

―回想シーンではイ・ビョンホンと20代を演じた。

チョン・ドヨン:ビョンホン兄さんが「ドヨン、僕、ドヨンのおじさんみたいに映っているよ」と話した。ハハハ。ビョンホン兄さんは自分が若く映らないことを怪訝に思っていた(座中爆笑)。ビョンホン兄さんも私も、楽しみながら演技をした。

―盲人演技が難しかったと思う。目を排除した状況で感情演技をするのは簡単ではないと思う。

チョン・ドヨン:ものすごく大変だった。ああ、涙が出そう(涙を流しながら) なんて厚かましいんだろう。そんなに大変だとは思わなかった。できることが何もなかった。焦点を合わせるのもうまくできないし、まばたきをすればいけないという身体的な限界のせいですごく苦しんだ。嫌気が差したり、監督にどうして瞬きをしてはいけないのか愚痴をこぼしたこともある。セリフも長いし、ワンシットも多いし。限界を感じた。シーンごとの撮影が終わると目が痛すぎて涙を流した。気持ちのようにうまくいかないから、すごく大変だった。

―監督はチョン・ドヨンならうまくやれると信じていたのではないか。

チョン・ドヨン:信じれるものを信じなくちゃ……まったく(笑)

―見ていたら、キム・ゴウンとかなり似ていた。

チョン・ドヨン:最初はキム・ゴウンと顔が似ていると思ったことはなく、作品を選ぶのが似ているとは思った。キム・ゴウンが“第2のチョン・ドヨン”と言われたこともあるし、ね。まだ若いのに大変な作品を選ぶところを見て、励ましてあげたかった。ある日、撮影の途中にゴウンが「私たち、本当に似てませんか?」と私とのツーショットを送ってきた。機嫌が悪かった。ハハ。この小娘が……?(笑) しかし、ずっと見てたら笑顔が私に似ていた。あ、もちろん返事はしなかった。

―キム・ゴウンが実力をうまく見せたと思うか。

チョン・ドヨン:もちろん足りない点もあるけど、非常に大変だったと思う。そんなに大きな感情を最初から最後まで持っていくことは、私でも難しかったはずだ。キム・ゴウンは自分なりに自分だけの色でうまく表現したと思う。

―アクションの訓練課程で一番大変だったことは?

チョン・ドヨン:ウォルソのアクションは踊るようにしなやかでなければならなかった。武術監督に古典舞踊を習ってみなさいと言われた。ターンや起き上がる動作などが似ていた。それで、私だけが古典舞踊を習ったけど、冗談じゃなくて、私は本当に体を動かすことが苦手だ。いくら練習してもできなかった。結局、武術の監督が3回ターンするシーンでも「高段者だから1回でいいよ」と勇気をくれた。ハハハ。

―イ・ビョンホンも最初はアクションが下手だと聞いた。

チョン・ドヨン:彼がアクションスクールに遅れて合流したからだ。みんなビョンホンさんは練習しなくてもいいのかと言いながらも、ハリウッド映画で刀を2つも持って振る舞っていたから上手いだろうと思っていた。ビョンホン兄さんが初めてアクションスクールに来て演技するところを見て、大変だと思った(座中爆笑)。兄さん自身も驚いたと思う。しかし不思議なのは、ビョンホン兄さんはアクションが少し足りなくても最後に眼差しの演技を見せると人々の間で感嘆詞が出る。改めてかっこいい俳優、いい俳優だと思った。

―キム・ゴウンに、チョン・ドヨン先輩は現場で怪我をしても我慢していたと聞いた。特別な理由があったのか。

チョン・ドヨン:本当にたくさん我慢した。本物の刀を持って演技をしたけど、誰かが怪我をすると臆病になって次の演技で萎縮する。アクションチームは私にうまく合わせてくれるけど、ゴウンも私も誰かが怪我をして萎縮するとそれをサポートしてくれる人がいないじゃないか。だから、ある程度大きな怪我じゃなければ話さなかった。私なりに姉らしい姿を見せた(笑)

―アクションも大事だったけど、感情も大事な作品だ。母性愛と愛の感性が映画の全般に漂っている。

チョン・ドヨン:母性愛よりは、基本的にメロの感情を中心にした。愛のためにすべてをかけた復讐を夢見るのではないか。ウォルソには確かに“侠”もあるけど、それに劣らない愛もあった。本当にすさまじい女だ。

―パク・フンシク監督からまたシナリオをもらったらやる気はあるか。

チョン・ドヨン:しません(座中爆笑) 実は、監督は私に「メモリーズ 追憶の剣」を最後に食堂をオープンすると話した。次期作として「愛を歌う花」を準備していることを私には内緒にした(笑) 私が「監督、次の作品を準備していると聞きました」と聞くと、「僕にまた違う、いいアイディアがある」と答えた。ハハハ。

―シナリオを選ぶ基準があるのか。

チョン・ドヨン:基本的に私が惹かれる物語は“愛”だと思う。強いストーリーだけど、基本的な情緒は全部メロだ。私こそ様々なジャンルを経験していない女優じゃないかな。

―ラブストーリーはいつまでできると思うのか。

チョン・ドヨン:死ぬまでしたい。愛の類型は年齢に関係なく様々でしょう?若い人だけに限らないと思う。

―「無頼漢」「メモリーズ 追憶の剣」と今年冬に公開される「男と女」はチョン・ドヨンにそれぞれどのような記憶として残るだろうか。

チョン・ドヨン:「男は女」はまだ見てない。「無頼漢」は荒い無頼漢の間で生きていくキム・ヘギョンというキャラクターをものすごく愛していた。熾烈に演じ、その物語、人物を本当に愛した。「メモリーズ 追憶の剣」は挫折、限界を感じさせた作品だ。まだ「男と女」は見てないけど、「無頼漢」に続き「メモリーズ 追憶の剣」まで重たい映画に連続で出演したら、私の作品だけど手に余るような気がした。

―「男と女」の次には明るい作品に出演できるだろうか。

チョン・ドヨン:明るい作品の出演オファーが入らない(笑) 周りは私に制作しなさいと言っているけれど、私がうまくやれることならするけど、誰もができることではないでしょう?私は演技をする時に一番血が熱い人だ。

―制作をしないなら、演出はどうか。

チョン・ドヨン:やればうまくやれると思う。ハハ。私は何でもできると思ってアクションと盲人演技にチャレンジしたけど、大変だった。演出は冷静な人がしなければいけないけど、私は冷静とは程遠い。私みたいに熱い映画を作るならどうかと思うけど。

―最近見た作品の中でやりたかったキャラクターはあるか。

チョン・ドヨン:映画「プランシスハ(Frances Ha)」のプランシスハ。愉快ながらも一見足りない、そんなキャラクターを演じてみたい。

記者 : キム・スジョン