「ワーキングガール」チョ・ヨジョン、先入観という殻を破って高く跳ぶ

TVREPORT |

俳優にとって先入観とは、ある時はその型にはめる殻であり、ある時は現実に安住できるようにする温かい巣のような存在だろう。その型に嵌まってイメージを消耗するか、殻を破って世の中に出てくるのかは完全に俳優本人の意志に任されている。女優チョ・ヨジョン(33)は徹底して後者を選んだ。ここ数年間セクシーで官能的なイメージを観客に披露してきたチョ・ヨジョンが、昨年からは想像を超える新しい一面を届けている。

キム・デウ監督の「情愛中毒」が世の中に初公開された時、ソン・スンホンとイム・ジヨンの衝撃の露出も注目されたが、関係者の間で最も話題になったのはチョ・ヨジョンの演技的な変身であった。只ならぬおばさんのオーラを表現したチョ・ヨジョンの演技は、まさに新鮮だった。観客を笑わせる才能も抜群だった。なぜこれまでこのような一面を披露してこなかったのか、残念に思うほどだった。

映画「ワーキングガール」(監督:チョン・ボムシク、制作:HONGFILM、SOOFILM)はおもちゃ会社の最高の有望株ボヒが出世のかかった発表でとんでもないミスをし、会社を解雇されてからナンヒとともに大人のおもちゃのビジネスに飛び込み、仕事と家庭の間で苦しむハプニング満載のストーリーを描いた作品だ。チョ・ヨジョンは完璧主義なキャリアウーマンだが、一夜にして解雇されるボヒ役を演じた。

今回の作品は一見「情愛中毒」の延長線にも見える。笑える上に可愛い。大人のおもちゃを題材にしているが、蓋を開けてみると家族の話だ。クララとイメージ対決を繰り広げるかと思われたが、実際は女性だけの友情を豊かに描いていた。映画は最初から最後までどんでん返しの連続だ。

しかし、これはあくまでも映画を見てからの話である。映画を見ていない人にとって、「ワーキングガール」はどこまでもチョ・ヨジョン&クララのセクシーコメディである。さらに監督が発言したクララの大人のおもちゃの小道具に関するコメントで公開前から予想外の議論が広がっていた。これに関する懸念を、チョ・ヨジョン本人もよく知っていた。そのためか、チョ・ヨジョンはインタビュー中に何度も涙をこらえた。知人たちの真心のこもった応援で心が癒やされたというチョ・ヨジョンは「なぜおかしいのに涙が出るんだろう」という一言で、これまでの苦悩が報われたような気持ちになったという。

「映画を一本撮って、PRをする過程において、その子(作品)の運命というのは他にあるみたいです。私たちが伝えようとした通りにだけ宣伝されるわけではないんですよね。作品の運命というのがあるんです。知人たちの応援にホッとしたのは、この作品が持っている本音に気づいてくれたからです。『私、簡単に泣いたり笑ったりする人じゃないの、知ってるよね?』と言う知人が、笑って泣いたという話を聞いて、すごく嬉しかったです(笑)」

以下はチョ・ヨジョンの一問一答である。

―映画の反応が良い。

チョ・ヨジョン:周りの知人や友人、家族は綺麗な言葉で「素敵」と言ってくれる人ではない。心から「お疲れ様」「面白かった」「涙も出た」と言ってもらえて、嬉しかった。お疲れ様と言われたくて演技をしているわけではないけれど、頑張ったというのを分かってもらえてすごく嬉しかった。

―映画を見るまでは、チョン・ボムシク監督が作った「ワーキングガール」がどんなものなのか、想像もつかなかった。

チョ・ヨジョン:ハハハ。私もそうだった。映画「1942奇談」を見て、只ならぬ監督だと思った。韓国のウェス・アンダーソンのようだった。「1942奇談」のマジックが本当に良かった。ホラー映画であんなマジックを使うなんて! 実のところ私は「1942奇談」をラブストーリー映画として見ている。ホラー映画というジャンルの中に、ラブストーリーの感情を溶けこませたことがすごいと思った。「ワーキングガール」も二人の女性のセクシーコメディというふうに宣伝されていたけれど、いざ蓋を開けてみると家族映画だったじゃないか。家族に対するメッセージを、大人のおもちゃという題材を通じて伝えている。他の人が一度もやったことのない方式で伝えたのだ。「ワーキングガール」は単線的な映画ではない。層が厚い。映画をご覧になった方々が、それに気付いてくださって感謝している。

―そういえば、前も母親役を演じていた。

チョ・ヨジョン:意外とたくさん演じてきている。母親役を演じることにわざと壁を作ったりはしない。28歳の頃、毎日ドラマ(月~金まで放送されるドラマ)で二人の子供のママを演じたこともある。考えてみれば「情愛中毒」もママになろうとしているキャラクターだ。「ポイントブランク~標的にされた男~」は妊婦だった。「後宮の秘密」もどちらかと言えば母親だったし。ハハハ。

―映画に登場する大人のおもちゃは、本当にユニークなものが多かった。

チョ・ヨジョン:例えばあまりにもリアリティに欠けていて「何あれ」と笑ってしまうものもあると思う。それなのに女性たちが「ワーキングガール」を見て違和感を覚えないのは、この映画がそれだけ健康的な映画だからだと思う。少し現実離れした、どちらかというと漫画的な設定だけど、だからこそ可愛いし。監督は、違和感なく明るく笑わせる力がある方だと思う。

―クララとの共演はどうだったのか。

チョ・ヨジョン:クララも私も、一日に撮らないといけないシーンや台詞が本当に多かった。お互いの役にしっかり入っていたけれど、個人的な交流はあまりなかった。私はただ役作りをして息を合わせただけなのに、クララはそれにとても感謝していた。俳優としてそれくらいの配慮は当たり前なのに。実際、クララは本当に努力派だった。

―キム・テウとの夫婦の演技の相性も抜群だった。

チョ・ヨジョン:テウ兄さんでなければ、ボヒを完成させるのは難しかったかもしれない。撮影の序盤からテウ兄さんが夫に見えた。現場に行くと、私の夫、私の娘がいる感じだった。どうしてだろう? 本当に不思議だった。兄さんは本当に全てをオープンにしてくれた。「ワーキングガール」は一見二人の女性のストーリーに見えるけど、実は家族の物語だ。私もテウ兄さんもそれを熟知して、渾身の力で演じたと思う。

―「春香秘伝 The Servant 房子伝」をきっかけに一度イメージが変わっていたが、「情愛中毒」をきっかけにまたイメージチェンジをした感じだ。

チョ・ヨジョン:その通りだ。これは果たして良いことだろうか。

―「情愛中毒」以降、オファーを受けるシナリオが変わってはいないか。

チョ・ヨジョン:ハハハ。あまり変わっていない。韓国映画で作られる女性のキャラクターというのは、実は似たり寄ったりだ。そんな意味から、「ワーキングガール」が本当にヒットしてくれれば嬉しい。自分の映画だからもちろん成功してほしいけど、他の様々な理由からもヒットして欲しいと思う。私を含めた他の女優たちに「女性同士の物語もヒットできるんだ!」というのを見せたい。

―実際、女優として感じる女性映画の不在はどれほどなのか。

チョ・ヨジョン:酷いと思う。「春香秘伝 The Servant 房子伝」「後宮の秘密」以降に入ってくるシナリオ、ジャンル、キャラクターは全て似ていた。その度に感じる。ああ、本当に女性キャラクターというのが存在しない中で私は劇的に「春香秘伝 The Servant 房子伝」「後宮の秘密」に出会っていたんだと。役者なら誰でも新しいものに挑戦してみたいと思うけれど、女優としてそれは簡単ではないのが現実だ。

―「情愛中毒」でチョ・ヨジョンの再発見が行われたとすると、「ワーキングガール」はその延長線にあるような感じだ。

チョ・ヨジョン:私は「情愛中毒」でここまで注目を浴びるとは思わなかった。予想していなかったことなので、とても意外だった。私はただキャラクターが面白そうで出演しただけなのに、「情愛中毒」のメディア試写会の日に私のシーンですごく笑いが出て不思議に思った。「情愛中毒」もそうだけど、「ワーキングガール」もわざわざ笑わせようと演じてはいない。女優にとって喜劇と悲劇の区分は重要ではない。その状況の中ではみんな切実なのに、状況が面白い状況であるだけだ。

―「青龍映画賞」で助演女優賞を獲得できず、残念には思わなかったか。

チョ・ヨジョン:全然! 女優が映画を撮ったからって毎年授賞式に呼ばれるわけではない。候補に選ばれただけでもう賞を頂いたも同然だ。その年に作られた数多くの映画の中から4~5人に絞った人が候補に挙がる。それだけでも光栄だし、ありがたい。俳優たちが賞を頂く気持ちで歩くのがレッドカーペットである。

―今年の年間計画は立ててあるか。

チョ・ヨジョン:昨年は、なんというか、すごく良かった。「情愛中毒」も「ポイントブランク~標的にされた男~」も公開された。今年は後悔しないのが目標だ。過ぎたことに後悔しないで常に最善を尽くす。未練を持って後悔するのが一番辛いと思う。「他の選択をしていれば……」などと思ったり。

―そろそろ恋愛や結婚もする頃だと思うが。

チョ・ヨジョン:「ワーキングガール」を撮影しながら、仕事ができるうちに一生懸命頑張ろうという思いが確信に変わった、ハハハ。自分の好きな仕事を職業にできるなんて、どれほど幸せなことだろうか。両親も私が働きたい時にもっと頑張ってほしいと言ってくれる。私は今が好きだ。ハハハ。

記者 : キム・スジョン、写真 : ムン・スジ