Vol.1 ― 「同窓生」BIGBANGのT.O.P、チェ・スンヒョンが語る本物と偽物

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俳優をしないと勿体無い眼差しの持ち主だ。俳優としてどこか訳ありのような眼差しを持っていること以上に大きな恵みはあるのだろうか。BIGBANGのT.O.P(本名:チェ・スンヒョン、26歳)は祝福された遺伝子を持つ歌手であり俳優だ。

BIGBANGとしてデビューして6年が経った。音楽界では多くの後輩が憧れる大先輩となったが、スクリーンでは貫禄を持つT.O.Pではなく初々しい新人俳優チェ・スンヒョンだ。2010年に「戦火の中へ」(監督:イ・ジェハン)に出演して以来、2度目の挑戦に出たチェ・スンヒョンは、より一層成熟した姿で観客の前に戻ってきた。BIGBANGのT.O.Pではなく、俳優チェ・スンヒョンとしての香りを漂わせて。

北朝鮮からのスパイを題材にした映画「同窓生」(監督:パク・ホンス、制作:THE LAMP、ファングムムルコギ)で韓国に来たスパイのリ・ミョンフン役を演じたチェ・スンヒョンは、全113分中100分は出ていると言っても過言ではないほどストーリー全体を導いて行った。映画デビュー作「戦火の中へ」では学徒兵の一人として出演し、先輩たちが率いるままついていくことで精一杯だった彼が3年で主人公を務め、一人で作品をリードした。俳優としての地位を固めたことを知らせるきっかけにもなったが、その一方では新人として主人公を務めることに対するプレッシャーも大きかったはずだ。

「『戦火の中へ』でたくさんの賞を頂きました。苦労をしながら撮影したことをみなさんが分かってくださり、評価してくださって感謝しました。ですが、僕自身が思うには、僕は多くの賞を頂いた割には観客を満足させられていなかったと思います。元々僕自身には冷静な評価をするほうですが、当時は気付いていませんでした。僕の演技力についてきちんと判断できるようになるまで1~2年程かかりました。『戦火の中へ』は当時の僕にできるものは全て引き出した作品だと思っていますが、完璧ではありませんでした。今になってやっと気付いたんです。『同窓生』も2年ほど過ぎたら分かるのではないでしょうか?(笑)」

後になって考えてみると、自分の短所がよく見えるというチェ・スンヒョン。愛情を持っている作品である故に、冷静な自分でも冷静になれないと唇を噛んだ。そのためだろうか?彼は何回も「怒りを感じる」と呪文のように繰り返した。一体どこからこの怒りが出てくるのか分からないが、何回も怒りを感じると心境を打ち明けた。最初は新人として形式的に口にする謙遜かと思ったが、彼の怒りは予想以上に真剣なものだった。彼は「同窓生」の試写会頃から怒りを感じ始めたと告白した。

「昨日も怒りを感じて、一昨日もそうでした。今日もそうなんです。こういうことってありますよね。良い姿だけを見せたいのに、劇中でずっと僕だけが出るので、短所もずっと出ていることになるし……。また、苦労をして撮影した作品なのに2時間の試写会で公開されるそれだけが全てだなんて、なぜか虚しくなりました。何となく焦って、恥ずかしくて怒りを感じるのではないでしょうか。そう、愛する恋人を見送る気持ちが今の気持ちにぴったりだと思います。信じてもらえないかもしれないですが、今も気が立っています。恋人が去っていくのに、怒りを感じるのも当たり前でしょう。公開日まではずっと頭にきているかもしれません。それまではずっと気が立った状態だと思います(笑)」

しばらくの間、この言葉が偽りではないかと思ったが、彼の表情がまたも真剣になった。相手を動揺させる彼は本当の魔物なのかもしれない。チェ・スンヒョンは自分にとって役の分量よりも存在感を優先すると伝えた。ワンシーンのみだとしても、観客に強烈な存在感を届けたいという。「同窓生」では眼差しの演技で十分にその存在感を見せ付けたが、まだ物足りない部分が多いという。

「眼差しの演技に力を入れたのは事実です。そうしないとリ・ミョンフンを表現することはできないと思いました。沈黙することが多いし、何の感情も持っていないように見えても意外な場面で喋り始め、眼差しが変わるんです。そのような細かい部分に気を配りました。眼差しには真心がこもっていなければならないと思います。観客と共に呼吸するには、主人公の眼差しが重要なんですね。言葉にしなくても、僕がどのような心理状態なのかを語ることができます。おかげで訳ありのリ・ミョンフンになることができました」

「同窓生」では眼差しの演技も抜群だったが、彼のモッパン(食べるシーン)の演技も予想を超えるものだった。ステーキやパスタを好みそうな彼が、良い感じに焼きあがったかぼちゃのチヂミを美味しそうに食べる姿が最高である。それだけではない。屋台の席に座ってクッパを急いで食べ、カクテキ(大根のキムチ)を一つ口の中に入れて見せる幸せな表情が観客に予想外の笑いを届ける。ハ・ジョンウとユン・フを継ぐ、モッパンの新星と言っても過言ではない。

食べ物の話を始めると、クールなチェ・スンヒョンは去り、嬉しそうに料理の味を絶賛する少年の姿へと変身した。劇中の料理が本当に美味しかったという彼は、普段から食べることが大好きだと目を輝かせた。

「パク・ホンス監督が料理を綺麗に撮りたいと言って、特別にフードコーディネーターの方まで呼んで撮影したシーンです。料理は見た目も綺麗で、味も美味しかったです。しかも、かぼちゃのチヂミを食べるシーンはその前に食事をした状態でした。お腹が一杯なのに、料理が美味しいので全部食べられました。用意された料理を、シーンが終わってから口から出すとかはしませんよ。クッパみたいなものは普段あまり食べないだろうと思われがちですが、意外とよく食べます。僕が食べれないのは発酵させたホンオフェ(ガンギエイの刺身)とタッパル(鶏の足)の2つしかありません。僕なりに女性のように綺麗に食べようと思いましたが、やりすぎだったでしょうか?(笑)」

ハ・ジョンウのモッパンに負けないくらい美味しそうに食べる演技だったという記者からの褒め言葉に、彼は「僕なんかがハ・ジョンウ先輩に追いつくことはできない。あんなに美味しそうに食べることはできない」と謙遜した。

「あの時は寒くてお腹が空いていたので本気で食べたんです。絶対に偽物の演技はしたくないと思います。歌も同じですね。ステージで走りたくなければ走りません(笑) もちろんステージに上がると、走りたくないと思っていても歌が始まると自然に走りたくなります。ただその時の状況に身を委ねます。僕が偽物の演技をすれば、観客にも全部伝わりますからね。俳優としての演技をしていることが目に見えますから。これからも偽物ではなく、本物を見せられる人になりたいです」

記者 : チョ・ジヨン、写真 : ムン・スジ