「チャン・オクチョン」イ・サンヨプ“最高の片思い演技をお見せしたい”

OSEN |

俳優イ・サンヨプはいつも遠くから一人の女性を切ない目で見つめている。勇気を出して近づくこともできず、一度もまともに気持ちを表現することもできず、ひたすらその場に立っている。それでもイ・サンヨプという俳優はなんとなく女性の心を揺さぶり、自身の領域に静かに引き込む。

イ・サンヨブは最近放送を終了したSBSドラマ「チャン・オクチョン」で張禧嬪(チャン・ヒビン)に切ない恋心を抱いていた東平君(トンピョングン)役を演じ、切ない片思いを披露した。片思いの演技は、シットコム(シチュエーションコメディ:一話完結で連続放映されるコメディドラマ)「清潭洞(チョンダムドン)に住んでいます」、ドラマ「優しい男」に続き、3回目となる。

これほどなら“片思い専門俳優”と言っても過言ではないが、ドラマの中にありふれるカップルとして参加できなかったのは、おそらく大きくてぱっちりとした目で一人の女性を切なく見つめる濡れた瞳のためであろう。

「歴史的には東平君を野心に目がくらんだ人だと語られますが、その人も恋に生きていた人だと思っていただきたいと思いそういう面をお見せしようとしました。人々は『どうして張禧嬪を遠くから見ているだけなのか』『何もせずただ立っていてもかわいそうに見える』と言いましたが、そんな反応なら大丈夫でした。僕はただ見ているだけなのに、人々は切ない表情だと言ってくれましたし、僕が見てもそんな感じだったので満足しました」

すでに3つの作品で片思いをしたため、再び自身に振り向いてくれない女性を愛する役が入ってきたら負担になるだろうと予想したが、イ・サンヨプの答えは違った。

「ドラマが始まった頃、ヒロインたちは僕と仲が良かったのに、時間が過ぎて本当の相手役と親しくなる姿を見ていると、嫉妬したりします。仕方ないですね。片思い役で最高になりたい気持ちもあります(笑)」

イ・サンヨブの答えからわずかに感じられるように、彼には茶目っ気とセンス、愉快さがにじみ出ている。表情も切ない印象を与えると同時に少しずつ茶目っ気も見えたため、撮影現場で“ムードメーカー”ではないかとふと思い、聞いてみると予想通りだった。

「東平君はドラマの序盤では明るいキャラクターだったので『現場ではなるべく明るい姿を見せよう』という考えで臨みましたが、そのうちなんとなく責任を感じました。それでスタッフや俳優たちが疲れていたり、落ち込んでいれば『笑わせなければならない』と思って一言言ったりしました。ですがそんな言葉の受けがよくて、人をよく笑わせました(笑)」

撮影現場でムードメーカーとして活躍したイ・サンヨプは、スタッフや俳優たちとも家族のように仲良く過ごしたという。特に、ロケ地が地方の山の中だったため、いつもより一緒の時間が長かった。こうしてイ・サンヨプは「チャン・オクチョン」を通じてよい人とたくさん付き合うことができた。特に、ハードな撮影スケジュールの中でも照明監督の結婚式で司会を務めるなど、最高の社交性をアピールした。

「山の中での撮影だったので特にやることもなくて、僕の撮影がないときは現場に行って見学しました。見物人と俳優を行き来しました(笑) 近所の住民のようにノースリーブのTシャツに半ズボンを着てスリッパを履いて見物に行きました。スタッフたちともとても仲良くなりましたし、『チャン・ンオクチョン』を通じて良い人たちをたくさん出会いました。そうして照明監督の結婚式では司会を務めました。撮影中で二人とも気が気でない状態で結婚式に行って僕は司会を務め、照明監督は結婚しました。結婚式が終わると同時に二人とも撮影現場に戻りました」

そしてイ・サンヨプはキム・テヒ、ユ・アイン、ソン・ドンイルなど、心強い先輩たちを得た。キム・テヒは現場で“オクチョン”と呼べる姉さんでユ・アインは思ったより気が合う弟だった。

「最初の台本読み合わせのとき、キム・テヒ姉さんを見て挨拶しましたが、本当に気まずかったです。僕の隣に座りましたが、見ることすらできませんでした。ですが、いざ撮影に入ってからは気楽に接してくれて悪ふざけもたくさんしました。最初はお姉さんと読んだけれど、お姉さんではなくオクチョンと呼びなさいと言われたので撮影現場では“オクチョン”と呼びました(笑) ユ・アインは本当に同じ年頃の俳優の中で一番演技がうまい俳優だと思います。独特で仲良くなるのは難しいかなと思いましたが、それは偏見で誤解でした。優しくて面白くて気が合うんです。個人的にもよく連絡しています」

イ・サンヨプは彼らから俳優にとって一番重要な俳優間のコミュニケーションを学んだという。これまでは相手役よりも自身の台詞と感情だけに集中していた方だったが、今回は状況に集中し、自然に台詞と感情を表現することを身に着けた。「チャン・オクチョン」はイ・サンヨプの演技においてターニングポイントになったのだ。

「以前は僕が一方的に演技していましたが、今回はお互いに感情のやり取りをしながら演技することを学びました。実は、これまで僕は台詞を勉強しようとしたので『チャン・オクチョン』の序盤でもそうでしたが、ソン・ドンイルさん、ユ・アインさんと演技しながらそれを破りました。感情一つで最後まで進みました。それでも準備せず行くことはできないと思って、聖書を暗記するように台詞を覚えて行き、相手が演技するのを見て僕の台詞を言うことを学びました。『強くしなければ』と思った台詞もいざ一緒に演じてみたら訴えるようになったりすることが面白かったのです。『優しい男』のときもそれを感じましたが、怖くてできませんでした。今回は『あぁぁ、分からない』と思って色々とやってみましたが、上手くよくできて気持ちよかったです。それはすべて僕がここまで成長できるように支えてくれた方々がいたから可能でした」

何よりイ・サンヨプが今の心構えで演技に取り組めるようになったのは、女性にとっても男性にとっても激変の時期と言われる30歳を過ぎたためだ。今年で31歳であるイ・サンヨプが29歳のときに出演した「優しい男」と、31歳になって出演した「チャン・オクチョン」で演技に対する心構えが違ったのは、その時期をうまく乗り越えたためだ。

「29歳のときは正直しんどかったです。役者という職業でしたが、僕がどこにいるのかと思ったら漠然としていましたし、それが怖かったです。ですが、30歳のとき『清潭洞住んでいます』に出演し、楽しく過ごしながら幸いにもその時期を終え、今はスーパースターになりたいという気持ちは捨てました。以前は『この作品に出演すればうまく行くだろう』と思いましたが、今は人気よりは演技で評価されたいです」

イ・サンヨプ。彼はまだ片思いの男性、または純粋な男というイメージが強いかもしれないが、その中でも平然とした姿や真剣な姿などを披露し、多様なキャラクターに変化できる可能性を見せている。これからあらゆるところで力量を発揮できるキャラクターとしてフィルモグラフィーを作っていくことに期待したい。

記者 : カン・ソジョン