GlenCheck「テレビに出て有名になるよりも、中身がびっしり詰まったものを作りたい」

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GlenCheckは新たな時代の“ロックスター”だ。しかし、ここではロックをジャンルとして区別しない。それは、自分たちのコンテンツ(音楽及び映像)を自分たちならではの方法で伝達できるアーティストだからだ。似たような意味でスティーブ・ジョブズもロックスターだと言えるだろう。GlenCheckはレトロなシンセポップからトレンディなエレクトロポップに至るまで、爽快感たっぷりのサウンドを独自の“クール”なスタイルで仕上げている。前回のEP盤「Cliche」以降、映像を作るグラフィックデザイナーやスタイルを決めるファッションデザイナーなどが集まったグループ「The Basement Resistance」とコラボレーションしてコンテンツを製作した。その結果、完成度の高いアルバム、奇抜な衣装とミュージックビデオがクオリティの高い作品に仕上がった。そして、ステージ上で楽しそうに歌うGlenCheckの魅力に多くの女性ファンが虜になった。最近2枚目のフルアルバム「Youth!」をリリースし、イベントや年末公演準備の真っ最中であるGlenCheck(キム・ジュンウォンと、カン・ヒョクジュン)と会った。二人はクールで口数が少ないと聞いていたが予想とは異なり、音楽について聞くと二人は真剣に答えてくれた。

―アルバムを制作を控え、今年1月にスペインのバルセロナに旅行に行ったと聞いた。

キム・ジュンウォン:旅行に行くと色んなアイディアを得ることができる。1stアルバム制作の時もフランスとベルギーに行ったし、今回は2ヶ月ほど旅行に行った。僕たち二人だけではなく、グラフィックと衣装を担当するグループ(The Basement Resistance)も一緒に行っている。僕たちは各分野の専門家たちが集まってコラボレーションすることにこだわりを持っており、実際にそのような方法で制作してきた。前回のアルバム制作では満足のいく結果は出たが、チームワークの面では少し物足りない気がした。僕たちは音楽と映像の両方に注目して欲しかったが、前回のアルバムでは別のパートが音楽の足りない部分をカバーしてくれた感じがした。だから、しっかりとコラボレーションをするためにグループと一緒にスペインに出発した。一緒に旅行に行き、同じことにインスピレーションを受ける過程が必要だと思った。スタジオで常に一緒にいるが、荷物をまとめ一緒に旅に出て同じ物を見て、一緒にその環境に適応することはスタジオにいることとは違う。そんな理由でアルバム制作費のほとんどを旅行に費やした。

―GlenCheckが音楽と映像を総合的に考えていることが、ファンにセンセーショナルにアプローチしているようだ。そのようなコラボレーションに対するこだわりを何故持つようになったのか。

キム・ジュンウォン:理由は単純で、GlenCheckを始めた時から音楽だけのバンドにはなりたくなかった。二人とも映像、ファッションなどに関心が高かったから、色んなものを総合して音楽に溶け込ませたかった。だから気が合う友人とグループを作ることになった。皆が集まってからは色んなアイデアが溢れ出てくるようになった。

―グループでの作業はどのように進めている?

カン・ヒョクジュン:今回の作業の場合、スペインに到着して真っ先に会議をした。「Youth!」というアルバムのタイトルを決め、それに関するキーワードを整理した。それと同時にミュージックビデオのコンセプトや映像作業について話し合った。

キム・ジュンウォン:アルバムのコンセプトを決めた後、曲を作り始めた、コンセプトを決めることに結構時間がかかった。

―「Youth!」をタイトルに決めた理由は?

キム・ジュンウォン:グループに所属するメンバーたちは青春に憧れを持っていた。僕たちは皆若いけど若者らしく生きていないような気がするし、同年代の友人たちとは少し異なる人生を歩んでいると思う。だから一般的な若者たちが当たり前に楽しむ文化について話し合った。「Youth」という言葉は簡単だけど、その中に哲学を盛り込めたら良いなと思った。そのため「Youth」を思い浮かばせるシンボル、事物、地域、キーワードなどを共有し、それらを音楽とグラフィックに溶け込ませた。アルバムのコンセプトにするためには、単純に言葉の意味が良いだけではダメだ。その言葉を通して具体的なイメージを描き、それを視覚的に表現しなければならないし、メロディもある程度考えておかなければならない。イメージとメロディを合わせて第3のものを作り出さなければならない。そのような過程を経て僕たちが予想しなかった何か新しいものが生まれたら良いなと思っている。計画通りに進むことなんて面白くないから。

―本人たちは若者らしく生きていないと思っているのか?ステージ上では誰よりも生き生きとしているが。

カン・ヒョクジュン:ステージ上にいる僕たちよりも、ステージの下にいる観客の皆さんの方が生き生きしている。僕たちはステージ上で仕事をしているから(笑)

キム・ジュンウォン:もちろんステージの上にいる時が一番楽しいし、良いエネルギーを受けられる。でもステージから降りるとスケジュールがびっしり詰まっている。今は引っ越ししたけど、最近まで光が入らない地下にあるスタジオで2年半過ごしていた。二人とも外出することがあまり好きではないし地下に閉じこもっていたから、若者らしい生活とはかけ離れた生活を送っていたと思う。

―「Youth!」は、2枚のCDに計11曲が収録されている。ランニングタイムを考えると1枚のCDに収まる曲だが、あえて2枚組にした理由は?

キム・ジュンウォン:GlenCheckとして活動しながら2つの作業方法が生まれた。1枚目のフルアルバム「Haute Couture」では、3人が中心となって作業をした。以降、EP盤を出しながらコンピューターで作業する方法を習得した。今回のアルバムではその両方を試したかった。CD1ではギター、鍵盤など、楽器の音をたくさん入れ、CD2にはボーカルを除いた全ての音をコンピューターで作業した。レコーディングをしたもの(CD1)と、コンピューターの音源(CD2)というのがこの二つの大きな違いだ。音楽のスタイル面で言うと、CD1が多彩なスタイルが複合的に表現されているとすれば、CD2ではディスコやファンクなど、特定のジャンルに焦点を合わせている。元々は1枚のCDに全ての曲を入れようとしたが、そうすると整理ができないと思った。僕たちの意図を適切に伝えるためには、CD1を聞いてCDを抜いた後にCD2を入れて気持ちを新たにしてから聞いてもらうことが必要だと考えた。

―エレクトロポップも様々なスタイルがある。部屋で聞くような鑑賞用の音楽とクラブで聞くようなダンス音楽に分けられるが、GlenCheckの場合はどちらなのか?

カン・ヒョクジュン:家で集中して聞きながら踊るスタイルかな(笑)

キム・ジュンウォン:どうだろう。あえて分けるとしたら、観賞用の音楽だと言いたい。アルバムを聞く時は落ち着いて集中して聞いてほしいから。僕たちも踊りながら音楽を作っている訳ではないし(笑) もちろん、踊りながら制作する人たちもいる。例えば色んな人たちが集まり、バンドを演奏しながら曲を作ったりすることもある。僕たちの場合、じっと座って慎重にスケッチをするように曲を作っている。楽しい曲ではあるけど、集中して聞くと僕たちの意図をより知ることができると思う。

―GlenCheckの音楽にはダンスをしながら楽しめるクラブミュージック的な要素もある。

キム・ジュンウォン:クラブ音楽ではない。僕たちの音楽はDJが好むような音楽ではないし、それよりはロックバンドに近い。電子音楽を作る際もシンガーソングライダーのように自分の名前を掲げて作業をしている。

―GlenCheckがダフト・パンクの「Something About Us」「Get Lucky」をカバーしている映像を見た。「Get Lucky」が収録されたダフト・パンクのニューアルバム「ランダム・アクセス・メモリーズ」は今年、世界的に話題になったアルバムだ。それについてどう思っているのか?

カン・ヒョクジュン:僕たちもダフト・パンクのファンだ。ご存知のように今回のダフト・パンクのアルバムは、これまでのものとはかなり違う。別の見方をするとダフト・パンクがこれまでやってきた音楽は、僕たちのアルバム「Youth!」のCD2に近い作業方法で、今回のアルバム「ランダム・アクセス・メモリーズ」は、CD1のような方法で作業したように感じる。ダフト・パンクはR&B音楽に対してこだわりを持っていたから、今回のアルバムでそれを実現したのではないかと僕は思う。

―「Youth!」の収録曲の中で「I'VE GOT THIS FEELING」は、GlenCheckがR&Bとファンクに対するこだわりを詰め込んだ曲だとされているが、この曲は正統派R&Bとはほど遠い。これはGlenCheckなりの表現だろうか?

キム・ジュンウォン:僕たちは正式に音楽を学んでいない。だから、ある特定のスタイルを作りたいと思ったら、たくさん勉強しなければならない。例えばプロの演奏者たちのようにソウルフルな曲を即席で演奏することは難しい。その代わり僕たちはソウルフルだと思うメロディを集め、あれこれ工夫して付け足したり、取り除いたりする作業を繰り返した。この曲は正統派R&Bとは言えないが、僕たちなりに表現した曲だ。

―GlenCheckの音楽は80年代のシンセポップから最近流行のエレクトロポップまで、多彩な要素が感じられると言われているが、本人たちはどんな音楽が好みなのか?

キム・ジュンウォン:僕たちは音楽の好みがそれほど独特ではないので、ジャスティス(Justice)、ベル・アンド・セバスチャン(Belle and Sebastian)、ジェイムス・ブレイク(James Blake)など、流行っているグループの音楽はほとんど聞くタイプだ。ジェイムス・ブレイクが好きだけど、スクリレックス(Skrillex)は僕たちの好みではない。ダブステップと言っても、全く同じ音楽ではないから(笑) 前回のアルバム制作の時はニュー・オーダー(New Order)に近かったとしても、同じ音楽なんてないんだから(笑) 前回のアルバムを制作する時、ニュー・オーダー、デペッシュ・モード(Depeche Mode)、ペット・ショップ・ボーイズ(Pet Shop Boys)など80年代の音楽をたくさん聞いたけど、今回のアルバム制作では80年代後半から90年代初期の音楽を主に聞いた。マイケル・ジャクソン(Michael Jackson)で言うと、「Thriller」よりは「Dangerous」の方をもっと聞いていた感じだ。プリンス(Prince)の90年代のニュージャックスウィングもよく聞いた。

―よくGlenCheckの音楽はポップソングだと評価されている。最近は音楽博覧会「MU:CON SEOUL」を通して世界的なプロデューサー、スティーヴ・リリーホワイト(Steve Lillywhite)からラブコールを受けたが、海外進出の可能性はあるのか?

キム・ジュンウォン:その話を聞いた時、凄く光栄だった。スティーヴ・リリーホワイトとどんなコラボレーションをするのかはまだ分からない。僕たちはまだプロデューサー指導の下で作業をしたことが一度もないから。僕たちの音楽が海外で知られることは、それだけ多くの人が聞いてくれているということだから、本当に有難いことだ。でも僕たちは海外に進出することが目標ではない。僕たちは二人とも長く海外生活をしていたので、もし海外で音楽活動をしようと思っていたなら十分可能だったはずだ。でも僕たちはあくまで韓国に基盤を置いて活動したい。周りからは海外に出て活動する方がもっと良いのではと言われることもあるけど、僕たちは韓国で音楽活動をしたい。

―以前、ポットキャストの放送をしていたし、テレビ出演のオファーもかなりあったと聞いたが?

キム・ジュンウォン:ポットキャストは僕たちに合うフォーマットを作りたくて始めたことだ。何よりも自由で良かった。テレビではできないことにもチャレンジしてみたし。テレビは決まった形式があり、その中に僕たちには合わない部分もある。テレビに出て僕たちの顔を知ってもらって有名になるよりは、その時間に僕たちに合うコンテンツを少しでも多く作ることが有意義だと思った。何かを残すことができるように“中身がびっしり詰まったもの”を作りたかった。イベントを企画したり、僕たちが活躍している分野で良い影響を及ぼす音楽を作ってみたい。

―今企画中のイベントはあるのか?

キム・ジュンウォン:11月30日土曜日に弘大(ホンデ)aA Design Museumでイベントを開催する。ヨーロッパのアーティストを韓国に紹介したくて企画した。僕たちのグループに所属しているニコラ・マッソン(Nicolas Masson)と一緒に企画したイベントだ。ニコラ・マッソンは若い頃からフランスで「Shiny Disco Club」というレーベルを運営しており、GlenCheckのイベントやプロモーションにも協力してくれている。彼を通してその分野で人気があるアーティストを招待して交流したいと思っている。

―二人は高校生の時に初めて出会ったと聞いた。初めて出会った時、こんなに大きく音楽活動をすると予想したのか?

キム・ジュンウォン:もちろん高校生の頃は音楽を職業にするつもりはなかった。その時の二人はただ趣味でギターを弾く程度だった。でも着実にやっていく中で少しずつ成長していた。高校卒業後、ソウルで1人暮らししている部屋に集まり、遊びながらデモテープも作成したりして、だんだん真剣に音楽と向き合うようになり、ここまで来た。

―今後の公演の計画は?

キム・ジュンウォン:今年は年末に単独公演があり、来年は海外公演の計画がたくさんある。3月には「サウス・バイ・サウスウエスト(SXSW)」を含む北米ツアーを回る計画だ。ヨーロッパでのプロモーションも企画している。年末公演にはたくさんの人に来てほしい。いつも話していることだけど、僕たちの音楽が気に入ったら聞き、気に入らなかったら聞かなくても良い。音楽は楽しむためのものだから。

記者 : クォン・ソクジョン、写真 : サウンドホリック、翻訳 : チェ・ユンジョン