「恋愛の温度」キム・ガンヒョン“第2のナプトゥクは嬉しい修飾語”

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写真=キム・ジェチャン
確かに劇の中心ではないが、作品に活力を与える人物がいる。時には絶妙な演技で、時には大胆に発する一言の台詞で観客をスクリーンに引き付ける存在。今や少し陳腐な言葉になってしまったが、依然として有効なその言葉。まさに、シーン・スティーラー(Scene Stealer:スターよりも注目される脇役)である。

俳優キム・ガンヒョン(36歳)は、映画「恋愛の温度」(監督:ノ・ドク、制作:Vangard Studio)でシーン・スティーラーとしての役割を見事に果たした。「恋愛の温度」は、3年間の激しい社内恋愛を終らせた後、再び恋愛を始めるイ・ドンヒ(イ・ミンギ)とチャン・ヨン(キム・ミニ)のリアルなラブストーリーを描いた作品だ。

キム・ガンヒョンは、イ・ドンヒとチャン・ヨンの職場の同僚でありながら、少しありきたりな表現をすれば“恋の協力者”でもあるパク係長役を務め、終始観客の笑いを誘った。キム・ガンヒョンがいなかったら、「恋愛の温度」がここまでリアルな作品に完成されることができたのだろうか。


見ているだけでおかしい“パク係長”が演じられた理由

細い声、周りでよく見かるような普通の外見、銀行員の制服がオーダーメイドのようによく似合う親しみのある体形。キム・ガンヒョンは、俳優としてあまり有利なルックスの持ち主とは言えない。だが、キム・ガンヒョンは短所を長所に、自分だけの武器として活用し、映画の随所でリアルな生活感を漂わせる。その自然さが通じたのだろうか。「恋愛の温度」が公開された直後から、ポータルサイトには「恋愛の温度」というタイトルの隣にパク係長という関連検索語が付けられ、観客の熱い反響をうかがわせた。

「ステージ挨拶に参加した際に、人気を実感しました。『パク係長役の』と紹介する瞬間、観客が熱く反応するんですから。後半からは、僕を見るだけで笑っていました。正直さの勝利だと思っています。演劇のステージに立っていた時も、小細工をせずに正直さで勝負していたんです。すると、普通の台詞でも観客が笑ってくれました。今回もその正直さが通じたんだと思います」

キム・ガンヒョンは、劇団チョングクジャンに所属しており、「春川(チュンチョン)あそこ」「会いたいです」「チョンガー(独身男)パーティー」などに出演し、着実に実力を伸ばしてきた。発声も、テクニックも完成されていないが、逆に学問的に演技を学んでいない、自然な魅力があった。

「監督も僕と同じようなことを考えていました。目立とうとしないで、笑わせようとしないで欲しいと僕に話しました。『ドライな感じで行こう。パク係長の居場所だけを守って、大げさな演技は止めよう』と。僕も同意しました。結果的には欲張らず自然に演じたのが観客の反響を得た原動力なのではないかと思います」


「“第2のナプトゥク”…嬉しい」

最近、キム・ガンヒョンの名前の前には“第2のナプトゥク”という修飾語がつく。一度見たら忘れられないキャラクター。元気よく生きているリアルな演技、主人公の協力者という役割を果たすという点から、パク係長と映画「建築学概論」(監督:イ・ヨンジュ)でチョ・ジョンソクが演じたナプトゥクというキャラクターには共通点が多い。

「“第2のナプトゥク”という修飾語ですか? すごく嬉しいです。チョ・ジョンソクさんって本当に人気者になりましたね。実は、劇中で『どうしよう?』という台詞がありましたが、少しナプトゥクのキャラクターが気になっていたりもしました。(ナプトゥクは『建築学議論』で『どうしよう?』という台詞で大ヒットした) ナプトゥクと重なってしまわないようにしないといけませんから。ナプトゥクは長い台詞が多かったですが、パク係長は短い台詞が中心となっています。また、ナプトゥクのようにテクニックを披露できる場面も多くはなかったです。いつかは“第2のパク係長”も出てきますかね?」


「キム・ミニとイ・ミンギからたくさん学んだ」

パク係長は、劇中でイ・ドンヒ、チャン・ヨンより若いキャラクターに設定されているが、実際のキム・ガンヒョンは、イ・ミンギより8歳年上である。キム・ガンヒョンは、イ・ミンギが自分よりも大人っぽいと称えた。イ・ミンギが兄のようで、自分が弟のようだったので、演技においても違和感は全くなかったという。

「イ・ミンギとは本当に相性が良かったです。最初、一緒に一杯飲みながら僕が敬語は止めていいと話したくらいです。イ・ミンギは、僕が気付かないうちに自然とアドリブを入れてきてくれるので、やりとりが楽でした。イ・ミンギの演技が上手だったので、僕も自然な演技ができたと思います」

キム・ガンヒョンは、最もNGが多く出たシーンとして、病気のイ・ドンヒを自分の未熟な運転のせいで家の近くの病院ではなく、大田(テジョン)の病院まで運んでしまうシーンを選んだ。実際は、軍隊で運転兵を務めていたというキム・ガンヒョンだが、劇中では運転の下手なパク係長を演じるために冷や汗をかいたという。

「運転は得意なので、自分でも気付かないうちにNGを出していました。とても苦労をする感じで車線を変更しなければならないのに、思わず上手に変更してしまったりして。夜に撮り始めて、日が昇る頃まで撮影しました。監督とイ・ミンギには、本当に申し訳なかったです」

キム・ガンヒョンは、イ・ミンギとキム・ミニに対し、愛情を込めて「あいつら」と呼んだ。キム・ガンヒョンは、「恋愛の温度」を通じてイ・ミンギとキム・ミニから多くのことを学んだという。自分より何歳も若い二人だが、二人がいなかったらパク係長のリアルな演技はなかったという。


長い無名生活の末に手に入れた最高のキャラクター“パク係長”

キム・ガンヒョンは、2005年に自分の演劇を見に来たノ・ドク監督から「恋愛の温度」の出演を提案された。ある意味では、「恋愛の温度」の出演者の中で一番早くにキャスティングされた俳優であり、長い期間を待って、ついにクランクインされた。キム・ガンヒョンはキャスティングの10日前に10キロ減量し、パク係長にぴったりな(?)体形に変身した。

「1年6ヶ月間、建設現場で働いていました。食べていかなければならなかったので。けれど、心の中では常に俳優として再起する夢を抱いていました。キャスティングされる10日前に、全ての仕事を整理し、『そろそろ痩せよう』と思っていた頃に、制作陣から連絡が来ました」

キム・ガンヒョンは「恋愛の温度」を通じて、13年間の演技生活の中で最も愛されるキャラクターを手にした。初めて、映画で存在感のある役を熱演することができ、夢の一つだった舞台挨拶も実現した。

「夢というものがあるでしょう?僕は、釜山(プサン)国際映画祭でステージ挨拶をするのが夢です。今回、釜山の映画館で観客のみなさんに舞台挨拶をしました。夢に一歩近づきました。ノ・ドク監督が、『釜山国際映画祭、一緒に行きましょう』と言ってくれた時は、本当にありがたかったです。今年、もし釜山国際映画祭に参加できれば、2013年は最も大きな夢を叶えた年として記憶に残るでしょう」

記者 : キム・スジョン