「ソウォン」オム・ジウォン“作品のことを思い出すと今でも感情が湧き上がってくる”

10asia |

もう10月だ。今年も残すところ3ヶ月を切った今、オム・ジウォンには願いがある。それは映画「ソウォン 願い」の温かさが観客にそのまま伝わることだ。それだけオム・ジウォンは真心を込めて母親のミヒ役を務めた。服装から話し方、そして行動まで。だからこそ、彼女は演技ではない、本物のソウォンの母親になることができた。

「ソウォン 願い」は重いテーマを扱った映画だ。児童性的虐待というテーマが不快に思えて、映画を見たくないと思う人もいるだろう。2年前、オム・ジウォンも映画のシナリオを渡された時に同じ気持ちだった。だが、JTBC週末ドラマ「限りない愛」の撮影をしていた時、女優ソン・ユナの勧めでオム・ジウォンは今回の映画に出演することを決心した。オム・ジウォンの心を動かしたものとは一体何だろう。

―出産経験のない女優が母親役と妻役を自然に演じるのは簡単ではなかったと思う。

オム・ジウォン:解決しなければならない課題であり、女優としてやり遂げなければならない挑戦だった。ミヒという人物の話し方、態度、行動を一つずつ積み重ねて、立体的に描こうと努めた。シナリオを読んで私が頭の中で描いたミヒは、純朴で無愛想な慶尚道(キョンサンド)の女性だったが、とても素晴らしい女性だ。夫婦関係もとても良い。本当は愛してるけど、言葉では「ご飯食べた?」「寝るよ」と無愛想な言葉を投げる。子供に対しては一般的な母親のように格別な愛情を持っているが、塾に通わせるような教育熱心な母親ではない。頭の中でミヒという人物を描いたら、母親と妻としての演技がより自然になった。

―もしかしてミヒの衣装も自分で選んだのか。

オム・ジウォン:(目を丸くして)その通りだ!ミヒが家でどんな服を着ているのかと考えてみた。この女性なら、特に“自分の服”は持っていなさそうで、夫が着ていた古い服を着ているような気がした。日常生活で乱れた感じの服がたくさんあればいいなと思った。衣装チームで準備した服でわざと着古した感じを出そうとしたが、生活の痕跡が残っていなかった。だから私の持っている服の中から古くなった服、私の痕跡が残っている服を選んだ。

―ソウォンの役を務めたイレは幼い8歳の女の子だが、呼吸を合わせるのは難しくなかったのか。

オム・ジウォン:呼吸は上手く合っていた。イレは子供としての可愛らしさと、女優としての根性が上手く混じり合っていて撮影は順調に進んだ。「あれ?子役なのにこんなこともできるんだ。凄い」と思ったくらいだ。

―イレは不思議にも大人の顔を持っていた。

オム・ジウォン:(手を叩きながら)そうそう、大人の顔!感情や表情もそうだし。不思議だったのが、治療を受けるシーンで、イレの顔が大人のように変わった。「撮影しながらイレが成長したのか、突然大人の表情に変わった」とソル・ギョング兄さんと話した。どうしても時間のかかる衣装の着替えなどもあって、いろんなことで精神的に疲れていたのかもしれない。そのような感情と自分の演じた寂しい感情が混じって、そのような表情が出たようだ。退院をして日常生活に戻りながら、序盤の顔に戻ってきた。

―映画の中で「他のみんなも同じことを経験すればいいのに」という台詞がある。最初聞いた時は酷いと思ったが、後半になるにつれ、ミヒの気持ちが理解できた。この台詞を初めて目にした時、酷いとは思わなかったのか。

オム・ジウォン:最初にシナリオを読んだ時に、心に深く刻み込まれたシーンが2つある。1番目は病院に入院した時に友達と笑いながら突然泣き出すシーンと、2番目はカウンセラーにミヒへの本当の気持ちを打ち明けるシーンだった。ミヒが事件を経験しながら誰にも話せなかった自分の気持ちを、身近な友達ではなく他人に初めて打ち明ける。自分の本当の秘密、心の傷を何の関わりもない赤の他人に話しながら打ち明けることができたようだ。母親にも治療の時間が必要だったが「ミヒもだんだん良くなっている」と感じた。(彼女の台詞を通じて)彼女が話したかったことは、「朝起きたら、全て夢だったら良いのに」ということであり、この台詞を通じてそれでも生き続けなければならないという意志を見せているようだった。

―重いテーマであっただけに、撮影現場の雰囲気が気になる。

オム・ジウォン:とても良い雰囲気だった。重いテーマの映画だったけど、イ・ジュンイク監督も常に明るく笑う方だった。最高の現場で素晴らしいスタッフの方々とみんなが一つになって「ソウォン 願い」を作り上げた。技術試写会の時は、休んでもいいスタッフたちがただ映画が見たくて、ほとんど来ていた。そのような姿を見ながら「ソウォン 願い」が愛情を込めて作られた作品だということを感じた。

―撮影が終了してしまい、心残りがあると思う。

オム・ジウォン:余韻が多く残ったため、みんな簡単にこの映画から抜け出せなかった。今考えるとまたその時の感情が湧き上がってくる。撮影自体は幸せいっぱいの現場で楽しかった。

―そういえば「限りない愛」に続き、今回の映画でもキム・ヘスクと再び共演した。

オム・ジウォン:キム・ヘスク先輩は演技のメンター(良き助言者)であり、お母さんだ。「ソウォン 願い」は、私にとって知らない母親の気持ちを表現するという挑戦であり、課題でもある作品だった。だけど、キム・ヘスク先輩がそばにいてくださってとても心強かったし、力にもなった。いつも撮影が終わると先輩と目を合わせて、お互いに上手く演じれたのかを確認した(笑) それ以外にも私がミヒの役に集中できるように、たくさんの方が支えてくれた。ソル・ギョング兄さん、キム・ヘスク先輩、ラ・ミラン先輩の助けがなく、一人でミヒを演じていたなら「ソウォン 願い」での今のミヒとは違うミヒを演じていただろう。私一人で成し遂げたことだとは全く思っていない。

―2年前に「ソウォン 願い」の出演をオファーされた時、断ろうとしたと聞いた。だが、女優ソン・ユナの勧めで出演することを決心した。心を変えさせたのは何なのか。

オム・ジウォン:こんなに重いテーマをどうして私が演じなければならないのか」と思った。私よりも結婚して、子供がいる女優の方が上手く演じられると思った。2年が経ち、「限りない愛」に出演していた時、この作品を女優ソン・ユナさんが勧めてくれた。突然頭の中で「あの時の作品かも」と浮かんだ。その翌日、シナリオが届いたけど“あの時の作品”だった。読む前からこの作品は私が演じるべき作品だと感じた。イ・ジュンイク監督が演出を担当することで、人々の物語がメインとなった。物語が展開していく様子が温かくて、(シナリオ)を閉じた時には素晴らしい映画だと思った。そのような理由で、未熟かもしれないが上手く演じてみたかった。

―2ヶ月半ほどの撮影が終わって余韻がたくさん残ったと思うが、元の日常に戻るのが大変ではなかったのか。

オム・ジウォン:自分でも心配した部分である。俳優が作品に没頭した後、元の生活に戻るまでには時間が必要だ。不思議な気持ちで、ふわふわと浮いているような気持ちから普通の生活に戻るまでにたくさんの訓練を積み重ねた。早く回復できるようにたくさん寝たり、旅行に行ったりした。

―この前、香港旅行に行ってきた写真をTwitterに掲載した。香港旅行は回復するのに役に立ったのか。

オム・ジウォン:「限りない愛」が終わってから南米旅行に行ってきた。その後、「ソウォン 願い」の撮影が始まったが、終盤頃にまた新しい作品が入ってきた。回復する時間を取れないまま演技の準備に入ったので大変だった。だけどドラマが延長され、このままではダメだと思い、香港旅行に行った。何か決まったり問題が起きたらすぐに戻れる距離の場所を選んだ。

―もう10月だ。今年中に成し遂げたい願い事はあるのか。

オム・ジウォン:願い事?時間があまりにも早く経った(笑) 今年は「ソウォン 願い」だけを思いながら時間を過ごした。私だけでなく、すべてのスタッフと監督が、そして俳優たちが温かい心で欲を出さずに、真心を込めて作った作品だ。「ソウォン 願い」が多くの人々から愛されたらいいなと切に願っている。見終わった後、温かさを感じてほしい。

記者 : イ・ウナ、写真 : ク・ヘジョン、翻訳 : チェ・ユンジョン