ク・ヘソン「二十歳の頃に中二病が訪れた…私にとっての10年は遅い」

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十数年前、オルチャン(美男美女)出身で世の中に顔を知らせた当時は、ク・ヘソン(30)の名前の前に「監督」という言葉がつくとは想像もしていなかった。オルチャンから女優に、女優から監督にと、常に予測できない軌道に乗って自身だけのカテゴリーを構築しているク・ヘソンは、確かに忠武路(チュンムロ:韓国映画業界の代名詞)でかけがえのない存在だ。

自身初の長編映画「妖術」(2010)を皮切りに「桃の木」(2012)で釜山(プサン)国際映画祭、ブリュッセル国際映画祭などに招待され、その演出力を認められたク・ヘソンが映画「Daughter」(制作:YES PRODUCTION)で戻ってきた。「Daughter」は歪んだ母性愛に執着する母と、彼女から逃れようとする娘の話を女性監督特有の繊細さで密度高く描いた作品だ。シム・ヘジン、ク・ヘソン、ヒョン・スンミン、ユン・ダギョンが出演し、6日に公開されて観客と触れ合っている。

演技、演出、音楽、美術、本まで。幅広い分野で精力的に活動しているク・ヘソンは「私がすごくて、能力があって、お金が沢山あって多くのことをしているわけではない」ときっぱり語った。むしろ人より遅く、少しゆっくりと人生という宿題を解いているというのがク・ヘソンの姿であるという。

「最近思うのは、私は速度が遅いということです。人より何か多くのことをしているかのように見えますが、実は逆に遅く動いている方なんです。私は今、やっと進路を探していますし、成長しているんです。実際に二十歳の頃に中二病が来て、小学生がやる行動を中学時代にやっていました。みんな卒業して就職している年である今も依然学校に通っていますし。30代の半ば頃に、ようやく卒業できると思います。約10年は遅い感じですね。悟る速度もワンテンポ遅れています」

以下はク・ヘソンとの一問一答。

―まず、このようなストーリーはどうやって思いついたのか。

ク・ヘソン:最初は子供を産んだ友人と会ってお喋りをしている間に浮かんだ。家族のことをうっとうしいと思っていた友人が、いつの間にか家族というものを構築しているのを見て、人は本当に皮肉だなと思った。その場で友達同士でそれぞれ自分の暗い過去を打ち明けたけれど、そこから得たモチーフが映画に多く反映された。

―自伝的なストーリーではないということか。

ク・ヘソン:廊下式のアパート、いつも朝早く出勤して遅く家に帰る父などの設定は自伝的とも言える。

―劇中で母(シム・ヘジン)は娘にかなり厳しくヒステリックだ。

ク・ヘソン:映画には極端なシーンのみが流れるのでより極端に見えるかもしれないが、実際はもっとひどいケースも多い。私だけでなく、友人たちの話を聞いていると母たちのヒステリーとは……。特に母たちは娘の生理が始まると妊娠の可能性に対する恐ろしさ、脅迫感を感じるみたいだ。そこで、娘たちは恋愛をしながらなんとなく罪悪感を抱いたりもする。

―お母さんはこの映画を見たのか。

ク・ヘソン:もしかしたら誤解するのではと思って、まだ見せていない。

―ク・ヘソンはどんな娘なのか。

ク・ヘソン:綺麗な言葉はあまり言えない、無口な娘。優しくはあまりできない。なのに、恋人の母親に会うとすごく優しくする。ハハハ。

―サン(主人公名)は母の暴力に近いヒステリーがあっても、ただ暗いだけのキャラクターではない。

ク・ヘソン:母が人生のすべてだという時期ではないので。母親とつながっている臍帯血を切る瞬間は、他でもなく初恋を始める時だという。サンも恋人と日曜に何をしようかが大事であって、目の前の母が厳しいことを言うのは重要ではない。考えてみると、私もそうだった。母には内緒で靴を買って、部屋に隠しておいて恋人とのデートがあると履いて行ったり(笑)

―シム・ヘジンとの共演はどうだったのか。女優対女優としてだけでなく、女優対監督としても接するべきだったと思うが。

ク・ヘソン:大変ではなかったが、難しかった。どう接すればいいのか分からなかった。先輩の演技に邪魔になるのではないかと心配していた。尊敬する方なので難しかった。

写真=映画「Daughter」スチールカット
―普段は俳優たちに演技のディレクションをどのようにしているか。

ク・ヘソン:俳優に任せる方だ。もちろん、例えば泣くシーンなのに俳優が笑っているならそれは指摘するけれど。だが、そういうふうに作品を解釈する俳優はいないので。俳優の感情を信じ、任せている。

―「Daughter」では演出に加え、演技も披露した。

ク・ヘソン:本当に恥ずかしくて恥ずかしくて(笑) ずっと「なぜこれをやっているんだろう」と思っていた。

―自身の監督作で初めて演技までした理由は何か。

ク・ヘソン:まず最初の理由は予算だった。私が参加して制作費を減らすのだ。2番目の理由はやったことのないキャラクターだったので。いつも明るいキャラクターをやってきたし、またそんなキャラクターのオファーしか入ってこない。自分の作品でなければ、いつこんな演技をすることができるんだろうと思った。

―女優ク・ヘソンが見る監督ク・ヘソン、監督ク・ヘソンが見る女優ク・ヘソンはどうか。

ク・ヘソン:女優として見る監督ク・ヘソンはまだまとまっていないと思う。監督として見る女優ク・ヘソンも同じだ。「Daughter」で両方をこなすことですごく大変だったが、例えば監督として演出をしている中で、私の出番を撮影するために女優モードに切り替える時、すごく恥ずかしかった。メイクの修正も恥ずかしく、自分でやったりした。幸いなことに、現場の誰一人そんな自分を恥ずかしく思わなかったのでそれがありがたかった。

―演技、演出、音楽、美術まで。多方面で活躍している本当の理由は何か。

ク・ヘソン:出発は絵だった。絵を描いていて、ある日作曲をするようになった。美術から始まったのが演出まですることになって。10代の時は女優という仕事を想像もしていなかった。数年後には本当に想像できないことをやっているかもしれないとは思っていた。とりあえず、多方面で活動しているその根底には表現したい欲求というのが大きくある。性格自体がまずは行動してから考えるタイプだ。中学1年生の時に、事務所に自分で作ったアルバムを送ったほどだ。

―本業は何だと思っているのか。

ク・ヘソン:本業とは、お金を稼ぐ仕事である。ならばそれは演技だ。まだ他の仕事はお金にはならない。お金が沢山あるからやっていることでもないし。ただ純粋な夢としてやっていることが多い。職業のようにお金をもらってやっているというところでは、演技が私の本業だ。もちろん、いつかその本業が変わるかもしれないけれど。

―最近、部屋が3坪であるというインタビューが話題となった。

ク・ヘソン:私の部屋にはあまり物がない。20代の頃は、すごくたくさん買い物をしていた。一度着たら二度と着ないようなワンピースとか、使わないはずのお皿とか……。私がもしこの世にいなくなったら、誰がこれを整理してくれるんだろうと思うようになった。引っ越しながら周りの人に配ったりして、今は3坪に相応しい荷物だけがある。物を置かなくなったら、人生がシンプルになった。部屋で一人でぼうっとすることもできるし。今日は何のラーメンを食べようかと悩むのも良い。

―ハハハ。何かを悟ったように見える。

ク・ヘソン:ハハハ。まだまだだ。女優は仕事がない時は非正規社員のようなものだ。持っているのはただ不安な時間しかない。貯めておいたお金で安住しなければならないという不安がある。ここ10年を振り返ってみると、インターネットの検索記録数行でまとめることができる。私としては10年を投資したものだが、他の人にはたったの数行にすぎない。昔は基本的に3~4年間のプランを立てて暮らしてきたが、今はゆっくり風を感じながら生きてもいいと思う。時には目の前が真っ暗になる。「信じていられるところを作っておかないと」「私が考えもしなかったことが押し寄せてきて、もしこの仕事ができなくなっても頑張って生きていけるほどの心構えでないと」などを思いながら生きている。

記者 : キム・スジョン、写真 : イ・ソンファ